講演会「平和への思いを込めて」

元イスラエル兵の講演

ガザ・暴力の連鎖に憂う

 

先日、川越市の市民文化センターで「今を語る~平和への思いを込めて」というタイトルの講演会が開催されました。
主催は「テレジンを語りつぐ会」
この「テレジンを語りつぐ会」については、昨年11月のブログでも紹介しました。
第二次世界大戦時、ナチスドイツによるユダヤ人迫害のテレジン収容所に収容されていた子どもたちの絵を野村路子さん(川越市在住)が日本全国を回り、展示・講演会を開催して紹介している会です。

ブログ:テレジン収容所

 

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今回の講演会では、日本在住の元イスラエル兵のダニー・ネフセタイさんが講演されました。
この方は、イスラエル生まれで3年間の兵役を務め、退役後日本を訪れ、その後日本人女性と結婚し埼玉県秩父に住んでいる人です。現在、木工房の仕事(家具職人)のかたわら反戦や脱原発をテーマにした講演活動をされている方でした。

今、イスラエルとパレスチナ・ガザ地区は凄惨な紛争が続いています。
この対立と紛争については、すでに多くのメディアで報道されているのでここでは省略しますが、今回の講演者がイスラエル人ということから、この地の歴史的な背景と進むべき方向性についてリアルなお話を聞くことができました。

 

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武力ではなく対話で平和を築く

 

ダニー・ネフセタイさんは、今回のガザ地区問題はじめ、今世界で起きている軍事衝突なども含め戦争反対の立場で話されていました。

1979年、退役後に日本を訪れ、日本人の優しさや治安の良さに引かれ長く住むようになったそうです。
こうした中、日本の憲法九条を知り、祖国と正反対の考えに衝撃を受けたと語っていました。

というのも、イスラエル人はナチスドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)について、学校教育で繰り返し教えられ、二度と同じ目にあってはいけないという国民感情があると話されていました。
第二次世界大戦後、イスラエルは隣国との軍事衝突が長年続いています。そこには武力で国を守る。死にたくなければ、相手を殺すしかない。多くの国民がそう考えるようになったそうです。

現在、パレスチナ自治政府は、イスラエル領にあるガザ地区とヨルダン川西岸地区の2ケ所が領域です。
イスラエル人にとっては「私たちの土地になぜパレスチナ人が住んでいるのか?」という思いが今でも強くあるそうです。
そしてこの争いは長く続き、パレスチナ人による自爆テロというかたちの報復があり、以前メディアでも何度か報道されていました。

ネフセタイさんの講演の中で、イスラエルの子どもたちの通学バスについての話がありました。
例えば、一家族3人の子どもがバスに乗る時、兄弟姉妹それぞれ別々のバスに乗るそうです。それは自爆テロを恐れて一人でも命が救われるための行動だそうです。
この話を聞いた時には驚きました。

 

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イスラエル人は高校卒業後、男性は3年間の兵役に就くようです。
ネフセタイさんも「国のためにできる限りのことをやりたい」と空軍養成所コースに入ったそうです。
養成所教官から「この機を使いこなせば、イスラエルの子どもたちは安心して眠れるんだ」と言われ、国民のために力を尽くせると思ったそうです。
ただ、相手の国の子どもたちが眠れないとは、想像しなかったと話されていました。

日本に住むようになってからもイスラエルはパレスチナの軍事占領を続け、遠く離れた祖国の侵攻にイスラエルには自分の国を守る権利があるが、そのために人を殺してもいいのか。そんな葛藤と憂う気持ちを持ち続けていると語っていました。
憧れだった空軍がこれだけ多くの子どもたちを殺すとは・・・。祖国の人たちがどう考えているのか知りたくて、親族や知人たちに手当たり次第連絡したそうです。
すると、リベラルな人たちでさえ「仕方なかった」と応えたそうです。

こうした状況の中、日本の若者グループから「ガザ攻撃について知りたい」と頼まれたのをきっかけに、2009年から平和をテーマに講演活動を始めたそうです。
今では年数十回に及ぶ講演で全国を周っているとのことです。
そして今回の講演でも「武力ではなく対話で平和を築くべきだ」と熱弁されていました。

5月21日付けの新聞記事で、国際刑事裁判所がイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相の逮捕状を請求したと報道されていました。
これはパレスチナ自治区ガザ情勢を巡る戦争犯罪と人道に対する罪の疑いということだそうです。
この間、連立政権のネタニヤフ首相に対してイスラエル国内で退陣デモが起きていることも報道されていました。

今回の講演の中でネフセタイさんはこの連立政権についてコメントされていました。
現首相のネタニヤフ氏は政権内でも左派に位置する人だそうです。その10倍に匹敵するほとんどが右派だと指摘していました。
つまり、政権中枢のほとんどの議員たちの考えは今回のガザ侵攻は当然であり、まだまだ手緩いという姿勢だそうです。
又、国内に起こっている退陣デモは、あくまでもネタニヤフ首相の汚職問題に対してだそうです。

こうした一連のイスラエル国民の感情を代弁するかのように、
イスラエル戦時内閣に加わるガンツ前国防相は、今回の逮捕状に対して、ガザでの戦闘は「正当な戦争だ」と主張。
5/21付 東京新聞

 

ネフセタイさんは講演の最後に日本の良いこととその立場・方向性について3点コメントされました。

■日本は平和憲法を持っている。ぜひこの憲法を守り生かしてほしい。
■日本は唯一核被爆国です。日本が非核を世界に発信することには説得力がある。
■平和憲法を持つ日本は世界の他国から信頼されている。しかし、今武器輸出国に傾き、更に改憲の動きがある。これらをぜひ止めてほしい。

 

野村路子さんのお話

私はテレジンに収容されていた子どもたちの絵を紹介しているのは、ユダヤ人の子どもだからではない。
今日、今現在も、ガザでは子どもたちが飢えに泣き、爆撃に怯えているでしょう。
テレジンの子どもたちの悲しみを語り続けてきた私ですが、今、まったく同じ思いでガザの子どもたちの命を奪わないで!と思います。テレジンの子どもたちが夢見ていた未来は、平和な世界だったはずですから。

野村さんはイスラエル大使館に「ガザへの攻撃は止めてください」という手紙を出したそうです。

 

イスラエルとパレスチナは長い間紛争が続いています。
暴力や武力では必ず憎しみが残ります。軍事衝突では絶対に解決しません。
歴史を正しく知ることは大切なものだと思います。しかし、その教育において憎しみを持つ、持たせる学びは誤りではないでしょうか。
人間として生きていくためには教育・学びが必要です。歴史上の出来事をどうとらえるか、思考を深めることで人のありようを学ぶのは大切なことだと思います。考える力をつけることは、時に自分を制御するために役立つものです。
ホロコーストの歴史、核被爆の歴史を学び考え、どのような方向がいいのか。

ネフセタイさんや野村さんががおっしゃるように「対話で平和を築く」ことが最も大事なことだと思います。
このことは、今の日本にも言えるでしょう。

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