日本百名山の難易度

高峰が難しいとは限らない二つの山?

長く厳しいクラシックルート!

 

山岳専門雑誌や登山サイトなどに「日本百名山の難易度ランキング」が掲載されています。
各紙、サイトによってその評価は若干異なりますが、ほぼ似たような評価ではないかと思います。
難易度は複数の項目を総合的に評価して決めています。
例えば、登山口からの距離やコースタイム、標高の高さ、登山道の険しさ(勾配、岩綾、キレットなど)、山荘や避難小屋の有無などがあります。又、登山ルートも考慮されたりします。

このブログでは、そうした評価が「実際に果たしてそうなのか?」といった疑問も含め検証したいと思います。

 

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栗原川林道からの皇海山

先日、北岳登山に行った時、広河原山荘に同宿した登山者から
「皇海山の登山口までの林道が使えなくなり、今はクラシックルートで登るようだ」
という話を聞きちょっとビックリしたことから、日本百名山の難易度を考えるキッカケになりました。

この皇海山の林道に関わるサイトを確認したところ、
「群馬県側の登山口となる皇海橋にアクセスする栗原川林道は、2019年10月の台風19号の影響により路肩崩落や土砂流出により復旧の目処が立っていない」
その後の情報によれば、「今後通行することができず、皇海橋登山口からの入山はできない」とのことでした。

ということは、栃木県銀山平からのコース(クラッシックルート)しかなく、庚申山と鋸山を経る長時間の行程を強いられることになります。

私は2015年5月、シャクナゲが咲く皇海山に登りました。
ブログ:皇海山
当初はクラシックルートを計画していましたが、何分にも行程距離・時間がかかることから断念。
コースタイムは14時間ですから、休憩を含めればとんでもない時間を要することになります。

登山行程時間比較 皇海橋コース:5.5時間  庚申山コース:14時間

 

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この点について、登山家の樋口一郎氏は著書「新釈日本百名山」で、

かつて皇海山への登路といえば、銀山平から庚申山を経る長い往復ルートしかなかった。日帰りはとてもできず、庚申山荘を起点にギリギリの一日行程であったろう。
ところが10年以上前になるだろうか、反対側の群馬側から長大な林道で距離を稼いでから、西側の沢を詰めるルートがマイナー向けの本に紹介されるようになる。「ずいぶんと横着なルートができたものだな」と思ったが、沢沿いのルートでもあるし、所詮は一時で消える際物ルートと高を括っていた。
ところが、数年して昭文社の登山マップにバリエーションルートとして載るようになると、あれよあれよという間に一般ルートに昇格。
皇海山を銀山平から登る人などほとんどいないだろう。
2014年著

樋口氏が話していた「沢沿いのルートでもあるし、所詮は一時で消える際物ルート」がまさに当たった感があります。

こうした状況から、今後日本百名山を目指す登山者にとってはかなりハードルの高い山が一つ増えたのではないでしょうか。
これに伴い日本百名山の難易度(主に体力面)も1ランク、いや2ランク上がるといっても過言ではないと思います。

 

これに似た山はもう一つあります。それは「平ケ岳」です。
私はこの山に2019年8月に登りました。私が登った日本百名山の日帰り最長12時間を要した山です。
(標準タイム往復11時間以上)
ブログ:平ケ岳

 

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平ケ岳

 

北・南アルプスの名峰と言われる山々には3000mを超える高峰があります。
それらの山は登山口までのアクセスや登山道が整備されています。例えば登山口までの舗装道路や駐車場の完備。更に麓には宿もあり登山専用バス(シャトルバス)もあります。
又、頂上に至る間には山小屋や避難小屋、キャンプ場があり、一日の行程時間を自分の体力に合わせて調整することができます。

こうした条件を満たさない百名山に上記の「皇海山」と「平ケ岳」があります。

昨年日本百名山を達成して振り返ってみると、一番体力を要したのがこの平ケ岳でした。
長時間登山を強いられることを想定して、早朝登山開始するには登山口の駐車場に車中泊するしかありませんでした。
登山道の険しさはありませんでしたが、アップダウンの高低差に苦労した思い出があります。

この平ケ岳は、実は短縮ルートがあります。
この点についても、登山家の樋口一郎氏はその著書でこのように述べています。

平ケ岳は本来ならニッポン最奥の山のひとつだろう・・・。
深田久弥が5日間かけて登った頃は当然として、長い一本道を往復10時間かけてたどるしかない頃であっても、平ケ岳はどうにか秘峰の範疇に入っていただろう。
そこへ、20年ほど前であったか、中ノ俣林道からのショートカットルートが登場した。この(横着?)ルートのおかげで、コースタイムは半分以下、剛健でないハイカーには福音ともいえるが、ここの林道を使える人は山麓の宿を利用した人など一部に限られている。

私は登山計画を立案した頃、このルートは知っていました。
しかし、このルートではやっぱり面白みがないな~と思いました。樋口氏が後述しているように「長いルートのほうが充実して達成感がある」といった感じで往復12時間(休憩込み)にチャレンジしたしだいです。

これもその登山者の価値観の違いですから何とも言えませんが。

 

日本百名山の難易度は、登山者自身の体力や考え方の違いによってそれを感じる度合いは異なるものがあると思います。
ここでは、私自身が実際に登ってみて、又、仮にクラシックルートをたどったら?、どのように思うかという点で二座挙げてみました。
その他、登山口までの長いアクセスや天候に関わる渡渉などを考えた時、北海道のトムラウシと幌尻岳があります。

私としては日本百名山の難易度として、北・南アルプスの高峰を挙げません。それだけ上記二座が抜きんでてプレッシャーを感じさせる山ではないかと思いました。

百名山で最も大変だった山はどこですか?と訊かれたら、私は迷わず平ケ岳を挙げます。
又、同時に体力面で「クラシックルートしかない皇海山もそうでしょう」と応えると思います。

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