続:「政治とカネ」問題 (3)

トヨタ営業利益5兆円に違和感?

企業の政治献金廃止へ!

 

政府・日銀はともに「賃金と物価の好循環」を唱えています。
賃金が上がれば物価が上がり、物価が上がれば賃金が上がり、それによって経済が好転するという理屈です。
しかし、コレってほんとにそうなんでしょうか?
このことは、実質賃金のマイナスがそれを示しています。直近の統計調査では23ケ月連続マイナスです。

今春闘においては大企業を中心に賃上げが成されたようですが、就業者の7割を占める中小企業を中心に賃上げが進んでいないのが実態です。
中小企業は賃金を上げたくても円安による原材料の高騰や価格転嫁できない状況にあるからです。

こうした中、先日新聞記事で各紙「トヨタ営業益5兆円」という大見出しが掲載されていました。又、TVニュースでも最高益と報道され話題になっていました。

トヨタ自動車が8日発表した2024年3月期連結決算は営業利益が前の期比96%増の5兆3529億円だった。過去最高を更新し、日本企業で初めて5兆円を越えた・・・。
トヨタ自動車の稼ぐ力が一段と高まっている。営業利益は値上げで1兆円、円安で6850億円増えた。

(各紙新聞記事)

 

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退職後10年乗り続けたキャンピングカー(ハイエース)はトヨタ車でした。長距離走行でも全くエンジントラブルはなく快適に乗れる車として愛用させてもらいました。その後、キャンピングカーを手放した後もトヨタのプリウスに乗り換えています。
日本を代表する自動車産業としてユーザーの期待に応えてくれている点では評価は高いと思います。

日本経済が低迷する中、この記事は一見明るい材料として映し出されているように見えますが・・・。

トヨタをはじめこうした大企業は多くの雇用を生み出し社会に貢献していると思います。
ただ一方でその裏側に隠された利益最優先のための手段が政治を歪め、格差拡大につながっていることに違和感を感じざるをえません。

今、国会で大きな話題になっている裏金事件に関連し、税制において政財界の歪んだ関係が浮き彫りになってきています。
特に大企業向けの研究開発減税は、もともと研究費を増やさなければ減税されない仕組みでしたが、2003年に研究開発費の総額に減税する「総額型」が導入されました。これは研究費を減らしても減税の対象になるという制度です。
このことで大企業は大幅な減税処置がされるようになりました。
今国会審議でも研究開発減税の22年度分の実績総額7636億円のうち、減税額が最も大きい企業は約802億円だと指摘されていました。
ではこの企業はいったいどこの企業なの?
国会での野党質問に「1社で減税額の1割を占める企業はトヨタ自動車以外にあり得ない」と追及されていました。
鈴木財務相は個別の企業は開示できないと答弁されたようですが、多分当たっているでしょう。

こうした減税制度は他にもあります。
グループ内の黒字企業と赤字企業の利益を相殺させることができる連結納税制度に大企業のほとんどの企業が毎年総額数千億もの減税になっています。

その他にも「消費税還付金」、「受取配当金益金不算入」制度もあり、還付や減税の対象になっています。

これら政府の減税政策によって企業(主に大企業)の体力が維持拡大され、設備投資や雇用・給与増になれば日本経済の活性化につながるのですが・・・。
しかし、現実は内部留保(500兆円越)として貯めこまれ市場にお金が回らない社会になっています。

 

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東京都立大学オープンユニバーシティ「衰退する日本の現状とその要因」講座の資料から
法人税減税額と輸出大企業に対する「消費税還付金金額上位10社」の推算

 

そして一方、少子高齢化で社会保障制度の危機が叫ばれ、社会保障の一体化論?で消費税増税が繰り返されました。更に各種社会保険料の増税も続いています。
毎年度の国家予算は拡大しています。今年度も112兆円を上回っていますが、多額の国債(国の借金)に頼っているのも見逃すことはできません。
社会保障財源が厳しい、これでは税収が足りない?という一方で、せっせと法人税減税や大企業優遇税制を進めているのですから呆れ返ります。
政府自民党が財界・大企業、富裕層向けの政治を進め、私たち国民のための政治が行われていないのが現実ではないでしょうか。

