「政治とカネ」問題への厳しい審判
自公両党合わせて過半数割れ
10月解散総選挙が行われました。
今年に入り自民党の裏金問題が明らかになり、現政権を大きく揺るがすまでに至りました。
こうした中で行われた衆議院選挙は、案の定自民党の大敗により少数与党へと転落しました。
この詳細については、すでにメディアでも大きく報道されているのでこのブログでは控えます。
今回の総選挙では読者の皆さんも関心を寄せ、それぞれ思うことが多々あるのではないでしょうか。
私もこの選挙戦を通して感じたことを記してみたいと思います。
まず「政治とカネ」問題で追及されてきた自民党政治への不信が、今回の選挙の大きなポイントになったことは間違いないですが、肝心な政策面での話題・議論がなかったことに危惧します。
例えば、選択的夫婦別姓制度、企業・団体献金の禁止、マイナンバーカードの保険証、安保関連法の見直しや沖縄基地問題、核兵器禁止条約への批准、原発再稼働、改憲など、これら多くの課題に対してそれぞれの政党がどのような主張・政策を持っているのかという点が薄れてしまった感があります。
今回の裏金問題に対しての国民の審判は当然とはいえども、時が経てばそれほど話題として引きずることもなく忘れ去られてしまうのではないでしょうか。
それは今までの自民党議員による数々の汚職事件などを例に挙げても、結果として何も変わらない体質が続いていることに裏付けされています。
すでに自民党の裏金事件を受けて離党や非公認となり、総選挙で無所属で当選した議員が自民党会派入りを決めていることからも明らかです。
このことは、選挙で勝てば「みそぎ」は済んだという身勝手な態度がはっきりとみえています。
こうした姿勢というのは、自分たちの政策を強引に推し進めようとするための ”多数派形成” に他なりません。
このような思惑のある自民党政治に対して、今回の選挙結果は大きなチャンスだと思います。
国会審議においてもしっかり議論ができ、今までのように議論すらなく数の力で押し通すことができなくなりました。
特に重要案件については、私たち国民の要求実現の可能性が開けてくるのではないでしょうか。
国民民主党の「103万円の壁」引き上げ?
今回の総選挙では立憲民主党と国民民主党が大きく議席を伸ばしました。
こうした中、少数与党に転落した自公政治にとって、国民民主党はキャスチングボードを握った存在として注目されているようです。
国民民主党が掲げる政策の一つに、現行の給与所得控除103万円を178万円に引き上げることを訴え大きな話題になっています。
この政策は所得を増やすという目的で選挙中にも公約として有権者に訴えていました。
この「103万円の壁」問題は今まで何度も議論されてきたもので、控除額を引き上げれば減税効果から手取りが増えるだけでなく、労働時間の抑制も減り雇用拡大にもつながります。
ただ反面、この政策は納税者全体に反映されることから莫大な減税となり国家予算に大きく影響を与えることで懸念されています。
又、年金や医療保険など社会保険に加入する義務が生じる「130万円の壁」も考慮しなければなりません。
この引き上げについて疑問視する報道では、
政府によると、減税の実施8兆円近くの減収となり、仮に財源が不足する場合、国債の発行(借金)で穴埋めすることになる。財政の余裕がさらになくなれば、大災害や景気悪化時に必要な政策を打つことが難しくなる。
減税によって一定程度は消費に回るが、巨額の減税は財政不足を招き、将来的な増税を予期させるため、消費を控えさせる可能性もある。
さらに、ちょっと調べてみると、
年収103万円を少し超えた程度の低所得者には、わずかな減税しかなりません。年収150万円でも4万円程度の減税しかならないようです。
又、基礎控除を75万円引き上げると、税率が高い高所得者ほど減税額が大きくなり、年収2000万円では33万円、年収2500万円では38万円の減税になるようです。
