トレイルランナーのメッカ?
2日間往復17時間の黒戸尾根!
2日目登頂日の日の出時間は4時50分頃。
なるべく涼しいうちに登山開始しようと4時30分出発。日の出前ということで外は暗くヘッドライトを付けて行動開始。
ザックは小屋に置き、水と朝食(お弁当)だけを持ち軽装で。
途中8合目辺りで奥秩父の山並みからご来光。薄い雲の中に浮かぶ八ヶ岳を展望。
朝日に照らされた甲斐駒ケ岳と石の鳥居(倒壊)、巨大な石碑。
頂上直下の登山道は、花崗岩やその岩峰が点在し一気に様変わり。クサリ、梯子を頼りに急登の連続でした。
ようやく頂上が見えました。その手前にも複数の石碑、祠がありました。
甲斐駒ヶ岳頂上2967m
日本アルプスで一番代表的なピラミッドは、と問われたら、私は真っ先にこの駒ケ岳をあげよう。
アルプスの巨峰群が重畳している中に、この端正な三角錐はその仲間から少し離れて、はなはだ個性的な姿勢で立っている。まさしく毅然という形容に値する威と品をそなえた山容である。
日本アルプスで一番奇麗な頂上は、と訊かれても、やはり私は甲斐駒をあげよう。眺望の豊かなことは言うまでもないとして、花崗岩の白砂を敷きつめた頂上の美しさを推したいのである。
深田久弥著「日本百名山 甲斐駒ケ岳」
北岳、間ノ岳をはじめとする南アルプスの山並みと目の前に鎮座する仙丈ケ岳
鳳凰三山とその後方に望む富士山。西方には中央アルプスの木曽駒ケ岳、空木岳と独立峰の御嶽山を眺望。
昨夜、小屋で作ってもらった弁当で朝食。絶景を眺めながらの食事は最高です!
一般的に山小屋で1泊2食の宿泊は、小屋で朝食する場合と朝食をお弁当にしてもらう2つのパターンがあります。
前者は早朝5時~5時半頃ですが、後者は前夜の夕食後に配られます。これは、小屋での朝食時間前に登山開始する登山者のために事前に準備されます。
出発時間が3時~4時台の登山者は意外に多いです。日の出前なので当然外は真っ暗でヘッドライトを付けての行動になります。小屋の玄関は常時開いているので、登山者は思い思いに出発していきます。
これも山小屋ならではのルールですね。
山というのは登ってきてはじめてよくわかる景色が多々あります。
今回、黒戸尾根をひたすら登ってきましたが、下山の時、眼下に見えた山が「黒戸山」でした。
黒戸尾根という名称はこの黒戸山から名付けられたものなんですね。ではこの黒戸山を登ったか?というと、実はそうではありませんでした。黒戸山の頂上を踏んだ覚えはありませんでした。
登山道は、黒戸山の中腹(画像左側斜面辺り)を巻くようにして作られていました。このため登山道はほぼ平らになっていました。
日本三大急登と言われる尾根であっても、全ての行程が登りばかりではないというのわかります。
前編でもお話しましたが、甲斐駒ケ岳登山は主に2つのルートがあります。
一つは北沢峠から、もう一つはこの黒戸尾根です。今では北沢峠からの登山が一般的です。
ではなぜ黒戸尾根から登るの?ということになりますが、それは急登に魅せられた登山者がいること、又、日本三大急登を登ってみたいという登山者がいることもあるでしょう。私もその一人でした。
そんな中、もう一つの登山者?がいたことに驚きました。それはトレイルランナー達です。
今、トレイルランが一つのスポーツとして脚光を浴びてきています。全国的にも各種イベントや大会など開かれています。最近、テレビでも放映されたりしています。
登山をしている時、こうした人を見かけることがありましたが、ここ黒戸尾根では「大会でもやっているの?」というほどランナーが大勢いました。
登山口から頂上までの所要時間は、おおよそ10時間(休憩含)です。※コースタイム9時間10分
こうしたランナーの人たちに訊いたところ、なんと3時間半ということでした! これは驚きでした。
私が7合目の小屋を出発したのが4:30、頂上に7:00着、2時間半かかりました。7:30頂上から下山し始めた時、ランナー達が登ってきました。
「えっ、もしかして下から来たの?何時に出たの?」と訊くと、「5時に出ました」と。時計は8:12を指していました。
こうしたトレイルランナー達の間では、今やSNSで「黒戸尾根をやる。○○時間内で!」という会話があるそうです。時代が変わればいろいろなやり方、楽しみ方があるんですね。
今回の登山で一つ気になったものがありました。それは、マーキングです。
登山者の道迷いを防ぐため、登山道沿いに赤いテープが巻かれています。一般的には目の高さにありますが、ここ黒戸尾根では3m~位の高さにマーキングされていました。
こんな高い所では脚立で巻かなければならないよな~と思っていました。このことを小屋の管理人さんに訊いたところ、「積雪対策ですよ」と。そういえば、この小屋は通年営業で冬季登山者もいるようです。積雪になればちょうど目に付く高さになるということですね。
黒戸尾根
一言で言って ”こだわり、マニアックな登山道” なのかな~と。
そうした登山道に出会い登ったことは、いい思い出になりました。
甲斐駒ケ岳
深田氏が言う、端正な三角錐、毅然という形容、奇麗な頂上、眺望の豊かさ、花崗岩の白砂・・・、そして、2400mの高度差を持つ黒戸尾根・・・。
こうした甲斐駒ケ岳を深田氏は著書「日本百名山」で最後にこう述べていました。
甲斐駒ケ岳は名峰である。もし日本の十名山を選べと言われたとしても、私はこの山を落とさないだろう。
ここで気になったのは、「日本の十名山」という表現・言葉を用いたことです。
深田氏がどの山をもって十名山と考えたかは興味深いです。著書「日本百名山」のすべての頁(「後記」含む)の中で、文章にまでなって表れているのは甲斐駒ケ岳ただ一峰です。
この表現から言っても、名峰中の名峰なのだと。そう私も思いました。
「甲斐駒ケ岳:黒戸尾根登山」おわり