今話題になっている裏金の原資は、企業や業界団体による政治資金パーティー券購入という、形を変えた企業・団体献金です。
営利が目的である企業の政治献金は見返りを求めるものであり、本質的には政治を買収する賄賂ではないでしょうか。

 

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会社「四季報」から(2022/02/09 会社四季報編集部資料)

先に述べた企業献金に関する国会質問では、自民党へのトヨタの献金額は6億1520万円(13~22年)に上り、同期間の研究開発減税は8700億円だと指摘されていました。

こうした各大企業の献金は毎年のように行われ、キックバック(還付)と言われてもおかしくはないと誰もが思うのではないでしょうか。
しかし一方では、献金は浄財だという見方もあります。それは寄付金のように公共的な慈善目的のために無償で譲渡するという考えなのでしょうが・・・。
ただあまりにも金額が大きすぎます。それも毎年のように行われているのであれば、やはり ”見返り” を要求するものではと思います。

 

パーティー券「5万円越」公開も意味がない!

 

先日、上脇博之さん(神戸学院大学教授)のオンライン講演会に行って来ました。
上脇さんは、今回のパーティー券裏金事件を告発した方です。
告発の内容は、自民党の派閥が20万円を越える政治資金パーティー収入の明細を書いていなかった点を指摘し、違法性を追及したものでした。

講演では、安倍派(清和政策研究会)でみると、キックバック(還流)は5億円を越え、このうち政治団体で明細を書いていなかったのは3000万円程度だったそうです。
とすれば企業が買った分が圧倒的に多く、それが裏金になっているとの指摘でした。ところが、企業には収支報告書制度がないので、企業がどれだけ買っているか調べようがないと話されていました。

上脇氏はこうした状況から
「公明党の要求に従って公開基準を下げても(10万円→5万円)、そもそも企業分の裏金づくりを防ぐにはほとんど意味がない」と語っていました。

政治資金パーティーを禁止するか、収支報告書制度のない企業や任意団体のパーティー券の購入を禁止するしかないのではないでしょうか。
今回の自民党、公明党、日本維新の会による公開基準引き下げ論議は、「本質隠しのパフォーマンスだ」と指摘されていました。

裏金事件となった政治資金パーティーの利益率は約8割越だそうです。しかもパーティー券の購入先は7~8割が企業ということですから、まさに「形を変えた企業・団体献金」というのもわかります。

1994年の「政治改革」では、賄賂性の強い企業献金が課題とされました。
しかし、この企業献金は合法とされ、更に政治資金パーティーも認められたということで二つの抜け道が残されました。
公開基準が「5万円越」に引き下げられても焼け石に水で、更にもっと悪質な形で裏金づくりがされるでしょう。

 

毎年各党は政党助成制度で交付金が支給されています(共産党を除く)
この交付金は私たち国民が年間一人250円負担しているお金です。
2023年の自民党の交付金は159億円のようです。これだけ多額の交付金を受けても、更にパーティー開催で裏金づくりしているのですから呆れます。

注目するのは、そうした交付金が使われず貯めこまれている点です。
上脇さんのお話によれば、自民党の「翌年への繰越額」が、2022年でみると214億3957万円だったそうです。
この内、政党交付金が203億5706万円という驚くべき額になっていました。
使われなかった交付金は本来国庫に返納されるべきだと思いますが、基金を設立して貯め込むことができる抜け道があるようです。

 

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講演会の資料:自民党本部の政治資金における「翌年への繰越額」

 

今回の裏金事件は、単に政治資金規正法に沿ってパーティー収入の明細を書いていなかった違法行為のみに注目されているようですが、実はもっと深く広い意味で私たち国民生活に大きく関わるものが浮き彫りにされた事件ではないでしょうか。
それは一言で言えば、先に述べたように企業の政治献金は本質的に政治を歪める賄賂だと言うことです。

消費税増税、各種社会保険料の増税、5年間で防衛費(軍事費)43兆円、原発再稼働推進のための予算など・・・。一方で法人税減税、大企業優遇税制、労働法制の改悪など・・・。
これらすべて企業の政治献金とつながっているといっても過言ではないでしょう。私たちの目に見えないところで行われている闇があるように思えてなりません。

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