国政選挙制度 (2)

議会制民主主義の大前提となる選挙制度を考える

民意を反映する比例代表制に

 

10月31日総選挙の投票が行われ結果が出ました。
詳細についてはすでに新聞・テレビ・ネットなどメディアによって報道されていますのでここでは省略します。

以前、ブログで「国政選挙制度」についてアップしました。
そこでは現行の小選挙区制度のことに触れてその問題点を指摘しました。

この小選挙区制はご存知のとおり1選挙区に1人しか当選できない選挙制度です。このため過半数以上が「死票」になり民意が国政に届かない問題があります。
こうしたことから大政党にとって有利な選挙制度でもあります。

今回の選挙においてもこの制度の下で実施されました。
結果は自民党が議席数を減らすものの単独過半数を超える絶対安定多数に達しました。
現行の選挙制度上でそのような結果になったわけですから受け要らざるをえませんが、得票率と議席数のアンバランスが今までと同じ結果に注目すべきだと思います。

今回も含め過去4回の総選挙戦での自民党獲得票数(小選挙区)は2700万票前後で推移しています。
(今回は2762万票)
又、投票率でみた場合、50%台で推移しています。つまり低投票率であったため「固定票」2700万票前後の票が確実に議席に反映する結果をもたらします。

 

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小選挙区での自民党は、全有権者の四分の一程度の「固定票」にずっと支えられているのは間違いない。
ただ、その票数が議席数に反映するとは言えない。むしろ議席数は投票率が低下すると増え、高まると減る関係にある。
11/2付 東京新聞

 

今回の小選挙区での自民党の議席数は187です。得票率48%で議席占有率65%でした。
過去の選挙でみると、得票率は40%台で議席占有率は2017年74%、2014年77%、2012年82%でした。
こうした状況からみても明らかなように、小選挙区は大政党にとっては有利な選挙制度であることがわかります。
全有権者の25%支持者によって国政が運営されていることになります。

今回の選挙では投票率が上がると思っていましたが、残念ながら55.9%で戦後三番目に低い水準だったようです。
TVニュースやネット上では、若い世代の人たちが政治に関心を寄せる報道・記事などがありましたが、実際は投票行動には至っていなかったのでしょうか。

 

総選挙結果のTVニュースで街角インタビューの場面がありました。

「小選挙区で負けたのになぜ比例で当選するの?、何か矛盾してる」

確かにこうした疑問は多いと思います。
これは制度上で候補者が小選挙区と比例の重複候補として登録されていて、小選挙区で負けてもその惜敗率の順位で比例当選するしくみです。
これは各政党によって異なるようです。惜敗率で決めるのか、最初から候補者の比例順位を決めているなどの違いがあるようです。

このようなちょっとおかしいんじゃないという矛盾解消も含め、国民の声が国政に直接届く比例代表選挙に一本化した方がいいと思います。
投票した一票が確実に議席につながり、選挙区による「一票の格差」がなくなります。

今回の総選挙の比例代表得票を各政党別に議席数を試算した場合、どのような結果になるでしょうか。(全国11ブロック別にその得票率で案分)
今回の「小選挙区+比例の議席数合計」と「比例代表得票率で案分した議席数(概算)」の比較

自民党261→162 立憲民主党96→93 公明党32→58 維新の会41→64 国民民主党11→21 日本共産党10→33 れいわ3→19 社民党1→8 NHK0→6

比例代表選挙は政党名を書くことから、純粋にその政党を支持する票になります。こうした声を確実に国政に反映させることができる選挙制度だと思います。
全国11ブロック(地域)に住む人たちの声が、今まで小選挙区制度によって「死票」になっていた票が少なくとも議席につながる結果を生みます。

例えば、社会民主党の場合、小選挙区1議席だけで比例代表は0でした。比例の11ブロックごとに得票はあったものの議席を確保する票数に至っていないためでした。
得票数が少ないといっても10万票を超えるブロックもあり、全国合計で100万票の得票があります。つまり100万人の声が全て死票になり国会に届かないことになります。

