黒部峡谷「水平歩道」(前編)

トロッコ電車の終点駅「欅平」から

水平に保たれた絶壁の道10km!?

 

昨年、日本百名山の登頂を終えて今度は行ってみたい山や渓谷、ちょっとマニアックな所などじっくりとプランニングしてきました。
昨年の夏は、ぜひ挑戦してみたかった甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根を辿ってみました。一般の登山ルートとは違いかなりこだわりのある登山者たちとの出会いがありました。

さて今夏は?、これも数年前から温めてきたプランの一つで、黒部峡谷の「水平歩道」トレッキングにチャレンジしてきました。
この「水平歩道」は、戦前黒部川水系の電源施設開発に伴い資材の運搬や電線の巡視路として作られた道だそうです。

富山県黒部市の欅平から仙人谷まで、黒部川上流沿いに約13kmにわたって延びる歩道。
道は黒部川の左岸に沿って、一部区間を除きほぼ同じ標高(約1000m)を保ったまま水平に延びている。鋭く切り立った黒部峡谷の断崖を「コ」の字形にくり抜いて作られた道であり、幅は狭いところで70ー80cmほど。
危険個所には山側に手すり代わりの太い針金やワイヤーが張られているが、谷川には転落防止の柵などは設けられていない。また欅平から12kmほどの場所にある山小屋「阿曽原温泉小屋」を除けば途中に避難所はなく、エスケープルートも存在しない。

戦後、関西電力の管轄になり、1963年に黒部ダムが建設された際、中部山岳国立公園内である現地にダムを建設する条件として、日電歩道(下ノ廊下)および水平歩道を一般登山者向けに維持・管理することが厚生省(当時)より関電に対して義務付けられた。これにより、関電は毎年数千万円の費用をかけて両歩道の整備を行っている。
ウィキペディア

 

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山を削り、岩を削りほぼ水平に歩道が作られていました。

 

そんな危険でもある歩道を一度はぜひチャレンジしてみたい思いにかられ、同時にそこからの絶景を楽しみにして富山県黒部市に向かいました。

 

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黒部川は日本海にそそぐ河口付近では幅数百mの大河ですね。
黒部峡谷への玄関口「黒部峡谷鉄道宇奈月駅」。駅前駐車場に車中泊(前泊)

今回のトレッキングでは天候を一番重要視していました。
危険を伴う水平歩道は雨天が禁物ということから、天気予報を注視して晴日を狙ってプランしました。
このため事前のホテル予約はせず、すぐ行動できる車中泊に。

 

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黒部峡谷トロッコ電車。夏場はオープン型の客車が心地よいです。
始発の宇奈月駅から終点の欅平駅まで1時間20分。片道1980円。

 

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トロッコ電車から望む宇奈月湖と湖面橋。途中の「出し平ダム」

 

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終点の欅平。ここからいよいよ水平歩道に向けて登山開始。
まずは水平歩道登山口まで「しじみ坂」の急登350mが待っています。「山と高原」地図によれば40分の道のりですが、なんと1時間を要してしまいました。

実はザックが重い!。というのもテントを背負っているからです。
今回は阿曽原温泉小屋にあるテント場を利用しようと計画して12kgオーバーのザックになりました。
必要最小限の装備とはいっても猛暑を考慮し水2Lも重いな~。

 

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水平歩道入口の分岐
「ここから先は、上級者向けの登山道です」という看板があり、ローピングされていました。
というのも、この分岐は一般の観光客が「パノラマ展望台」に行くルート上にあるため、このような看板が掲示されているようです。
ロープをはずして、いざ水平歩道へ!。この後もまだしばらく急登が続きました。

 

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標高1000mほどの所に登ってくると一気に視界が広がりました。

 

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いよいよ水平歩道の入口。ここから約10kmの歩道が続きます。

 

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おお~!スリル満点の登山道ですね~。谷側は絶壁です。
岩をくり抜いた歩道が次から次に現れてきました。確かにすれ違いができませんね~。

 

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振り返ってみるとくり抜いた岩肌が。高度感満点といった感じです。

 

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岩を削れない所はトンネルが掘られていました。こうしたトンネルは2か所ありましたが、その他にとんでもないトンネルがありました。それは後ほど。
山側には太い針金が至る所に取り付けられていました。右手に持って安全確保が必要です。
ワイヤーの補修用や新規設置用として関連資材が何か所かにありました。これも関西電力が行うためのものなんでしょう。

 

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この水平歩道はヘルメット着用が義務付けられている?ようです。
実際に歩いてみて安全確保のため本当に必要だと思いました。転落や落石がなくても歩いているだけでも絶対にその必要性を感じました。
というのも、岩を削った天井の低いコの字型の登山道が何度もあり、かがんで通過する時に頭を打ってしまいます。私も何度か岩にぶつけてしまい、後で確認したところヘルメットが数か所凹んでいました。
ビックリ!

 

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水平歩道の核心部「大太鼓」

水平歩道の醍醐味を象徴する展望スポットと言ってもいいでしょう。岩壁をくり抜いた歩道が数十m続き、ここではすれ違いできません。前から来る登山者が見えないため緊張感が高まります。
この場所で改めて「黒部にケガなし」という言葉を思い浮かべました。

登山愛好家の間では「黒部にケガなし」という言い伝えがあります。この道沿いでつまづいたり転んだり、踏み外したりした場合はケガでは済まず、容易に転落につながります。すなわち黒部を歩くことは命を失うほど危険であることを表した言葉です。
黒部・宇奈月温泉観光局公式サイト

 

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歩道の下は絶壁!

 

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道幅は見てのとおりです。

 

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進んだ所に「大太鼓展望台」の標識
この場所が水平歩道のほぼ中間地点です。

 

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大太鼓を渡り終えホッと一息。黒部川を挟んだ対岸の景色を見る余裕ができました。
迫力ある切り立った岸壁がそそり立つ姿はまさにこれが黒部なんでしょう。

 

ちなみに往路の水平歩道ですれ違った登山者は一人だけでした。それも水平歩道に入る手前でした。

 

「黒部峡谷『水平歩道』」後編へつづく

後編はトンネルあり、阿曽原温泉小屋の露天風呂、自炊など話題豊富です。

2 thoughts on “黒部峡谷「水平歩道」(前編)

  1. すごいところを歩かれたのですね。
    何時だったかこの水平歩道をテレビで
    見たことがありますが、少々高所恐怖症気味の私は
    鳥肌が立ちました~。ゾクゾク!!!
    つまずいて転んだら谷底ですものね・・・
    超上級者向きですね。

    1. Roseさん

      こんにちは
      写真で見ると確かにゾクゾクするような場所ですよね。
      登山道は狭いですが、実際に歩いてみると意外と大丈夫かな?という感じでした。
      これも人それぞれの感じ方によるのでしょうが。

      それよりも怖かったのはトンネルでした。
      事前に調べていたのでそれなりの覚悟で行きましたが、昼間とはいってもたった一人でしたのでスリルがありました。
      このトンネルのお話は後編でアップします。

      コメントありがとうございます。

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