続「介護の社会化」を考える

「介護」を取り巻く環境

自助からしっかり公助の方向へ

 

ここ数年、「人生百年時代」とか「一億総活躍」といったスローガンが目につくようになりました。
こうした言葉も自分が60代後半になり、高齢者の仲間入りしたことで少し気になったのかもしれません。一見してポジティブに見える言葉ですが、現実と将来のことを考えるとはたしてどうなのか?と思います。

先月、母は97歳の天命を全うしました。
卒寿を迎える頃から認知症を患い、晩年は介護施設で6年半過ごしました。職員の手厚い介護と同居するお仲間の人たちとのコミュニケーションで穏やかな日々を送れたことは何よりだったと思います。

入居した当時の介護施設(グループホーム)費用は月額14.5万円でした。
この金額の内訳は、施設利用料83千円、食費(3食)31千円、介護サービス費26千円、消耗品5千円。
そして、6年半後最後の費用は月額17万円でした。この差は消耗品や衛生用品などの費用が増えたことでした。基本的な施設利用料や食費は変わりませんでした。又、介護サービス費は、要介護2→要介護4に上がったことで増えました(+4千円)。

母は、自身の国民年金と遺族年金があったため、これらの費用を賄うことができました。そういう意味では、子や親族に負担がかからなった点で恵まれていたと思います。
ただ、これだけの高額費用の現実をみると、私に限らず誰もが将来への不安を抱くのではないでしょうか。

現在、厚生労働省は3年に1度の介護保険制度の見直しに向けて大幅な負担増・給付削減を進めているようです。
今年10月から後期高齢者医療の窓口負担が2倍化になりましたが、介護保険でもその動きが目立ってきています。
例えば、介護サービスの利用料の原則1割負担を改め、2~3割負担になる人を増やす方向。又、要介護1、2の人の訪問介護やデイサービスを保険給付から外すことなど。
更に、介護老人保健施設などの相部屋(多床室)の部屋代を保険給付から外し、利用者負担を増やす。65歳以上の「高所得者」の保険料引き上げなど数々の見直しが検討されています。

母の場合、少なからずまだそうした影響を受けることなく済んできましたが、これからの世代や次の世代はいったいどうなってしまうのか?考えさせられます。

 

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「介護の社会化」について、8年前このブログにアップしたことがあります。
この時の内容は、介護は社会全体で支えていくことを中心に記しました。当時、母や義父母の介護に関わり始め、自宅介護や老老介護の現状を目の当たりにしたことから考えるキッカケになりました。

ブログ:「介護の社会化」を考える

介護の考え方は、今でも百人いれば百通りの気持ち、対応の仕方があると思います。本人や家族それぞれの思いがあるからでしょう。
そして、核家族化、都会への人口流動などによって ”因習的な家族観” は次第に減りつつあります。更に、現代社会の格差と貧困という現状も相まって、その考え方は多岐に渡ってきているように思います。

介護は本人と家族だけの問題ではありません。社会化に伴い、”介護する側の人たち” のことも社会全体で支え対応していく必要があると思います。
母が入居していた施設では、6年半の間にケアマネジャーは4回ほど代わりました。ヘルパーの人たちも面会に訪れる度に代わっていました
こうした状況を見ると「この施設大丈夫かな?」という気持ちになったりします。これは、介護を依頼する側としては当然の思いかもしれません。ただ、母や他の入居者の様子、施設内の雰囲気や清潔に保たれている状態をみると、安心して任せられる状況にあると判断できました。

ここで気になったのは、介護現場の人たちの働く条件や環境です。
例えば、その報酬は全産業平均より大幅に低く、勤務時間も交代制で不規則、更に、入居者それぞれに対する介助や時には体力を使う仕事も含まれていることから、労働条件とその環境はかなり厳しい状態にあることがうかがえました。

「社会全体で支える」ということは、こうした介護の現場で働く人たちの環境改善をしっかりカバーしていくことも大事な政策だと改めて感じます。

 

アレとコレは繋がっている!?

