ジェンダー平等~政治への女性参画
「女性ゼロワン議会」が4割!?
日本の女性の社会進出は増えてきています。
それは、社会活動のあらゆる場面で働き活躍されている姿を見ます。
しかし、働く環境や条件、社会的な地位、更には目に見えにくい性差などその差別はまだまだ大きいのではないでしょうか。
その証拠に、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数は146カ国中116位という実態をみても明らかです。特に政治分野での女性参画が進んでいないと感じます。
今年4月は統一地方選を控え、新聞各紙選挙を意識した記事が多くなってきています。
その内容を見ると、いずれも全国自治体の女性議員の割合が低いことに焦点を当てた報道でした。
全国の1788地方議会のうち、女性議員ゼロの議会が256(14.3%)、女性が一人だけの議会も436(24.4%)で、両方を合わせた「女性ゼロワン議会」は約4割に上る。
50歳未満の女性議員は全体のわずか2.9%。地方議会の構成は、男性に著しく偏り、若年層の女性がほぼいないといういびつさが続いている。
朝日新聞 2/18付朝刊一面 ※「ゼロワン」とは女性議員がゼロか1人の議会
ジェンダー平等という意識や様々な働きかけがあったとしても、こうした現実の状況を見るとその遅れというものがよく分かります。
このような実態になった要因はいろいろあると思いますが、やはり考えられることは社会全体の意識改革とその環境が整っていなかったという点でしょうか。
又、朝日新聞の記事に「老老男男」という用語?が出ていました。
地方議会は「老若男女」ならぬ「老老男男」で旧態依然。
なるほど、いまの地方議会を指してこういう言い方もあるのかと。
地方議会の女性議員・女性首長に関する報道記事(朝日新聞と東京新聞)
昨年末、垣谷美雨著の「あきらめません!」(2022年5/23発行)を読みました。
垣谷美雨といえばジェンダー問題を底辺に据えて、結婚や子育て、高齢化、介護など私たちの身近な社会問題を題材に取り上げた小説が多いです。
そうした諸問題の核心部が的を得ていることから、実に面白く頷いて読み進んでしまいます。一言でいえば「痛快」といった小説でしょうか。
逆にいえば、古い因習や男尊女卑に凝り固まったオヤジさんにとっては頭の痛いことなんでしょう。
この小説のあらすじについてここでは省きますが、概略と目に留まった文章を引用します。(赤字)
結婚して三十数年、共働きかつワンオペ育児を卒業し、節約を重ねて住宅ローンも返済完了。定年退職を迎えた霧島郁子(主人公)がやっと手に入れた夢のセカンドライフは、夫の田舎へ移住したことをきっかけに音を立てて崩れていく。
閉鎖的な地域社会、染み付いた男尊女卑・・・時代遅れな現実を前に打ちのめされる郁子だったが、ある日出会った銀髪の女性議員・市川ミサオの強烈な後押しで、なぜか市議会議員に立候補することに・・・!?
以前、地方議会の議員居眠りや物見遊山の出張など様々問題になりました。又、男性国会議員が女性議員や女性審議員に対しての差別・不適切発言も多々ありました。
こうした問題は、たまたま記事になって明るみに出た報道ですが、現実は氷山の一角で私たちが普段目にしないところで多くの男女差別や悪しき習慣が行われていると思います。
主人公の霧島郁子が初めて議会傍聴した時、
市議会議員は20人ほどで、年寄りの男性が多かった。平均年齢は70歳、いや、もしかして80歳前後かもしれない。男性ばかりの中で女性議員はというと、いま質問席に立っている若い女性と、後方の席に銀髪の女性が一人いるだけだった。
私の住む川越市は36人の市議会議員がいます。他の市町村に比べ若い女性議員は多いです。埼玉県は首都圏の一部ですから、他の県に対して比較的多いと思います。
しかし、選挙ともなると「えっ、またこの人が出るの?何もしない議員なのに!」と。昔からこの地域を地盤にしてきた地主であり親戚縁者の多い人です。多分、こうした状況は全国どこの自治体でもあるでしょう。
30年ほど前、小学校のPTA役員だった友人から、登下校の道路事情や信号機、カーブミラーなどの状況調査の手伝いを頼まれたことがありました。最終的には要望書を作成し、その地域を地盤にしている市議会議員と改善に向けた会合を開きました。
結果は何も変わりませんでした。後でわかったことですが、その議員は名前だけの何もしない議員だったからです。あの時、他の議員に頼めばよかったな~と思いました。
主人公の霧島郁子が初当選して議会での質問場面では、
女は考えが甘いんだわ。
女は口を開きゃあ福祉福祉って。馬鹿の一つ覚えやわ。
そもそも女っちゅうのは世間知らずで何もわかっとらん。
提案者が女というだけで、一部の男の議員たちは無性に腹が立つらしい。その表情からは憎しみに似たものを感じるときがあり、恐ろしくなったことも一度や二度ではない。
小説なのでちょっと大げさな表現もあるでしょうが、かなり真実に近いと思います。言葉に出さなくても、大なり小なりこのような考えを持った男性議員は多いのではないでしょうか。もちろん一部の議員の話ですが。
「考えが甘い」「馬鹿の一つ覚え」「世間知らず」、そして「何もわかっとらん」はそうした男性議員自身だと思います。安定した議員報酬、社会的地位と名声、そして様々な利益共有・・・、ただそこだけにしがみついた ”何もしない議員” が多いと思います。
「男性議員は、道路やハコモノといったハードな政治課題に力を入れる人が多いんです。その一方、女性議員は、保育所、社会福祉、保健医療、環境問題に重きを置いています。どちらが大事かという問題ではなくて、限られた財源の中で、バランスの取れた価値観が不可欠なんです。そのためにも女性の議員がたった二人というのでは偏りがあります」
自治体の課題は多岐にわたります。決められた予算の中での優先順位もあるでしょう。
日本の高度成長期、「道路やハコモノといったハードな政治課題」も確かに必要性はあったと思いますが、今の時代はたしてどうなんでしょうか?
