民主主義とはいっても ”数の力とおごり”
「死票」が過半数の小選挙区制度
「もういいかんげんにしてほしい!」
「またか!?」
最近こんな思いが続いています。
来月末、衆議院満期による総選挙が行われようとしている前に自民党の総裁選挙の報道が盛んになっています。
いくら政権党の総裁選とはいっても、連日のようにメディアを通しての放映は一政党に偏った宣伝でとしか思えません。
立候補者をみても今まで安倍・菅政権を支えてきた人たちですから、いくら政策を訴えても変わりようがありません。事実その政策内容をみても明らかです。
野党の国会開催を無視し続けてきたにも関わらず、今回は新総裁(首相)の所信表明演説のための国会開催? 全く呆れました。
政権に忖度するメディアの責任もあります。
「もういいかげんにしてほしい!」と。
先日、デジタル庁のトップとナンバー2のお役人がNTTの接待を受けた問題が明らかになりました。
デジタル審議官が高額接待を受けた問題で、デジタル庁は27日、3回の接待をしたのはいずれもNTTで、うち2回は平井卓也デジタル相が同席していたと発表しました。
平井氏は「割り勘としてきっちり払った」と説明していましたが、自身の飲食代を支払ったのは3回目の会食から半年後で、それも週刊文春から接待に関する取材を受けた日と同じ日だったということです。これにも全く呆れました。
「またか!」と
9年にも及ぶ安倍・菅自公政権では、政権中枢がかかわる「政治とカネ」の問題が次々と明るみに出ました。
まだ記憶に新しい直近のことでは、
■カジノを中核とする総合型リゾートをめぐる汚職事件で収賄と証人買収の罪に問われた衆院議員。
■元農林水産相が、大臣在任中に鶏卵会社側から現金を受領したとして収賄罪で在宅起訴(2021年1月)
■今年6月、参院広島選挙区を舞台とした巨額買収事件で元法相が公職選挙法違反で実刑判決。
■今年6月、前経済産業相が、地元有権者に現金を配った公職選挙法違反で略式命令を受けた。
ここ1年足らずでこれほどまで多くの「政治とカネ」問題が起きています。さかのぼれば「枚挙にいとまがない」といっても過言ではないです。2014年から数えれば7人の閣僚が辞任しています。
その他、「モリカケ問題」の公文書改ざんはどうなりましたか?、「桜を見る会」の費用補てんの真相は?。
昨年安倍政権下で行われた検察庁法改正案(検察人事に政治権力介入)で政権の意に沿わない検察の動きを封じ込めたこと。
更には、菅首相の学術会議の任命拒否や原発・火力発電などの利権に関わる官僚の大量天下り・・・。
こうした一連の問題はなぜいとも簡単にできるのでしょうか?
国会は議会制民主主義だといっても ”数の力” が大きく左右します。本来であれば政権を担う政党であっても、国会で議論を尽くし野党の意見や代案には耳を傾けなければなりません。
なぜなら、現状の選挙での過半数票は野党の方が圧倒的に多いからです。つまり有権者の過半数の意思は自公政権を支持していないからです。
となれば、政権与党は国民の意思を反映させる意味でも国会での論議や野党の国会開催要請に対して真摯に取り組むべきものではないでしょうか。
しかし、9年に及ぶ安倍・菅政権でこれらのことは全て覆されました。それは ”数の力” で何でも押し切ることができるという ”おごり” が蔓延したことです。
先日、TVニュース番組で今の政治に関する街角インタビューがありました。
「今の野党はだらしがない。反対ばかり言っている」(60代女性)
「野党は政策がないからダメだ」(70代男性)
このインタビュー場面を見て耳を疑いました。
今まで社会にもまれ長い間生き抜いてきたシニア世代の方々が、この程度の認識しかないことに驚きました。
「反対」?、そこにはしっかりした反対の理由があるからなんです。「ばかり」?は、それだけ国民にとって不利益な法案が多いからです。
「政策がない」?、どの政党も政策がありますよ。国会では対案も提出しています。
自分が見聞きする範囲だけで判断し、テレビなどの偏った報道がそれに輪をかけていることに気付かなければなりません。
9月26日付 東京新聞社説 見出し「選挙さえまっとうなら」
ではどうして過半数にも満たない支持(得票数)で ”数の力”(議席数)を確保できるのでしょうか?
それは現行の選挙制度にあります。
衆議院選挙は、比例代表制と小選挙区制の並列選挙です。
前者は、各政党の得票数によって議席数が比例配分されます。
後者は、各選挙区で一人しか当選できません。ここに大きな問題があります。一人しか当選できないということは、その他の候補者に投票した票は全て「死票」になります。
過半数にも満たない得票数であっても議席を確保することができる選挙制度です。選挙区によっては3~4割の得票数で当選できるということは、逆に6~7割の票が「死票」になるということです。国民の声が国会に届かない理由がここにあります。
前回の総選挙(2017年)の小選挙区で自民党は2650万票を獲得し得票率は47.8%。289議席中215議席を獲得し、議席占有率は74.4%にのぼります。4割台の得票率で7割を超える議席数を確保しました。得票率と獲得議席に著しい乖離を生み出し、議席に反映しない投票「死票」が過半数にのぼりました。
又、「一票の格差」問題もあります。地域ごとの人口変動に応じて格差の拡大は避けられません。このため必然的に「格差是正」を繰り返せざるを得ないことになります。
選挙時期になると必ずといっていいほど「一票の格差」問題がマスコミなどで取り上げられます。まさにこのことです。
ではこの小選挙区制度を変えてみたらどうかと思いますが、大政党にとって有利なこの選挙制度ですから変えることはないでしょう。野党が選挙制度変更法案を国会に提出しても、”数の力” で否決されることは目に見えています。
一方、民意をもっとも反映する比例代表でみた場合、前回選挙で自民党は約1856万票、得票率は33.3%。比例での議席占有率は37.5%でした。
仮に、総選挙をすべて比例代表制にした場合、”数の力” に頼る ”おごり” の政治はできません。
比例代表制の選挙は、有権者の一票が必ず国会に反映するもので「死票」はありません。ましてや「一票の格差」問題も解消されます。
より民意を反映する議会制民主主義を確立するためには、その前提になる選挙制度を変えることが望ましいのではないでしょうか。
とはいっても、今回行われる総選挙は小選挙区制並列です。
こうした状況の中、より民主的な政治運営を掲げる市民連合の提案を受けて野党4党が共闘することになりました。
この野党4党と「市民連合」が6項目の共通政策に合意し、選挙戦では統一候補を擁立するようです。
あと一ヶ月ほどで総選挙が行われます。
前回選挙の投票率は53.68%だったようです。国民の約半分しか投票していない結果でした。
選挙の「信用」を下げかねない要因は実は私たち有権者の側にもあります。それは投票率。
ここ3回の投票率は60%に達していません。もしある政党の得票率が4割なら、全有権者の4人に1人の支持を得ただけでの政党が国会の多数を占めてしまう勘定です。
9/26付東京新聞「社説」
得票率を全有権者比で換算することを「絶対得票率」と言います。
上記のように4人に1人の25%の支持で国会の多数派を占めてしまうことになります。本当にこれでいいのでしょうか?
私たちの日々の生活に関わる消費税、年金、医療、介護、子育て、更にはエネルギー政策や沖縄基地問題、安保法制・・・。
又、「政治とカネ」問題などの不正・汚職を正す政治を望むのであれば、しっかり見据えて大事な一票を投じることが必要だと思います。
「もういいかげんにしてほしい!」「またか!」、こんな言葉を発することがない政治を願いたいです。