登山口までのアクセス、困難な山・・・
変化に富んだ様々な条件!?
登山の話といえば、山を登ってその頂に立つ過程のことが一般的です。
登山中の絶景、険しい岩稜帯や急登、目を瞠るようなお花畑など印象に残った思い出がよく話題になります。
これらについては、前号のブログでもアップしたとおりです。
一方で、これらとはまた違った体験もありました。それは、準備全般や行くまでの過程、長時間登山など、特に困難な体験もまた思い出に残るものです。
私の場合は主に単独行(ソロ)が多かったです。これは、ツアーやパーティー登山と異なり、登山準備すべてにおいて一人で組み立てることになります。もちろんそうしたプランと実行が面白さを倍増させるものですが。
ただ、初めての山に登る時、登山口までのアクセスが一番気になりました。というのも、登山開始時間を決めているため、その時間前後に果たしてスタートできるかに最も神経を使いました。
単独であっても車であればナビに従えば大丈夫だろうという思いがあります。しかし、これは目的地までの進路であって、実際の道路状況(砂利道、すれ違いできない、崖路など)や駐車場の状態がどうなっているのか?、こうしたことが一番の気がかりでした。
今ではネットを使ってあらゆる情報が入手できますが、”その時の状況は変化して鵜呑みにすることができない” ことなんです。
登山口までのアクセスと駐車場確保
北・南・中央アルプスなど登山者で賑わう山域や観光化された山は、登山口までの道路事情、駐車場は整備されています。
しかし、一方で奥深き山や一般のハイカーがほとんど来ない百名山もあります。こうした山は、バスなどの公共交通機関が通っていなく自力で登山口まで行かなければなりません。
こうした場所は、一定の駐車スペースはあるものの狭いため台数に限りがあります。このため、登山シーズンともなれば平日週末問わず満車状態になるので駐車確保に神経を使います。
又、そうした山に限って登山口までの狭い林道と砂利道が続きます。
トムラウシ(北海道)~林道と駐車場
トムラウシは大雪山山系の最深部にあるため百名山の中でも困難な山の一つです。
登山ルートは、主に旭岳ロープウェーからの縦走と十勝岳からの縦走、そして、もう一つはトムラウシ温泉からのルートがあります。前者の縦走は数日間かかるため避難小屋泊の重装備になります。トムラウシ温泉からは最短コースといっても日帰り11時間を要します。
私はトムラウシ温泉から登りました。実は深田久弥氏もトムラウシ川側から登ったそうで、ほぼ同じ行程だったようです。しかし、当時はまだ林道がなかったため数日テント泊の登山だったと記録されていました。
日帰り往復の時間を考えると早朝4時頃登山開始となるため、駐車場に前泊することにしました。初めて行く場所ですから前日の明るい時間帯に向かいました。
夏のハイシーズンだったためか、皆さん考えることは同じで夕方頃にはほぼ満車状態でした。当然車中泊で翌早朝に出発するプランも同じでした。
登山前日、富良野から麓のトムラウシ温泉まで120km車を走らせました。更にそこから林道8kmの上り坂。対向車が来ればすれちがいできない道幅で、途中ブルドーザーに出くわし立ち往生する事態でした。
登山当日の早朝4時、一台のマイクロバスが登って来ました。なんと登山ツアーバス(ガイド付)でシニア世代20人の登山者たちでした。
初めて行く場所、道路事情がわからない、当日駐車場は大丈夫なのか・・・、こうした登山前の準備が心配事としてあります。
これも単独行だからなのでしょう。
平ケ岳~長時間登山
日本百名山を目指す登山者に「困難な山はどこですか?」と訊けば、多分ほとんどの方が平ケ岳を挙げると思います。
北・南アルプスの険しい高峰を挙げるものの、それは違った意味での困難さがあるからです。
平ケ岳は、山頂に通じるコースとして基本的に鷹ノ巣にある登山口からのみの道で、山小屋、避難小屋がなく往復12時間以上要します。
このため、前日に登山口付近の宿に泊まるか、車中泊しなければ登れない山です。百名山には日帰り登山できる山はたくさんありますが、この平ケ岳は長時間の覚悟をもって臨むことが求められます。
登山口の駐車は十数台のスペース。満車の時は側道に駐車してました。