つまり、パート社員や非正規雇用者など低所得者層に対して「手取りを増やす」救済策とは言っても、実は高所得者に恩恵のある政策に他なりません。
さらに注目すべきことは、今回の選挙戦で各野党が「最低賃金1500円」と訴えていましたが、国民民主党は「1150円」という低い目標を掲げていました。
賃上げの代わりに減税することで「手取りを増やす」?、ということなんでしょうか。
今回の選挙では「政治とカネ」問題が焦点になりました。
今後の政治改革を進める上で、各野党が訴えていた企業・団体献金禁止の法制化は必須だと思います。
又、選択的夫婦別姓制度についても世論調査で賛成が7割にも達しています。国連女性差別撤廃委員会からも4度目の実施勧告を受け、いまや財界からも要望されています。
野党が一致してこの法案に賛成すれば実現可能になるでしょう。
まさに民意が反映される前向きな国会運営になることを望みます。
これまでの与党政策によっていろんな弊害が出ていますよね。それを改善する手法も様々で、給与
所得控除も一つの手段だと思います。そして一つの政策だけで暮らしが良くなることはないでしょ
う。
また反動として8兆円の税収減になると煽っているのは財務省ではないでしょうか。常に増税を目
論んでおり減税を食い止めたいがための入れ知恵を大臣に代弁させているんじゃないでしょうか。
記憶が定かではないですが、法人税の減税時にはこんな報道はなかったと思います。
我々庶民は毎月の給与の中で支出をコントロールしているように、財務省も税収の中で知恵を絞る
べきではと思います。
その一つが防衛費ですよね。
集団的自衛権なんてゴリ押ししたために増額を余儀なくされたんじゃないでしょうか。戦争なんて
無駄な支出はありませんよね。
孫子の兵法には「戦わずして勝つ」とあるように、外交に重きを置かなければウクライナやパレス
チナのように尊い命と無駄な戦費になるだけなんですよね。
8兆円の税収減なんて大見出しにするのは、財務省の思惑を後押しするようでいただけませんが、
それに乗せられないことが大切なように思います。
凡夫さん
お久しぶりです。お元気そうで何よりです。
8兆円の税収減は、凡夫さんのおっしゃるとおり財務省試算から出された数値だと思います。
これについてちょっと調べてみましたが、他の資料によると基礎控除を75万円に引き上げると、所得税率、住民税率各10%として計算しても、一人平均15万円の減税になると試算されています。
納税者数5~6千万人とすると、やはり7~8兆円規模になるようです。
一人平均15万円減税といってもあくまで「平均」ですから、高所得者ほど減税の恩恵は大きいようです。
>法人税の減税にはこんな報道はなかったと思います。
確かにそうだったですね。自分たち(政権、財務省、財界)にとって不利になるような情報は出さないと思います。
>その一つが防衛費ですよね。集団的自衛権なんてゴリ押し・・・。戦争なんて無駄な支出はありませんよね。・・・外交に重きを置かなければ・・・。
まったく同感です。
このブログでも紹介しています「文庫カフェ」というセミナーに先日参加しました。
この講演は「北東アジア情勢と我が国の外交」というタイトルで、講演者は磯村順二郎氏と下斗米伸夫氏でした。
特に日本外交に詳しい磯村氏は、「隣国である中国、ロシア、北朝鮮、韓国のいずれとも安定的な関係が築かれていない。それらの国と如何に関係を構築するのが外交であるが、日本外交にはその能力がない」とバッサリ批判していました。
また、「外交力とは何か?、それは嫌な国、難しい国、敵対的国などと、いかに関係を構築するか、信頼関係を構築するか」であると話していました。
まさにそのとおりだと思いました。
今の日本は仮想敵国をつくって「軍事対軍事」の方向にもっていく危険な道を選ぼうとしています。そのために軍事拡大に突き進み(5年間で防衛費42兆円)、増税や社会保障予算削減など推し進めています。
こうした動きにストップをかける必要があると思います。
貴重なご意見ありがとうございました。