テレジン収容所

「テレジンを語りつぐ会」講演会

4000枚の子どもたちの絵

 

今、イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの大規模衝突をめぐり悲惨な状況が起きています。
連日のTV・新聞報道を見聞きする度に心が痛みます。なぜこのようなことが起きてしまうのかと思います。
そこには長い歴史の中での宗教上・民族の問題もあり一言では言い表せないこともあるのでしょうが、軍事や暴力では絶対に解決しないことは今までの歴史をみても明らかです。

 

先日、私の住む川越市内で「テレジンを語りつぐ会」の講演会がありました。
”テレジン” ?、この言葉自体まったく知りませんでした。では、”テレジン収容所” と言われれば戦争に関係したものと想像しましたが。

講演会の冒頭、主催者側からナチスドイツの ”アウシュヴィッツ収容所” を知っている人は多いと思いますが、”テレジン収容所” を知っている人は?という話から始まりました。
そこではじめて第二次世界大戦中のナチスドイツによるユダヤ人迫害の収容所のことなんだとわかりました。

講演者は「テレジンを語りつぐ会」代表の野村路子さんで川越在住の方でした。
野村さんは1989年にチェコスロバキア(当時)に行った時、町にあった博物館を訪れたそうです。
そこには子どもたちの絵が多数掲示されていたと語っていました。最初は何の絵なのかわからなかったそうですが、係員に訊いたり調べていく中でテレジン収容所の子どもたちが描いた絵だと知ったそうです。

 

20231028_131949   20231102_092030

 

テレジン収容所
チェコ北部にある小さな街、テレジン。
かつて、アウシュヴィッツへの中継地として街はすべてが収容所となりました。連れてこられた10歳~15歳の子ども1万5000人は、名前も家族も奪われ、労働力として使われました。生還できたのはたった100人でした。

生きる喜びを教えたフリードル先生
過酷な環境下、「創造することは生きる力になる」と子どもたちに絵を教えた先生。「芸術は世の中全体の調和の中にあるもの」という信念を持ち、収容される前に潜んだ納屋でもユダヤ人の子どもに絵を教え、収容所への呼び出し状が来た日には、ありったけの画材をトランクに詰めテレジンへ向かいました。
アウシュヴィッツへ送られるまで命をかけて絵の教室を続けました。

1945年5月8日、解放されたテレジン収容所で見つかった子どもたちの絵は4000枚。
パンフレットより

野村さんはこの子どもたちの絵の存在を知り、ぜひ日本の人たちにこの絵のことを知ってほしい、知らせたいという思いから150枚の絵を写真に撮って持ち帰ったそうです。当時まだデジカメが普及していなかった時代、ありったけのネガフィルムを持ってチェコスロバキアを往復したそうです。

本来であればその絵自体をお借りしたいと願ったそうですが、絵が描かれた紙の損傷が激しかったため持ち出すことはできないと断られたようです。
というのも、その紙はナチスドイツ兵がゴミ箱に捨てたものを拾い集めたり、拾ってきた紙に描かれたものだったためシミや破れもたくさんあったそうです。

 

20231102_091856

 

この展覧会を始めてから、32年が過ぎました。あのころ、テレジンという収容所の名前はもちろん、「ホロコースト」という単語にすら訝しげな表情が返ってくることが多かったです。ナチスドイツによるユダヤ迫害、そして虐殺、600万人とも650万人ともいわれる犠牲者のうち、150万人は子どもたちだったという事実、それは、アンネ・フランクという少女の名で、多くの人の記憶を呼び覚ました。
アンネ・フランクは一人ではない、テレジンには、同じ年ごろで、同じように夢や憧れで胸をふくらませ。才能や可能性を持っていた子どもたちがいたことを知ってください。彼らが描いた絵や詩に心をとめてください・・・。

 

野村さんは、このテレジン収容所の子どもたちのことをもっと知りたい、そして、生き残った人たちに話を訊きたいという思いから現地で調べたそうです。そんな時、イスラエル大使館から「ユダヤ人を語るにはイスラエルに行かなければならない」という連絡が入ったそうです。その後イスラエルに何度も足を運び、はじめて生き残りの人と会う機会があったと語っていました。
お会いした方々の中には、「当時のことは思い出したくもない」ということから拒否された人もいたそうですが、6人の方からお話を聞くことができたそうです。その中には、「テレジン収容所のことを知ってほしい」「テレジンで何が起きていたのか世界の人たちに知ってほしい」という要望があったそうです。

 

第二次世界大戦後、国連でパレスチナにユダヤ人の国とアラブ人の国とに分割する提案がなされ、ユダヤ人の国としてイスラエルが創設されました。しかし、アラブ人は反対し、その後数度にわたる中東戦争が勃発して今に至っているようです。
このような紛争は冒頭で記したように宗教や民族、そして、それに関わる領土問題など複雑に絡んでいます。他者からはわからない様々な思いがあると思います。

今この地域で起きている争いで国連安全保障理事会の報告では、ガザの死者の約70%が女性や子どもだそうです。その内の約3200人が子どもの死亡が伝えられていると指摘していました。
このような紛争や戦争など真っ先に犠牲になるのは老人や女性、そして子どもたちではないでしょうか。
国連総会では「人道的休戦」を求める決議を121ケ国の賛成で採択されました。まずはどちらも軍事や暴力による紛争は止めるべきだと思います。
野村さんも講演の中で「どちらも悪い」と断言し、「どちらも子どもたちの命を奪わないでほしい」と語っていました。

 

12月5日~10日、「テレジン収容所の幼い画家たち展」が川越市立美術館で開催されます。
この展覧会は「テレジンを語りつぐ会」に協賛した川越有志の方々(実行委員会)が主催し、後援は川越市教育委員会と在日イスラエル大使館です。

ぜひこの展覧会に行ってみようと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。