消費税10%増税

段階的に増税される消費税

既定路線に沿ったシナリオ?

 

先週、安倍政権は、来年10月1日に予定通り消費税を10%に引き上げる方針を表明しました。
こうした流れは、日本経済の状況をみながら消費税5%⇒8%⇒10%⇒○○%というようなシナリオに基づいて増税政策が組まれているものだと思います。

国家財政を管理・コントロールしている財務省は、将来にわたって「消費税増税ありき」「前提」としてその政策が進められているものです。

このことは元・財務官僚の著書の中でも明らかにされています。
又、「日本の財政と税制政策について」という過去2回の財務官僚(講師)のセミナーを通してはっきりした方向性でもありました。

財務省に限らず、官僚の行動原理は「省益第一主義」という言葉に集約できると思う。
いかに、多くの予算を獲得し、OBを含めた自分たちの利益を確保するか・・・。この省益の確保と追及という行動原理が官僚を支えているのだ。
財務官僚には、これに加えて、「財政至上主義」という原理が加わる。現状では、「財政再建至上主義」と言い換えてもよい。なるべく歳出を減らし、歳入を増やす。これを実現する最も有力な手段が「消費税増税」という財務省のロジックである。
高橋洋一著(元・財務官僚)『「官僚」の真実』より

 

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2017年4月、「日本の財政を考える」セミナーで配布された資料。

財務省主税局審議官の方が講師として説明されました。これからの日本の財政を考えた時、最終的には消費税増税が好ましい点とその特徴を述べていました。

 

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2018年3月、「平成30年度税制改正」セミナーで配布された資料。

財務省主税局総務課長の方が講師として説明されました。法人税減税(法人実効税率の引き下げ)政策と消費税増税の使途・特徴について述べられていました。

このような元・財務官僚の著書及び財務省で税制政策にたずさわっている現役官僚の方々の見解からも分かるように、消費税増税は国家財政の主たる財源確保の手段として既定路線が敷かれているといっても過言ではありません。
この2回のセミナーの内容についての詳細は省きますが、結論として日本の財政と税制の方向性は、所得税をはじめとする各種税制度の改革よりも消費税増税が最も重要視されている点が印象的でした。
※セミナーの内容は、上記ブログを参照してください。

法人税を減税(4兆円)することで歳入が減る分、消費税増税でカバーするロジックがすでに成立していたのです。

現政権は、法人税を減税することで企業の競争力を高め収益を増やし、その結果トリクルダウンとして国民所得を増やす?狙いだったようですが・・・。
結果は、大企業の内部留保(400兆円超)は増え続け、一方、国民所得(勤労者世帯の実収入)は、実質0.3%減、又、GDPの6割を占める家計消費も落ち込みマイナス成長が続いています。

2014年4月に消費税が8%に増税された時、個人消費は17.2%減になりました。
この数値が発表された時、政府は増税前の駆け込み需要による「反動減」として想定内との見方をしました。
しかし、この時の増税以降、2人以上世帯の実質消費支出は年間約20万円ほど減り続けています。
(総務省「家計調査」)

 

「全世代型社会保障改革」とは?

 

来年10月消費税10%増税の方針が表明されて以降、新聞・テレビなどのメディアは、すでに増税が決まったような報道一色になっていることに違和感を覚えます。
さらにこの報道の中身が、政府が打ち出す ”増税に備えた反動減対策の説明” に終始している点にも異常なものを感じます。

 

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民間、NHKなどの消費税に関するTVニュースや討論会でも反動減対策の説明と議論。

 

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各新聞社の記事でも消費税増税対策に終始した報道。

 

その反動減対策として、軽減税率導入、キャッシュレス決済時のポイント還元、プレミアム付き商品券発行、住宅購入ポイント・・・などの施策もあるようですが、これら全て ”増税時の影響を緩和するだけ” の方策にすぎないのではないでしょうか。
国民の目をそうした方向に向けさせるだけの方法であり、あくまでも期限付きであることにも着目しなければならないと思います。