 

少子高齢化で社会保障財源が足りない、今後更に厳しい状況にあると話題になっています。
こうした現状と将来への対応として、政府は年金削減、医療費負担増、介護サービスの見直しなど社会保障に関わる財源圧縮と国民負担を掲げています。

最近の政府の動向やメディアの報道でも明らかなように、首相は防衛費を今後5年間で総額43兆円に増やすとともに、財源の不足分は増税でまかなうような指示・検討されています。
円安や異常な緊急緩和で物価高騰が続いている中、これに追い打ちをかけるように税負担が大きくのしかかってきます。と同時に社会保障費の大幅削減が加速されはじめてきています。

”介護と軍事” ?
一見全く関係性のない事柄のように思えますが、お金の集め方やその使い方を考えれば繋がっていることがよくわかります。
それは、「税金のあり方」です。私たちは、あらゆる生活の場面で納税しています。それはモノの売り買いの時の消費税、働いて得た大事な収入からの所得税、同時に間接的な法人税、車利用やお酒・たばこなどもそうでしょう。
その大事な税収をいとも簡単に防衛費(軍事費)増額の財源として使われることには納得がいきません。

今まさにバラバラに見えた問題同士が繋がっていることがより見えてきています。つまり、私たちの日常生活のあらゆることが政治と結びつき、一部の人たちによって安易な考え方とその方法によって勝手に運用されていることです。
「丁寧な説明を」と簡単に口に出して言えばそれで済んでしまうようなおかしな政治になってしまっています。

なぜ?、どうして?と問題意識を持てば、アレもコレも、更にアノコトもみ~んな繋がっているんですね。そう考えれば、政治というものがより身近に感じられ、国民として、納税者としてしっかり判断できると思います。

 

母の葬儀は、はじめて喪主として執り行いました。
葬儀場やお寺、市役所との様々な段取り・手続きなどいろいろなことがありました。これも一つの社会的な勉強として学ぶ機会でした。
特に、葬儀の仕方やお寺(宗派など)との関わりは各地方によって様々で、又、その土地の風習・習慣もあって、これもまた一つの葬儀文化というものを教えてもらいました。

母や義父母の介護、そして母の葬儀をとおして、今度は自分たちの介護や葬儀について考える機会でもありました。
「人生百年時代」と謳われる中、正直まだ実感として考えることは難しいですが、「介護の社会化」は確実に私たちの生活と結びついていると思います。

2 thoughts on “続「介護の社会化」を考える

  1. すーさん、お久し振りです。
    先月は大変でしたね。

    母上様、ご愁傷様です。

    介護の現状はじわじわと後退しているように感じています。
    我が家も夫が脳梗塞の後遺症で言語障害があり、要支援2
    身体障がい4級の認定を受けています。週に一度言語聴覚士さんが
    家にやって来てくれます。皆さん若い方たちですがとても親切で
    若い方たちですので、本人は大喜びしています。
    我が家は介護制度がとてもありがたいです。

    数か月前の婦人公論に興味深い記事が掲載されていました。
    介護保険制度に大きくかかわった樋口恵子さん(彼女の力は大きいです。)
    と上野千鶴子さんの対談でした。
    介護保険ができたので離職しないで済んだ人は私の周りでも多くいます。

    1. Roseさん

      お久しぶりです。
      ご丁寧なお言葉ありがとうございます。

      ご主人のこと心配です。脳梗塞の後遺症で言語障害になるお話はよく耳にします。介護もたいへんなことと思います。
      言語聴覚士という職業があるんですね。はじめて知りました。こうした職業も介護にたずさわるお仕事ですから、働く条件や環境などしっかり整備してほしいものです。特に若い人が働いているのであれば、長く働き続けられるようなしくみが望まれますね。

      >介護保険ができたので離職しないで済んだ人は私の周りでも多くいます。

      たしかにそうですね。少子高齢化で今後さらに必要になってくる保険ですから、より充実した制度が求められてくると思います。

      コメントありがとうございました。

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