議会制民主主義においては、「少数意見に耳を傾ける」という言葉がよく使われたりします。多様な国民の声を国会に反映させることは民主主義政治の根幹ではないでしょうか。

 

上記のように選挙制度を比例代表選挙だけにした場合、どの政党も過半数に満たない結果になります。
現在の自民党政権のように「単独過半数」とか「絶対安定多数」という言葉がよく使われていますが、これは国政が安定するということではありません。
過半数に達していないため通さなければならない法案も通過しないことで国政が不安定になり停滞してしまうという議論が起きたりしますが・・・。

実際国会で行われる各種委員会の法案採決の8割以上が全会一致で通過しているのが現実です。
こうした中で国政を大きく左右させる法案・議案が議論の中心になり新聞・TVなどのメディアが大きく報道したりします。
例えば、秘密保護法や安保法制、派遣労働法、沖縄辺野古基地問題、予算関連(防衛費、社会保障、税制など)、モリカケや桜を見る会問題・・・。

単独過半数とか絶対安定多数というのは、国政が安定するということではなく、自分たちの思うがままに法案を通すことができることや審議に応じない、コロナ禍でも国会を開催しないなど、”数の力で押し通す安定” があることです。

過半数に満たなければ国会が空転するとか、国政が不安定になるとか、そういった言葉だけで国民を不安視させるのは大政党の常套文句・手段です。それに踊らされるメディアの責任もあるでしょう。
前述したように各種法案採決の8割以上が与野党一致で通過しています。そしてその執行は行政によって行われています。

 

民主政治はオポジションを必要とする

 

先月、「日本の議会制民主主義の危機克服への道」と題するセミナーに参加しました。
講師は某大学教授でイギリス政治や比較福祉政治を専門とする方でした。

 

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セミナーの資料

このセミナーで「民主政治はオポジションを必要とする」というお話がありました。

「オポジションは、議院内閣制、普通選挙制と並ぶ、民主主義の三大発明のうちの一つ」
寡頭制を退けんとする民主主義の生命線は、批判と異論を政治制度の中に受け入れることにこそあり、それゆえ、民主主義とは本質において多元的であり、その担い手たるオポジションを必要とする。

オポジションは、政権党に向けた批判的な言動によって、政府が不正や誤り、民主的手続きからの逸脱するのを「監視し、防止し、そして糺す」役割を担う。議場で政府に説明責任を果たすことを迫るオポジションは、民主主義のゲートキーパーである。
セミナー資料より

※オポジション:互いに不足している要素を補いあうことで完全体となり、より優れた状態になる。
※寡頭制(かとうせい):一部の人が多数を支配する体制。政治体制の種類を表わす概念。

 

今私たち日本の政治において、このオポジションを改めて考えることが大事なことだと思います。
今までと変わらない一極集中の政治に対して、「不正や誤り、民主的手続きからの逸脱を引き続き監視し糺すこと」が必要だと強く思います。

総選挙の街角インタビューに「野党は批判・反対ばかりしている」という声が少なからずあります。
そこには批判する理由、反対する理由があるからです。現象面だけを見て物事を判断するのではなく、なぜ批判・反対するのか、その中身を認識することが大事なことだと思います。
そのことを理解した上で一人一人がどう判断するのかが私たち国民の責務だと思います。

今回の選挙では、数々の不正問題やコロナ対策などについて「説明責任を果たせ!」という言葉が飛び交いました。
こうした国民や野党の追及は、”民主主義のゲートキーパー” なんだということを再認識します。

 

現行の選挙制度で過半数議席を得た政府自民党は、有権者25%の支持で政権を取ったことを忘れないでほしい。
又、絶対得票率が19%だけの支持であったことも忘れないでほしい。
比例票で「自民党」と書かなかった有権者が3700万人いるということも。

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