私は登山口に前泊(車中泊)しました。この時、夜7時頃真っ暗な中、二人の登山者(それぞれ別)が下山してきました。早朝出発したが、この時間になってしまったと話していました。
翌朝4時半、ヘッドライトを点けて出発、下山は16時半で12時間の行程でした。いつもの登山に比べ休憩も少なく、特にトラブルもなく済んだことでこの時間でした。
前述したトムラウシ同様、この山も早朝3~4時台に出発する登山者が多かったです。特に日の長い夏場の登山が多いようです。
アップダウンを繰り返し、ようやく平ケ岳の全容が見えました。頂上付近は湿原が広がり池塘が点在していました。
以前、越後駒ケ岳に登った時、頂上で知り合った登山者が99座目と話していました。「残り1座はどこですか?」と訊いたところ、「あそこに見える平ケ岳だよ。一番いやな山を残してしまった」と苦笑いしてました。
ああ~、やっぱりそうなんだと思いました。皆さん考えることは同じですね。
別のルートとして、奥只見の銀山平から中ノ俣林道を使って登るコースもあります。こちらは銀山平の民宿に宿泊した登山者だけ車で林道(私有地)を送り迎えをしてくれるようです。登山口から往復6時間半程ですからかなり短縮できます。
ただ、お会いした登山者の皆さんはそうした情報を知っていましたが、やはり鷹ノ巣からのロングコースだからこそチャレンジしてみたいと話していました。
こうした選択も人それぞれですが、私もこのコースの方が平ケ岳の醍醐味が味わえると思います。
ブログ:平ケ岳(前編)
幌尻岳(北海道)~予約、徒渉20回
最近の山小屋は予約が一般的になってきました。ハイシーズンともなれば予約を取るだけでも一苦労の時代です。
幌尻岳の唯一の山小屋「幌尻山荘」も同様です。又、登山口の林道第一ゲートまでは専用登山バスを利用しなければなりません。このバスも予約制になっています。時間と本数が限られているため、こちらも早期の予約が必要になってきます。
例えば、同じような環境保全対策で北アルプスの上高地に向かうシャトルバス、南アルプスの芦安(登山基地)からの専用バスは頻繁にあり増便もあります。
この幌尻の場合は限定されているため、多分百名山登山の中で唯一自由に登れない山なのかもしれません。
又、予約できても天候によって登れない確率は非常に大きいです。
というのも、登山道が沢になっているからです。徒渉開始地点から幌尻山荘まで約20回ほど徒渉します。天候が悪化して沢の水位が上がれば徒渉は困難になります。行きは良くても帰りに天候悪化ともなれば、山小屋に足止めも十分考えられます。
以前、下山中に無理して渡ろうとして遭難事故が起きました。
こうした状況から百名山の中でも様々な条件で最も困難な山だと思いました。
登山基地「ぬかびら山荘」からの登山専門バス(予約制)乗車後、登山口から林道歩き7.5km(2時間半)
登山道となる額平川(ぬかびらがわ)の徒渉20回。沢歩き専用の靴(モンベルのシャワークライミング用フットウェア)
幌尻山荘(完全予約制)。この日、沢歩き中に足を怪我して動けなくなった登山者のヘリ緊急搬送に遭遇しました。
幌尻岳と頂上直下に広がるお花畑
百名山の中でも私にとって思い出の困難だった山3座を挙げてみました。
百名山を振り返ってみると、日本のほぼ中間エリアの関東・関西・中京地方に住んでいる人にとっては、北海道(9座)、九州(6座)はそれなりに遠い地にあります。逆に北海道や九州に住んでいる人にとっては、百名山が多い北・南・中央アルプスはやはり遠いです。更に北海道から九州へ、九州から北海道へとなれば時間のかかる山旅になるでしょう。
登山そのものに関わる時間以外に交通手段や各種予約、アクセス時間、更に天候状況や身体状況などの様々な条件をクリアしてようやく登山口に立つことができます。
振り返えれば、一つ一つの山旅にはいろいろな困難な条件がつきまとっていました。しかし、そうした困難を乗り越え頂に立った時はなんともいえない達成感がありました。
本当に山が好き、登山が好きでないとできないものですね。これは登山に限らずいろいろな趣味においてもそうでしょう。
「日本百名山を振り返って」 つづく
次回は最終編として、「山と平和」を考えてみます。