そして、ここで問題なのは、こうした建設公共事業は議員が関わる情報漏洩や談合、賄賂を生む温床になっていることです。お互いの利権によって行われやすい状況になり、金と集票という構図が浮かんできます。
今ではこうした問題は際立って表ざたにならないものの水面下ではまだまだ多いのではないでしょうか。
最近では特に目に見えるかたちで原発事業がその筆頭だと思います。
一般に「原子力ムラ」と揶揄される社会的集団です。原発を推進することで互いに利益を共有する政治家や企業、研究者などの集団です。
「保育所や老人ホームの定員が足らんで困っとるのは女性だけやないですよ。俺ら男にとっても死活問題なんです」
「俺ら世代は共働きせんと生活が苦しい。そんなことにさえ今の市長は気づいとらんのです」
「そうそう、市長自身が四世代同居で、立派な門構えの大きな家で暮らしとるから、若い世代の苦しい現実を知らんのです」
こうした現実の生のトークを聞くだけで、今の日本の置かれている状況が一目でわかります。
この小説の的を得た会話文は、そこかしこに出てきます。なるほど!と相槌を打つ思いでした。
こうしたことは地方議会に限らず国政においても同じようなことが言えると思います。
例えば、地盤を引き継いだだけの二世議員など、本当に庶民の生活実態がわかっているのか?という思いです。
今年は統一地方選挙の年です。全国の市町村で県議選や市議選に向けた活動がすでに始まっています。候補者や演説会などのポスターも張り出されています。
多くの女性が立候補することが望まれますが、一方でその ”中身(政策)” については精査することが大事だと考えます。
私たちの身近な生活問題を取り上げ、その改善に向けての活動を期待するも、党候補というのであれば当然国政にも影響してくるものがあります。
又、無所属といっても、消費税のあり方や大軍拡、沖縄基地問題、原発再稼働、子育て支援、LGBTQ、年金・医療・介護などの社会保障など・・・、こうした課題も含めどのような考えを持っているのか?も知る必要があると思います。
ジェンダー平等がクローズアップされる中、政治への女性参画の新聞記事を見て、小説「あきらめません!」をもう一度開いて書き綴ってみました。
こう言うテーマは小説ではなく、詳細に調べたドキュメンタリーであって
ほしいです。
小説って作者の主観で書かれるので、読者を引き付けるために誇張し勝ち
になるのが多いと思います。
女性議員が少ないのは現実ですが、ただ単に同数になればよいとは思いません。
マスコミに登場する国会議員を見ると、男女の区別なく私利私欲に敏感な人が
多いように見えます。
自分は「平等ではなく公平」であるべきだと思います。
孔子が「仁なれども佞ならず」と言ったように、口下手であっても仁者と
認められる人が議員になるのであれば男女の比は問題ではなく、よしんば
女性が多くなったとしても構わないと思います。
また四書五経の一つ「大学」には「修身斉家治国平天下」と言って
「天下を治めるには、まず自分の行いを正しくし、次に家庭をととのえ、
次に国家を治め、そして天下を平和にするべきであると書かれています。
こうした人が国会議員なら旅行支援を止めて、生乳を廃棄している畜産農家
を支援していると思います。
そもそも「仁少なく巧言令色」の人を選ぶのが問題じゃないでしょうか。
凡夫さん
お久しぶりです。
とても参考になる貴重なコメントありがとうございます。
孔子や四書五経は勉強していませんが、凡夫さんのおっしゃる意味とご指摘は、なるほどそのとおりだと思いました。
>口下手であっても仁者と認められる人が議員になるのであれば男女の比は問題ではなく・・
男女という意識の前に、その人自身の考え方や資質をしっかり見極めることが大事ですね。
コメントありがとうございました。