海抜0mから登る鳥海山 9月29日~30日
日本海から立ち上がる頂2236mを目指して
登山愛好家にとっては好きな山、憧れの山、いつかは頂を目指したい山など「特別な山」があります。そして登るルートは複数あり季節ごとに景色や眺望を楽しみながら極めていく過程がなによりも心躍る瞬間です。
東北の名峰「鳥海山」は、いつかは登ってみたい憧れの山でした。
深田久弥「日本百名山・鳥海山」より
名山と呼ばれるにはいろいろの見地があるが、山容秀麗という資格では、鳥海山は他に落ちない。眼路限りなく拡がった庄内平野の北の果てに、毅然とそびえ立ったこの山を眺めると、昔から東北第一の名峰とあがめられてきたことも納得できる・・・。
標高は東北の最高とは言え、わが国の中部へ持ってくると、決してその高さを誇るわけには行かぬ。しかしその高さは海ぎわから盛り上がっている。山の裾は海に没している。つまりわれわれはその足元から直ちに2240メートルを仰ぐのであるから、これは信州で日本アルプスを仰ぐのに劣らない。
海ぎわから盛り上がっている山、山の裾が海に没している名峰は、日本ではあまりないのではないかと思います。そして足元から直ちに2240mを仰ぐのであれば、ぜひ海抜0mからチャレンジしたいと考えました。
スタートは、鳥海山の裾が海に没している海岸エリアから選び、中でもこの山の恵みで生活されている地元の漁港である吹浦港にしました。海に没する沿岸付近はイワガキの漁場だそうです。海底から鳥海山の伏流水が湧き上がっていて、その近くの岩礁にイワガキが育っているそうです。
(「岳人」10月号の「山と海の出会い」畠山重篤著から)
早朝5時、吹浦川からの鳥海山。5時30分、いよいよ吹浦港からスタート。
吹浦駅周辺の民家の中を歩いていきます。国道7号線からブルーラインに向かう。
鳥海ブルーライン。
道路沿いには鳥海山の土と水の恵みによる農作物が育っています。
標高が上がり視界が広がっていきます。眼下には日本海の海岸線が見えてきました。
スタートから約4時間30分大平到着。大平登山口。ここで登山届を出します。
高度を上げて行くと紅葉が広がってきました。
11時40分、見晴台に到着。ここまで6時間。ランチ休憩でセブンイレブンのだだちゃ豆のおにぎりをパクリ。やっぱりおにぎりは最高ですね。
森林限界を超え熊笹と紅葉が広がる登山道を進んで行きます。
13時40分、御浜小屋到着。鳥海湖が眼下に見えます。
千畳ケ原は一面紅葉していました。
千蛇谷雪渓から仰ぎ見る鳥海山。ここから最後の急登が続きます。スタートから10時間以上歩き続け足が上がりませ~ん。5分登って立ち止まりの繰り返しです。この区間の標準コースタイムを30分オーバー!
ようやく頂上直下の御室小屋(避難小屋)に到着。スタートから11時間30分。頂上に登る体力気力はもうありませ~ん。明日登頂を目指すことにして、日が暮れる前に夕食の準備。避難小屋では私一人でした。寂しいな~。避難小屋料金千円を備え付きのBOXに入れます。深夜激しい風雨のためあまり眠ることができませんでした。
翌朝5時起床。まだ激しい風と霧のため小屋を出られません。6時前ようやく日が差してきたので登頂開始。頂上まで約20分の岩稜帯を霧の中、手探りで登って行きます。
6時20分、鳥海山登頂!頂上には岩峰が二つあり、最初片方の頂に登りましたが違ったようです。もう一方の頂に登ってようやく鳥海山頂上の標識を発見。誰一人いないので写真が撮れませんでした。今回は悪天候のためご来光と影鳥海(鳥海山の影が日本海に映る)が見られませんでした。残念!
下山開始の7時頃、なんと霧がいっきに晴れ展望が広がりました。あと1時間待っていれば頂上からの眺望が楽しめたのにな~。残念! 時間的余裕がなく下山。
下山途中、大きなカメラの三脚を担いで登ってきた登山者がいてびっくり!写真愛好家の方でした。いい写真が撮れますように。昨日、水が足りなく不安でしたが、なんと避難小屋にペットボトルが販売されていました。もちろん無人販売の水です。500ml300円。ありがたいことです。助かりました!
下山は途中から千畳ケ原コースへ。草紅葉がきれいでした!
11時、大平登山口到着。 ここからブルーラインを下って行きます。
大平山荘で昼休憩。天ぷらそばを注文、いや~美味しいですね。
ブルーライン下山途中、通り過ぎた車が停まりました。登山中にお会いした地元の登山者が窓から顔を出して「大丈夫ですか~」と言って声かけてくれました。その後、もう一台の車も停まって「頑張ってね~」と手を振ってくれました。こちらは宮城から来られた登山者でした。嬉しいかぎりですね。元気が出てきちゃいました!
二合目、一合目と高度を下げてようやく山里に下りてきました。
16時30分、ようやくゴール地点の吹浦港に到着! 歩行距離約45Km、歩行時間20時間20分。標高差2236m。もう足はガタガタでした。
最後に海水にタッチして終了!
はじめての「ゼロ to ゼロ」、オヤジの小さな小さな冒険でした。
詳しい登山記録(地図、ルートタイム)はヤマレコの山行記録にアップしました。興味のある方はこちらをご参照してください。 ヤマレコ
東北の山とくるま旅 つづく