3000万人を超える高齢化社会の中で・・・
老後破産は自己責任ではない
毎月1~2回、田舎(静岡の実家)で一人暮らしの母(90歳)のところへ出かけます。
月1回の通院と薬をもらいに母を伴い内科の病院に行きます。いつものことですが、病院の待合室は高齢者でいっぱいで2時間ほど待たされます。その後も、整形外科病院、市民病院に行く機会がありましたが、この現象は(高齢者でいっぱい)変わることはありませんでした。
実家に来たついでに、故障していた腕時計を直しに商店街の時計店に行きました。
この時計店は、小中学校の同級生が親子三代で営むお店です。(親、本人、息子夫婦)
中学生の頃、この商店街には5軒の時計店がありました。今では2軒です(内、1軒は雑貨店と兼業)。時計販売だけで生計を立てているお店は友人宅だけです。
子どもの頃からの幼馴染だったこともあり、ざっくばらんにそれとなく経営状況を聞いてみましたが、案の定厳しいようです。最近では、ブランドの中古品売買がマニアの中で人気があるらしく、インターネットを通じての収益が見込めると言ってました。
そんな話をするうちに、これからの生計についての話題になりました。自営業ですから年金は国民年金だけです。国民年金だけではもちろんやっていけません。親の介護、自分たちの夫婦の老後の生活、子どもたちの生計など話は尽きません。 そんな年金や老後の話題になると彼の口から「下流老人」の言葉が出てきました。
最近出版されたようでぜひ読んでみたい、又、NHKスペシャルの「老後破産」も観たようで、かなり関心があるようでした。
3000万人を超える高齢者やこれから迎えようとしている年代の人たちにとっては、年金医療、親の介護、子ども達の行く末について皆さん共通した関心があります。
10月17日、都内で「反貧困全国集会2015」が開催されました。集会といってもビルの数室を借りての講演会、勉強会のようなものです。貧困問題に関するいくつかのテーマに分かれての分科会があり、その中で「下流老人のリアル」を題材にした講演があり参加してみました。
「下流老人」はご存じのとおり藤田孝典氏の出版本(2015年6月)で最近話題になっています。すでに16万部を突破し、老後をテーマに現在とこれからの社会の縮図がわかりやすく克明に描かれています。 「老人」という題目から高齢者を対象にした内容の本なのか?と想像してしまいますが、実は今日本で起きているあらゆる諸問題が「結果として大変な社会になってきている」ことを警笛する書籍です。 この本の詳細については記しませんが、老後破産、生活保護、独居老人などという言葉にピンとこない方もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、これから生活していく上で必要な年金、医療、介護、子育てという社会保障を考えると、私たち全国民に直接的、現実的に関わってくる問題です。
10月17日「反貧困全国集会2015」。分科会の「下流老人のリアル」講演・勉強会。
コメンテーターは、「下流老人」著者の藤田孝典氏(左側)とNHKドキュメンタリーの「老後破産」プロデューサーの板垣氏(右側女性)
現代社会の縮図として浮かび上がってきている老人の生活問題は、単に高齢者だけの問題ではなく、これから更に加速する社会全体の問題として捉えるべきだと強調されていました。 団塊世代とその前後の世代は、高度経済成長やバブル期を経験してきました。そして、今の若い世代と比較すれば高い収入と充実した福利厚生の中で「中流意識」を持っていたのではないでしょうか。そんな世代においても老後破産、生活保護の状況が進んでいます。
月額28万円の年金であっても破産状態になっている現実があるようです。
特に、身体を壊し高額医療費の出費により貯蓄を切り崩し使い切って、それでも足りず年金のほとんどが医療費と住居費に消えていく中で起きている問題です。
写真左:国民の貧困率16.1%。二人世帯の所得170万円未満が貧困ライン。
写真右:若者の老後が危ない。非正規雇用は下流老人に直結。
現在、非正規雇用は全労働者人口の37%に達しています。正社員との違いは給与の差はもちろんですが、働き続ける雇用保障は全くありません。更に、厚生年金もなく国民年金や医療保険、雇用保険などの社会保険料は会社負担分はなく全て自腹です。
団塊世代や60歳前後(50代以上)の方々はすでに痛いほどお解りかと思いますが、民間企業は利益至上主義です。会社経営の売上は、その時々の経済状況においてコントロールしずらい部分はありますが、経費はコントロールできます。その中で一番大きなウェイトを持つ人件費は確実にコントロールできる費目です。決められた利益、又は、目標とする利益を確保するためには、ほぼ確実にこの人件費にメスを入れます。
正社員より非正規雇用にまい進するのは目に見えています。派遣法及びその改悪は、まさに企業のおいしい飴として使われます。経営者は、こんなおいしい飴を手放すはずはありません。 非正規雇用37%に留まらず、更にこの数値は確実に上昇していきます。極論を言えば、正社員がいなくても訓練された能力のある非正規社員がいれば、会社は十分な利益をあげることができます。現在の企業の内部留保350兆円は更に貯まる一方でしょう。
ここに、「下流老人」のサブタイトル「一億総老後崩壊の衝撃」があります。
すでに自己責任の範囲は超えています。働いても働いても収入は増えず、若者は結婚もできない状況にあります。結婚できなければ少子化はいっそう進み、国の生産性は落ち込んでいきます。貧富の差は更に加速するでしょう。
これからも引き続き「下流老人のリアル」について考えていきたいと思います。
同感です。
不遇の人はたくさんいると思います。
時代の変化が早すぎて、苦労している人が多くなったと思います。
今自分は万全だと思っている人たちが、誰にもおきうることとして問題視しないと、
自分の子供、孫の代は厳しい境遇になる確率が高い。
このまま経済大国がいいのか、疑問を感じています。
興味深くブログを拝読しました。私の勤めた(勤めている)会社でも、バブル崩壊後、正社員の給与をおさえ、別会社を作り給与の安い社員の比率を上げて会社の利益を確保してきました。
給与をおさえた影響がこれからでてくるのだろうと思います。続編を楽しみにしています。
又、年金
くろとごまさん
コメントありがとうございます。
私たちの世代は、バブルやその後のリーマンショックのような「経済の高低差」を経験してきました。又、その時の経営者の対応も見てきました。
現在、企業の内部留保は356兆円にのぼっているようです。これだけの利益を上げながら労働者に給与として還元されていないのが実態です。
若い世代の人たちが、働く条件(賃金、福利厚生など)や今の生活状況に、疑問を感じつつも「今の世の中では当たり前、しょうがない」という気持ちを持つようになっていくことが恐ろしいことだと思います。
これからもこうした問題について考えていきたいと思います。
家犬さん
コメントありがとうございます。
先日安倍首相は「アベノミクスで雇用は100万人以上増えた。2年連続で給料も上がった」と言ってました。中身をみると、非正規雇用が178万人増加、正社員は56万人減です。また賃金においては、非正規の賃金は正社員の63%と大きな格差があります。給料が上がったといっても物価を考慮に入れた実質賃金はマイナスです。
「不都合な事実」については口をつぐむようです。
家犬さんがおっしゃるように、私も日本はこのままでいいのか疑問を感じます。