真っ暗闇なトンネル150mも
秘境の露天風呂を独り占め!
今回の水平歩道トレッキングでよくわかったのが山の地形です。
歩道はほぼ水平に保たれていますが、一言でいえば ”黒部川(沢)の側壁をトラバースする道” でした。
山の尾根部分の断崖絶壁の道といくつもの支沢(沢の支流)をジグザグに折り返していく地形が延々と続いていたことです。
山を削り、岩をくり抜いていく道は崩落により遮断されることがありますが、支沢の道を維持する方がもっと大変なことではないかと思いました。
この支沢の道は、岩が積み重なったガレ場状態で水や落石によって常に変化します。支沢を渡れる歩道自体がなくなってしまうことにつながります。
そこで考えられたのがトンネルなんですね。
黒部川本流に注ぐ支沢の「志合谷」(しあいだに)
画像でわかるように水平歩道は山腹を一直線に進んでいますが、この支沢を渡る歩道は途切れています。
歩道を作っても落石などですぐに崩れてしまうほど危険なためトンネルが作られたようです。
志合谷の対岸に見えた穴がトンネルの出口のようです。(中央右)
「志合谷トンネル」
トンネルの入口数メートル手前に来ただけで冷風が感じられました。暑さの中、とても心地いいですね~。
トンネルの長さは150mだそうです。入口には「トンネル内照明必要」の掲示板。ここでヘッドライトを装着してかがんで入りました。
トンネル内は真っ暗で照明がなければ進むことはできません。足元は水が流れビチャビチャと。登山靴であればなんとか大丈夫のようです。
しばらく進むと先ほどの涼しく気持ちよい感覚から寒さを感じるくらいになってきました。道は蛇行しながらまだ先の明かりがまったく見えませ~ん!150mというのはとても長~く感じられました。
絶壁の歩道を歩くよりよっぽど怖いです!
ようやくトンネルから脱出。トンネルというより洞穴という感じでした。
今度の支沢には「砂防堰堤」(さぼうえんてい)がありました。
水量の多い支沢に歩道を作るのは困難だと思います。ここで考えられたのがこれもトンネルなんですね。
先ほどの深く掘り進めた長いトンネルと違って、この砂防堰堤の中がトンネルでした。
今度は出口の明かりが見えたので安心。こちらも天井が低く、すれ違いができないほど狭い通路といった感じでした。
振り返ってみるとこんな感じです。岩や土砂が大量に流れ出てくる沢に歩道を作るのは確かに難しいですね。
そして出口からは水平歩道が続いていました。
ようやく阿曾原温泉小屋が見えました。
実はこの時点で当初計画した行程時間より1時間半ほど遅れていました。暑さのためか休憩回数を重ね、水も2L飲み干し疲労もたまっていたことからでした。
多分到着時間は夕方5時頃だと思い、テント泊は無理かな~と感じていました。
水平歩道とは言っても鎖やハシゴなどのアップダウンもあり、地図の参考コースタイムではちょっと無理な道のりでした。これも経験してみてわかるものです。
16:50分、阿曾原温泉小屋到着。広いテント場もあります。
(小屋宿泊は予約制、テントは予約なしの制度)
小屋のご主人に話してみたところ「今日はガラガラだから好きな所に寝ていいよ」といった感じで、大部屋を一人で占領させてくれました。(素泊まり9000円)
せっかく持参してきたテント装備ですが、身体のことを考えるとこれもしょうがないです。
この阿曾原温泉小屋というのは、黒部ダムに向かう下ノ廊下と欅平からの水平歩道の中間地点に位置しています。
又、裏剱に向かう仙人池や池ノ平方面への分岐になっていることから、一般の登山者はほぼ皆無。
どちらかというと上級者やマニアックな登山者が多いところです。
ご主人から露天風呂を勧められました。
「今誰も入ってないから暗くなる前に行ったほうがいいよ」と。
小屋から5分ほど谷側に下ったところにある露天風呂。
思っていたよりかなり大きいな~。もちろん源泉かけ流しの秘境の温泉です!
奥にあるトンネル?に源泉があり、そこから温泉を引いているためかなり熱いです。このため近くの沢から水を引いて湯加減を調整していました。
脱衣所はありません。一応、1時間ごとの男女入れ替え制になっていました。
当初テント泊予定だったため食料持参。
夕食は牛カルビ焼肉です。塩コショウで味付けした肉を冷凍して持ってきていました。
簡易食料やレトルト食品と違ってやっぱり旨いな~。
朝食はパンに野菜とベーコンを挟んだバーガーとコーヒー。
夕食も朝食もシンプルな料理ですが、こうした山での食事は実においしいですね。
帰りは昨日辿った水平歩道を戻りました。
こうした滝が流れる支沢もありますが、沢をまたいで行くことができる場所でした。
宇奈月温泉に戻って来て日帰り温泉入浴。
一昨日、宇奈月温泉に来た時、温泉街のお祭りがありました。この時、入浴した後にお祭り記念として1回分の無料入浴券をいただいたので利用しました。
帰りの道沿いに梨の直売所があったので立ち寄ってみました。
後でしらべたところ富山県は梨の栽培が盛んなところなんですね。
ということで、今回はかなりマニアックな水平歩道トレッキングを体験してみました。
実はこの水平歩道は黒部川の核心部と言われる「下の廊下」とセットで歩き、上級登山者の間では人気のトレッキングコースとして有名なルートです。
この下ノ廊下は秋にならなければ開通しないコースです。夏場でも登山道に積もった雪が溶けず、秋に入ってようやく溶けて開通するため約一か月位しか利用できない歩道です。
そして、このルートを辿るには途中唯一の阿曾原温泉小屋に宿泊(テント泊含む)するしか方法がありません。
このため、阿曾原温泉小屋に宿泊するためには4ケ月前に予約を入れるルールになっているそうです。
それだけ全国から登山者が殺到する時期のようです。
テント泊は基本予約なしですが、テントが張れない状態になるくらい混むそうです。
そんな超マニアックな上級者でない私にとっては、とりあえず水平歩道だけ体験でき満足なトレッキングでした。
黒部峡谷「水平歩道」 おわり
見るだけで怖そうなトンネルですね。
しかも真っ暗とは・・・横溝正史の世界のようです。(笑)
複数の人と一緒なら良いのですがお一人で行かれたとは、びっくりです。
黒部渓谷は自然豊かでありますが、とても険しいですね。
多くの人を寄せ付けないのかもしれませんね。
山小屋の方たちはどのようにして食品や他の物を調達しているので
しょう?
心身の疲れをいやす「温泉」があるとは何よりです。
滝もあり、マイナスイオンたっぷりですね。お天気が良くて
何よりでした。
相変わらず「静」と「動」を取り入れて人生を楽しまれて
いらっしゃるようで何よりです。
Roseさん
う~ん、やっぱりトンネルは怖かったですね。
前方はライトで照らされているのでまだ安心ですが、後ろがなんとなく怖いです。もちろん誰もいないんですが想像するだけで身の毛がよだつ感じでした(笑)
どこの山小屋に行ってもこれだけの食料を調達するのは大変なことだな~といつも思っています。時々歩荷さんに会うことがあります。荷物の重量を訊いて驚きます。
その他、最近ではヘリコプターが主流になっているようです。ただこれも場所の地形などで難しい所もあるでしょう。食料品、飲料などが高くてもこれはしょうがないと思います。
最近の登山は特に歳を感じることが多くなってきました。今までになかったことです。これからは歳相応の登山、トレッキングに切り替えて楽しんでいこうと思っています。
特に「行程時間に余裕を」が大きなポイントかなと。
コメントありがとうございました。