シルバー民主主義

「社会保障の充実」という言葉と具体的な内容

 

グループホームに入居した母の様子を見に定期的に施設を訪れています。
今では誰も住んでいない実家に立ち寄り郵便物の確認をすることも習慣になりました。
いろいろな郵便物やチラシの中に臨時給付金の通知が含まれていました。
ああ~これが65歳以上の約1100万人を対象に一律3万円を渡す給付金なのかと、早々手続きの書類を確認して投函しました。                                    先月末、銀行で通帳記入した時に「フクシキュウフキン」という名目で3万円が入金されていました。

今回の参院選から約240万人の18、19歳の有権者が投票できるようになりました。
以前から若い人の投票率は低いと言われてきましたが、はたしてどのような投票率になるのでしょうか。

いまや国民の4人に1人が65歳を超える。人口が多いうえに投票率が高いのだから、選挙結果を左右する力が大きいのは、若者より圧倒的にお年寄りだ。
政治家は選挙のことを考え、投票所に足を運ぶ高齢世代の声に耳を傾けがちだ。
そんな政治を称して「シルバー民主主義」という言葉も生まれた。
6.21朝日新聞社説

「シルバー民主主義」
少子高齢化の進行で有権者に占める高齢者(シルバー)の割合が増し、高齢者層の政治への影響力が増大する現象。選挙に当選したい政治家が、多数派の高齢者層に配慮した政策を優先的に打ち出すことで、少数派である若年・中年層の意見が政治に反映されにくくなり、世代間の不公平につながるとされている。
コトバンクより

私たちの生活は、どんな世代においても政治と何らかの関わりを持っています。
特に社会保障という面においては、年金、医療、介護保険など高齢者にとって大きなウェイトがあり、政治への関心が高まることから投票率にも影響してくると思います。
では、若者世代ではどうでしょうか。
社会保障といってもあまりピンとこないのかもしれません。最近では、子育てにおける「待機児童問題」が大きな話題になり政治への関心が高まりつつあります。
更にここ数年、低賃金、ブラック企業、若者の非正規雇用の増大など深刻な社会問題になりつつあります。                                                   しかし、こうした問題が直接政治との関係や改善につながるか?となると難しい面があるように思えます。                                         なぜなら、それは自分が勤めている個別企業の問題であり、又、雇用してもらう側、賃金を受け取る側という弱い立場であることから、直接政治との関係では薄くなり、あるいは批判的な言動を避けるようになって政治との関わりを持ちたくないという面もあるのかなと思ったりします。
本来であれば、そうした企業活動を政治による規制、制度などでコントロールすることが必要ではないかと思いますが、現実にはそこまでの政治に至っていないが残念なことです。

では「シルバー民主主義」といっても、はたしてどうなのでしょうか。
先日、友人から特養(特別養護老人ホーム)の利用料負担が倍増したと聞きました。
月額6.5万円だった負担が13万円超になったそうです。
又、2ケ月に一回支給される年金額が減ったとも言ってました。
ああ~これがあの時の法案の実施によって増額されたんだな~と思いました。しかし、これだけ負担が増えたことには驚きでした。

2014年現政権(自民・公明党)が「医療・介護総合法」を可決しました。
主な内容では、「要支援1・2」のヘルパー・デイサービスの保険給付を外すこと、特養入所条件が要介護3以上への限定、利用料の2割負担導入などが大きな話題になりました。そしてもう一つよくわからなかった介護施設の食費・居住費にたいする「補足給付」の対象限定がこの大きな負担増につながったようです。
この「補足給付」は利用者の所得に応じて適用されてきたようですが、世帯分離している配偶者が住民税課税である場合、単身で預貯金がある場合などによりその対象から除外され、食費・居住費の大幅な負担増になるようです。                 これらのことは、選挙後なしくずし的に社会保障費の削減ということで強行されました。

国政選挙において今まで以上に「社会保障の充実」という言葉をよく耳にします。
特に高齢者層にとっては生活を支える大事な制度ですから関心が高まります。
「充実」という言葉は、これからの生活の改善につながるだろうという希望を抱かせてくれるような気がします。                             しかし現実は、年金削減、医療費の負担増、介護保険制度の改悪など高齢者にとって深刻な状態に陥ってきています。                           今回もまた選挙が終われば社会保障の削減・改悪が行われるのは目に見えているようです。言葉だけの「シルバー民主主義」は、もう形骸化されています。

90歳の母に支給された臨時給付金3万円はそのまま銀行に預けています。
もう出歩いて買い物することさえできない母です。多少は施設利用料の足しにはなるかと思いますが、それよりも介護施設の充実やそこで働く介護士のために役立つ資金に置き換えられた方が良いのではないかと思いました。                   なぜなら、親身になって母のお世話をしてくれる介護士やヘルパーさんの働く環境改善に使われることは、ひいては母の幸せにつながると思うからです。
ブログ:介護士

参院選前にこの給付金が支給されたことで選挙対策(シルバー民主主義?)ではないかと言われてもしょうがないと思いますが(安倍首相は否定していました)、そんなことよりもっと優先順位をつけた改善につながる財源として使われるべきものだと思いました。

参議院選挙が公示されました。
いろいろな争点がありますが、「社会保障の充実」という言葉だけに踊らされることなくしっかりとその内容を見極めていくことが大事だと思います。

 

2 thoughts on “シルバー民主主義

  1. 政府の言う「社会保障の充実」というのは、介護保険制度の場合、2025年に向けた制度作り、枠組み作りに取り組んでいるということではないでしょうか。
    「在宅における医療・介護の連携」「地域包括システムの構築」「専門職としての介護職による中重度・認知症に特化した介護(医療経験と知識も併せ持つ介護福祉士の養成、認知症介護についての専門性の向上)」「市町村単位の介護サービス事業所の再編と淘汰」などと、このようなメニューが並んでいます。
     これらのメニューに沿って、大きな制度の変更があり、そこに予算が組まれ、たとえば、新たな研修や説明会を受託した民間会社や資格試験・研修実施の業界団体・外郭団体などにもお金が流れています。
    決して、利用者や介護職を温めるということではありません。そこは「介護給付の限度額まで」あとは「自己責任」です。

    1. mittyさん

      「現政府」の進めている政策について、詳しい専門的なコメントありがとうございます。                            利用者や介護職まで含めた社会保障の充実こそが、本来の制度としてあるべき姿だと考えています。年金だけでは施設入居もできない状況が起きている現実の中、誰のための社会保障なのかわかりませんね。
      後は「自己責任」で対応してくださいというのは、形だけ作って中身のない制度と言われてもしょうがないように思います。
      財源がないから削減とか、消費税増税が先送りになったのでそれ以上のことはできませんと言ったら何も手を打つことができません。
      消費税増税だけに頼る社会保障政策では先が見えません。また同時に税収入の取り方にも問題(大企業・富裕層優遇税制、タックスヘイブンなど)があると思います。                           国の税収入のあり方と使い方は、全て国民の生活を豊かにするものとして活用されるべきものだと思います。

      介護保険制度の制度作り、枠組み作りに取り組むと同時に利用者や介護職のことを含めた政策こそが本来の社会保障制度ではないかと思います。
      現場からの貴重なご意見ありがとうございます。

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