北アルプス雲ノ平 (1)

登山倶楽部3年越しの憧れの地へ

北アルプス最深部35kmの大縦走!

 

2019年7月、登山倶楽部(3776会)のメンバーで黒部五郎岳に登った帰り、三俣蓮華岳から見下ろした広大な溶岩台地を望みました。
そこは、北アルプスの名峰がズラリと取り囲むど真ん中にあります。岳人たちの憧れの地 ”雲ノ平” がどっしりと横たわっていました。

「あれが雲ノ平か。来年はぜひあそこに行こう!」

 

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2019年7月三俣蓮華岳から望んだ雲ノ平

2020年夏、コロナ感染拡大により登山は中止。
2021年夏、ブナ立て尾根(長野県)から裏銀座コースを経て雲ノ平を目指すも天候悪化のため途中撤退。

そして今年、今度は折立(富山県)から太郎兵衛平を経て雲ノ平を目指すプラン立てました。
いよいよ3年越しの夢が実現か!

 

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折立登山口~太郎平~雲ノ平~鷲羽岳~水晶岳~裏銀座コース~ブナ立て尾根下山の約35km。
3泊4日の行程。

コロナ禍の中、何が起きるかわかりません。
出発3日前、予約していた一泊目の太郎平小屋から連絡が入りました。小屋から直接連絡が入るのは異例でいや~な予感。
内容は小屋従業員がコロナ感染にかかり、小屋閉鎖になったとの連絡でした。一瞬「またダメなのか」という思いが頭をよぎりました。
初日の小屋泊が確保できなければ、その後の行程プランも全て流れてしまいます。「なんとかならないか?」と切実に訴えたところ、同じ経営の山小屋「薬師沢小屋」まで行ってくれれば、まだ空きがあるので宿泊確保するとのこと。
行動時間は増すものの首の皮一枚つながった思いでした。

 

登山基地「折立」から薬師沢へ

 

深夜、新宿バスタから高速バスで富山駅へ。そこから今度は登山専用バスで折立に着いたのが8時10分。
この折立は、富山県側からの北アルプス登山の玄関口です。主に北陸や関西方面からの登山者が多く、夏山シーズンともなればハイカーで賑わっています。

この地は「有峰」(ありみね)と言い、水力発電の人口湖「有峰湖」があります。

 

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富山地方鉄道の夏季限定登山バスと折立登山口(標高1350m)

登山仲間6人、念願だった雲ノ平と北アルプス縦走の玄関口に降り立ちました。

 

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スタート時はあいにくの雨模様。樹林帯の中をまずは太郎兵衛平に向け出発。
標高1900m付近が森林限界。樹林帯を抜けると一気に視界が広がりました。と同時に天気は回復傾向になり青空が垣間見えはじめました。

 

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太郎兵衛平に向け木道が整備されています。ゆったりとした時間が流れるハイキング気分でした。
木道沿いにアキノキリンソウが出迎えてくれています。季節はもう秋を感じさせる花です。

アキノキリンソウ(秋の麒麟草):8~11月に総状の黄色い花を多数つける
画像は、登山仲間のM・Oさん撮影(ブログ掲載の花は全て)

 

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標高2000m付近は高原の雰囲気。チングルマの群生(種)が見られました。

 

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五光岩ベンチを過ぎ、しばらくすると太郎兵衛平と小屋が見えてきました。

 

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太郎衛兵平と太郎平小屋

この太郎衛兵平は北アルプスの核心部に向かう分岐点です。
左方向は薬師岳へ、右方向は北ノ俣岳・黒部五郎岳へ、そして中央は薬師沢・雲ノ平へと続きます。

当初、ここの太郎平小屋に宿泊する予定でしたが、小屋閉鎖のため薬師沢小屋に向かいました。
一般的に登山者の多くは、薬師岳や黒部五郎岳登頂を目指すため、薬師沢や雲ノ平に足を向けるハイカーは意外と少ないです。

 

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我々一行は、前後誰もいない登山道に足を踏み入れ、更に最深部に向け進みました。
池塘が点在するその向こうにゆったりとした山並みの薬師岳の全容が見えてきました。

薬師岳は、白馬や槍のような流行の山ではないが、その重量感のあるドッシリした山容は、北アルプス中随一である。ただのっそりと大きいだけではない。厳とした気品もそなえている。
深田久弥著「日本百名山 薬師岳」

日本百名山の手記に深田氏が初めて薬師岳へ向かったのは大学一年生(大正10年頃)だったと記されていました。登山口は有峰村(現在の有峰ダムに水没)だったそうで、我々が辿ってきた折立からの登山道だったようです。
この時の登山は、「有峰に一泊した私たち二人は、翌日太郎兵衛平に登る途中で道に迷い、おまけに豪雨に襲われ、薬師登山を断念」と書かれていました。
その後、有峰ダムが建設され始めた頃に再チャレンジしたようです。
「私の二度目の登山はそのダムからであった。朝、汽車で富山に着いて、その夕方にはもう太郎兵衛平小屋で一ぱいやっていたのだから、隔世の感があった」と。

半世紀以上も前、すでに太郎平小屋(太郎兵衛平小屋)があり、この小屋から薬師岳登頂を果たしたんですね。今でも当時と変わらぬ景色があったと思います。

 

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薬師沢に下る前の湿原で、目の前に大きな溶岩台地が現れました。雲ノ平ですね!
雲ノ平の左後方には、なんと水晶岳。更に右後方には鷲羽岳を望むことができました。

 

 

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太郎兵衛平から下ること300m以上、薬師沢まで下りてきました。清流が流れる河原で一休み。

 

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登山道沿いに咲くオヤマリンドウとミヤマトリカブト

オヤマリンドウ:秋の湿原を代表する花の一つ

 

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折立を出発してから8時間、ようやく今夜の宿泊地「薬師沢小屋」に到着。
この小屋は黒部源流と薬師沢の出合いに建てられています。雲ノ平に向かう登山者をはじめ赤木沢の沢登り、岩魚釣りの宿泊客が訪れる小屋です。

 

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疲れた身体には温かい食事が一番ですね。こんな山奥でも手作りの料理で迎えてくれました。
食事後は、このラウンジでお酒を飲みながらの歓談が続きました。
いよいよ明日は念願だった雲ノ平へ。天気は回復して好天の予報でした!

 

「北アルプス雲ノ平 (2)」へつづく

 

余談

深田久弥氏の「日本百名山 薬師岳」の頁で、深田氏が初めて薬師岳へ向かったのは二人だったと記されていました(前述)
もう一人についてこう書かれていました。

「私が大学一年生(帝大)、連れは一高生の熊谷太三郎君、二人でテントをかついで出かけた。熊谷君は現在熊谷組の社長である・・・。それから三十年後有峰ダムの建造に熊谷組が従事することになって、熊谷太三郎君が現地を見に行き、曽遊(そうゆう)を思い出して感慨無量だと便りをくれた。さもあろう」

※曽遊:以前に訪れたことがあること。

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