そしてこうした施策は、財務省をはじめ関連省庁の優れたお役人さんたちが立案したものでしょうが、実際の国民生活とはかけ離れた机の上で試算・策定したものですから、まさに、”机上の空論” ということなんでしょう。
このことは、過去にも実施されたプレミアム付き商品券の失敗でも明らかなことです。

一度増税された税率(10%)は、半永久的に続くものです。
消費税増税によって国の財政が毎年5兆円の歳入が増えるということは、所得税やその他課税以外に毎年5兆円も国民が負担し続けなければならないということです。
食料品などを対象にした軽減税率といっても8%に据え置くだけで、今の8%より税率が低くなるわけではありません。これもまた一時的な処置であり、いつ10%になるかどうかも分かりません。

こうした反動減対策に費やす労力や資金はいったいどのくらいかかるのでしょうか。
立案、準備、そして稼働するまでの莫大な費用はすべて税金で賄われるわけですから、結局すべて国民が負担することになります。

こうして多くの犠牲(国民負担)を払って増税された消費税は、社会保障費に一部回るだけでほとんどが国の借金返済に使われるだけですから驚くばかりです。

 

政府は、今回の消費税増税は、「全世代型社会保障改革」を進めるためだと主張しています。
また新しい言葉(造語?)が出てきましたね。
全世代型? すべての世代に恩恵がありそうな印象を受けますが・・・。

大きな特徴の一つは、幼児教育や高等教育の無償化などの改革を進めるとしていますが、それはすべて消費税増税と引き換えにするということに他なりません。
つまり、”社会保障を充実したければ、消費税増税を受け入れなさい” と迫る政策とも受け止められます。

これからの日本は高齢化社会に向けてさらに進んでいくでしょう。
高齢化対策として年金、医療、介護政策、又、若い世代に対する保育園増設などの子育て支援、幼児教育や高等教育の無償化など多くの課題がある中、社会保障費の増大は避けられないと思います。

国民に負担を強いる消費税増税に頼る政策ではなく、”消費税に代わる税制度のしくみをつくる” ことこそ今の政府や財務省がやるべきことではないでしょうか。
無駄な歳出を減らし、取るべきところからしっかりと税収入を確保すれば、消費税増税は回避できることだと思います。さらには消費税そのものをなくすこともできるのではないでしょうか。

今回の消費税10%増税の報道に関して、前述したようにメディアはこぞって反動減対策の説明ばかりしています。
このことは、増税そのものを固定し、増税ありきでの報道にすぎません。
本来のメディアの役割とは程遠いものに感じます。
国民が知りえない情報を伝え、公平・公正な報道をする役割がありますが、一方で権力を監視し読者や国民の利益を守るというジャーナリズムの使命が失われてきているようにも思えます。

 

冒頭で紹介した元・財務官僚の高橋洋一氏は、著書『「官僚」の真実』の中でこのように述べていました。

消費税増税は経済を悪くするのは明白なので、筆者(高橋氏本人)は経済状況を見ないで行う消費税増税には反対の立場である。
財務官僚も消費税を増税すれば、経済が悪化することくらいは理解している。
だが、彼らは、それでも ”善し” と考えている。経済が悪くなっても、既得権のある自分たちは相対的に有利になることがわかっているからだ。
例えば、官僚は雇用に関する心配はない。不況になっても給与のカットは民間ほどでもないだろう。官僚の中の官僚である財務官僚は、経済全体が悪くなっても相対的に官僚の地位は向上することを知っている。

こうした官僚の状況を聞けば、もう言葉も出てきませんよね。
もちろん財務省をはじめとするすべての国家公務員(キャリア)の方々が、こうした考えを持って仕事をしているとは思いませんが、より中枢でたずさわっている官僚の意識と行動は、このように深く根付いているのではないでしょうか。

 

このままでいけば、来年10月の消費税10%増税は実施されるでしょう。
しかし、消費税増税に頼らない施策、また、それに代わる税政策も十分考えられるわけですから、その意思は持ち続けていきたいと思います。

 

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