延期しても税負担は変わらない
増税しなくてもいい選択肢は?
昨日18:00、安倍首相の記者会見がありました。 一番の注目は、消費税10%増税の時期を2019年10月まで2年半延期することでした。 アベノミクスについては、都合の良い数字を並べ「順調に結果を出している」と言ってましたが、実質賃金は5年連続マイナス、初めて国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が2年連続でマイナスとなった事実にはふれませんでした。 この会見前後の政治状況について、新聞などのマスコミやTVのニュース番組においては延期するしないの報道ばかりが目につきました。 私たち庶民にとっては、確かに消費税増税は直接生活に影響するもので大きな関心事ですが、それだけでほんとうにいいのでしょうか。
消費税増税を延期することで「遠のく財政再建」とか「社会保障に影響」などという発言や新聞の見出しが多くみられました。 こうしたことは、増税がなければ出来ないことなのだろうか?という疑問があります。 新聞各社、TV各局ほとんど全ての報道が、消費税自体を固定(必要)した上で延期するかしないかという話題に終始し、「消費税是非の問題」から国民の目を逸らすことになりかねないと強く思いました。
わが国の経済停滞の原因は、構造的な問題である。高齢化の進展による労働人口の減少、経済基盤が確立せず結婚や子づくりに踏み出せない非正規雇用者などの若者の増加、経済の先行きに確信が持てず設備投資や賃金引き上げを行わない企業経営、といった課題は、2年前に行われた消費増税とは直接関係ないものである。 ダイヤモンド・オンライン
消費税増税が行われなければ現在の経済状況の改善、社会保障への影響があると思われるようですが、現政権は金融政策だけに頼るばかりで実態経済への対応が何らとられていないことに大きな問題があるのではないでしょうか。 企業の利益が再分配(賃上げ、最低賃金、正規雇用など)されて、内需の拡大につなげていくことが求められていると思います。
もう一つは所得・資産格差の拡大への対応である。 余裕のある層(高額の金融資産を持つ富裕層)に負担を求め、それを余裕のない層、具体的には非正規雇用者、子育て中の勤労世帯、女性労働の中核をなすパートなどの負担軽減につなげていく改革だ。 余裕のある個人や企業により多くの負担を求め、負担に耐えられない企業・個人の負担は軽減していく。 ダイヤモンド・オンライン5月31日
大企業の内部留保300兆円超え
財務省が6月1日発表した2016年1~3月期の法人企業調査によると、大企業(資本金10億円以上)の内部留保は前年同期比2.9%増の301兆円になったそうです。 安倍政権は、今まで消費税を増税する一方、逆に法人税の減税を進めてきました。 前回の消費増税分は、法人税減税分にほぼ相当します。 法人税減税により経済の活性化につなげる意図はあったかもしれませんが、現実は内部留保として貯め込まれる結果になりました。(トリクルダウンの失敗など)
更に、多額の研究費を使う企業の法人税を減税する「研究開発減税」、親会社と子会社の損益を通算して税金を減らす「連結納税制度」、他の企業から受け取った配当の一部または全部を非課税とする「受取配当損益不算入制度」、海外にある子会社から配当を非課税にする「海外子会社配当損益不算入制度」などの減税処置があります。 こうした税制の見直しで数兆円の税収入が見込まれると思います。 ブログ:税と暮らしを考える
本来、所得税は所得が高いほど負担率が高くなるはずなのに、実際には所得が1億円程度を超えると逆に負担率が下がってしまいます。 ブログ:税と格差を考える
又、最近話題になっているタックスヘイブン問題もあります。税率の低い国を利用した企業・個人の「税逃れ」への批判も世界的に高まっています。 こうした法人税減税、富裕層の税率問題、タックスヘイブンなど本来国の歳入として税収入が見込まれるはずなのに、そうした問題点に目を向けず財政再建のために消費税増税をするという政策には納得がいきません。
皆さんどうお考えでしょうか? 消費税増税の時期を延期するしないの話題に目を向けさせられ、「延期されて良かった」という気持ちもわかりますが、見方を変えれば「消費税増税の是非」「消費税そのものの是非」について考えてみてもいいのではないでしょうか。