ひまわりと平和

東京新聞「平和の俳句」

十七音に込められた思いを想像

 

8月、今年も東京新聞に「平和の俳句」が掲載されました。
この「平和の俳句」は、2015年「平和」を題材に読者からの俳句を募集し、入選句を紙面に掲載することから始まり現在に至っているとのことです。

誕生のきっかけは、2014年の終戦の日に掲載した俳人・金子兜太(とうた)さん(18年2月死去、享年98)と、作家のいとうせいこうさんの対談でした。当時、「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の俳句が、さいたま市の公民館の月報に掲載拒否された問題(市の違法性を認める判決が18年末に確定)があり、2人は戦前の新興俳句運動に対する弾圧事件に重ね、戦争に向かう時代の空気に抗(あらが)おうと「平和の俳句」を発案しました。
東京新聞 TOKYO web

私は俳句はやりませんが、四季折々のいろいろな俳句を見聞きするのは好きです。
最近ではTV番組の「プレパト」を視聴するようになりました。特に夏井いつき先生の添削・指導が「なるほどな~」と勉強になり実に面白いなと思っています。

今年はロシアのウクライナ侵攻があり、この戦争に思いを寄せた俳句も数多くありました。
ウクライナといえば、やはり ”ひまわり” を思い浮かべます。
1970年に公開されたイタリア映画「ひまわり」は、ウクライナのひまわり畑が映し出されました。若い頃に二度ほどこの映画を観ましたが、今でもその時のシーンが記憶に残っています。

本紙は毎年この時季に、読者から募集した「平和の俳句」を掲載していますが、今年はウクライナを詠んだ句も目立ち、昨年の1.3倍の6222句が寄せられました。
八月中、入選句を一面に載せていますが、本日は一部の英訳を含め、さらに多くの句や、言葉に込めた思いをご紹介します。
東京新聞 8月15日朝刊

 

8月15日付の一面に掲載された句が印象的でした。
「平和」を願い様々な思いを描くことができるとても良い句だなと思ったので紹介します。

 

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「銃を捨て まいてくださいヒマワリを」

千葉県 笹野節子さん

 

先日、隣町(狭山市)にあるひまわり畑にカミサンと行ってきました。
この畑は、市の主催で住民参加によるまちづくり事業の一環としてボランティアの手によって作られたそうです。毎年夏休みの頃、2万本のひまわりが花を咲かせるようです。

 

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閑静な住宅地と周囲が畑で囲まれた場所にありました。
ある程度の広さに一面に咲く姿は圧巻です。穏やかな周囲の景観と共に平和を感じる情景でした。

 

「平和の俳句」の発起人、俳人・金子兜太さんは埼玉県深谷市に住んでいたそうです。
熊谷市(深谷市に隣接)に住んでいた義父は、金子さんとは俳句や短歌を通して交流があったと話していました。同世代ということもあり親交があったようです。

義父は百歳を超え、今でも趣味の短歌を詠んでいます。
その短歌集の中でも、戦争体験をした時の「平和の短歌」が数多くありました。

「戦争を憎む」「シベリア抑留」の短歌集より

もう御免 戦争未亡人をつくるのは そんな世の中 誰が望むか

頑張れよ もうすぐダモイと声かけりゃ 病友は微笑み そっと握る手

忘れまい 酷使に耐えたシベリアの 零下四十度 ノーチラボータ

※ダモイ:ロシア語で故郷へ、故国への意。帰国、帰還。 ノーチラボータ:夜間作業

 

義父の戦争体験の短歌には「ダモイ」という言葉が使われた歌がいくつかありました。
このダモイは、シベリア抑留者の希望の合言葉として収容所で頻繁に使われたと義父が話していました。

 

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義父が経験したシベリア抑留。戦後77年経った今、ロシアによるウクライナ侵攻というかたちで再び同じような悲劇が起きています。

「シベリア抑留 ウクライナ侵略に通じる悲劇」
ロシアのウクライナ侵略は、第二次世界大戦後の、ソ連による日本人のシベリア抑留を思い起こさせる。悲劇を経験した日本としても、ウクライナの現状は人ごとではない・・・。
約57万5000人がシベリアなどの収容所に抑留され、国際法で禁じられているにもかかわらず、強制労働を課された。抑留は最長11年に及び、約5万5000人が命を落としたとされている・・・。
ロシアのウクライナ侵攻はこの悲劇の再現ではないか。ウクライナ側は、ロシア軍が支配した地域で住民100万人以上が強制連行されたと主張している。
ロシア軍がウクライナにとどまる限り、住民は国際法や人権を無視した暴挙の危険にさらされ続ける。侵略が長期化するほど、その傷は深く長く残ることになる。
読売新聞 8/21付「社説」より

 

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強制連行されたウクライナの人たちは、遠いシベリアの地で ”故郷のひまわり” を思い浮かべると思います。
平和の象徴である ”ひまわり” 、「銃をすて」世界中にその種が「まかれる」ことを願います。

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