いざ ”黒戸尾根” へ
日本三大急登にチャレンジ!
甲斐駒ケ岳は、南アルプスの名だたる山の中でも北岳と同等の人気を誇る名山だと思います。
甲府盆地や中央高速道から南アルプスの山並みがよく見えますが、その稜線の先北方にひと際目立つ三角錐がキリリと立っているのが甲斐駒です。
南アルプスの玄関口「芦安」から登山バスで広河原(北岳登山口)、そしてその先の北沢峠から甲斐駒ケ岳を登るのが一般的です。
以前、私もこの北沢峠をベースにして甲斐駒ケ岳と仙丈ケ岳に登りました。標高2000m地点からの登山のため、それほど時間を要することなく登頂できることから人気が高いです。
夏山ハイシーズンともなれば、多くの登山者が訪れ山小屋の予約はもちろん、テント泊予約さえも難しい状況なのではないでしょうか。
そんな北沢峠とは別に私たちが甲府盆地から目にする甲斐駒ケ岳正面から登るコースに「黒戸尾根」があります。
この尾根は日本三大急登の一つに数えられ、ぜひ一度は登ってみたいコースでした。
山岳雑誌「山と渓谷」(2012年8月号)でも日本の名急登特集が組まれ紹介されていました。
日本三大急登(又は日本アルプス三大急登)には諸説ありますが、剱岳の早月尾根、烏帽子岳のブナ立尾根。そして甲斐駒ケ岳の黒戸尾根が有力のようです。
図表の各有名な急登コースと比較して標高差、距離からしても黒戸尾根は突出しています。
「日本百名山 甲斐駒ケ岳」では、その著者深田久弥氏もこのような感想を残していました。
日本アルプスで一番つらい登りは、この甲斐駒ケ岳の表参道かもしれない。何しろ600mくらいの山麓から、3000mに近い頂上まで、殆ど登りずくめである。わが国の山で、その足許からてっぺんまで2400mの高度差を持っているのは、富士山以外にはあるまい・・・。山麓から一日で頂上へ達するのは普通不可能であって、七合目の小屋で一泊しなければならない。
わが国には駒ケ岳と名のつく山が多いが、その筆頭は甲斐駒であろう。
早朝6時、山麓の尾白川周辺から望む甲斐駒ケ岳
白州観光キャンプ場の駐車場。100台停められる無料駐車場です。
登山口の「駒ケ岳神社」、ここで参拝して安全登山の祈願をしました。黒戸尾根は、昔からの信仰の道だそうで、深田氏が述べているようにまさに表参道を登るコースなんですね。
以前、カミサンとハイキングに来た「尾白川渓谷道」がありました。そういえばこの時甲斐駒に登る登山道があったな~ということを思い出しました。ここがそうだったんだと。
この時期、渓谷沿いのコースは涼しく気持ちのよいハイキングができます。下山後、この河原で多くの家族連れが水遊びしていました。
延々と樹林帯の中をひたすら登って行きます。このため周囲の景観は望めませんが、標高を上げるにつれ所々樹林の隙間から甲斐駒の雄姿が見られました。
八丁登りというクマザサが生い茂る登山道が続きます。急登というイメージはあっても比較的平らな道もあり歩きやすいです。
樹林帯から岩場が忽然と現れました。ここが黒戸尾根で有名な「刃渡り」という所のようです。
クサリを頼りに岩場を進めば一気に視界が広がりました。
南方には鳳凰三山(日本百名山)と地蔵岳のオベリスクが望めました。
東方は八ヶ岳連峰と奥秩父の山塊が一望
鳳凰三山の尾根の向こうに富士山も眺望!
表参道と言われるだけあって、登山道には祠、仏像、石碑が何ヶ所もありました。
五合目小屋跡
黒戸山を巻いてきた登山道は一気に150mほど下りました。ここで気になったのが、ひたすら登りが続くと思っていたのに「なぜ下りがこれだけ続くのか?」。道を間違えたのか?と思いました。
地図で確認すると、黒戸山と甲斐駒ケ岳の鞍部でした。この場所には材木が積まれていて、以前「五合目小屋」があった所でした。
この五合目からほぼ垂直に何本ものハシゴがかけられていました。更にクサリ場もあり、いよいよ核心部にきたなという感じでした。
真上を見る姿勢が続くため首筋が痛くなってきます。
地図上の等高線はかなり密で、登山道の実線は1.5cmと短くコースタイムは1時間10分。ハシゴ、クサリの連続で1時間強もかかる難所でした。
登山口から7時間20分、ようやく今夜の宿泊地「七丈小屋」に着きました。
この場所は七合目辺りに位置し、頂上までまだ2時間半かかることから黒戸尾根登山者が利用する山小屋です。
これぞ本物の ”南アルプス天然水” 水は出しっぱなしの状態でした。近くの水源から引っ張ってきているようで、こうした水が豊富な山小屋にはよく見られる光景です。
逆に水源がない山小屋は雨水を貯めて飲料水にする所もあり、登山者にとっては貴重で実にありがたいです。
早速、美味しい水でコーヒーを淹れました。絶景を見ながらの一杯は最高ですね。これも登山の楽しみの一つです。
一泊二食9500円。夕食はカレーでした。ソーセージ、コロッケ、蕎麦まで付いた豪華な食事でした。
寝床はコロナ感染防止のため一人づつ区切られたスペースが作られていて、マット・枕はビニールが掛けられていました。又、宿泊者は ”シュラフ持参” というルールでした。
この日宿泊した登山者は私を含め3人。50~60代のお二人は友人同士のパーティー。
食事が進むにつれて和やかな雰囲気になり、やはり山の話が共通話題になります。こうした山小屋では知らない者同士、話のキッカケは全て登山に関わるものになり、すぐに打ち解け合うことができます。
夕食17時から消灯20時まで話が尽きませんでした。
実は、翌日の行動スケジュールが全く同じだったため、ほとんど一緒に登頂、下山することになりました。下山後の温泉入浴まで行動を共にしました。
登山ならではの一期一会ですね。
「甲斐駒ケ岳(後編)」へつづく