天狗岳(前編)

八ヶ岳の二百名山

夏本番、テント背負って!

 

7月下旬、一年の内で私が最も好きな期間です。
真夏のギラギラした太陽の日差し、青い空と入道雲。この下での山歩きは最高の気分です。

例年夏山登山のプランは全てこの時期に設定し実行してきました。というのも、この期間は梅雨明け後最も天気が安定する時期だったからです。
しかし、今年に限って6月異例の速さで梅雨明けしました。そんなことで天気予報を確認する日々がしばらく続きました。

日本百名山残り一座となり登頂達成の目途が立ったことから、これからの登山スタイルを見直そうと思っていました。
それは単に登頂だけを目指す登山ではなく、もっと自然なかたちで山と向き合い、ゆっくり山を楽しむことができればと考えていました。
例えば、渓谷トレッキング、沢登り、テント泊、稜線歩きなどです。

コロナ禍が続き山小屋の収容制限などから予約制が一般的になってきました。又、感染防止のためにキャンプやテント泊登山が見直されてきています。
特に夏山登山で混雑する山小屋を避けて、予約無しでいつでも気軽に山行きできるテント泊は人気が高まってきているようです。
退職後、時間にゆとりのあるリタイア組みにとってはもってこいのスタイルなのかもしれません。ただ、重たい荷物を背負っての山歩きはちょっと厳しいものがありますが。

久しぶりのテント泊登山をプランニングしました。
自宅からそれほど遠くなく、それでいて標高の高いアルプス気分を味わえ、テント場までの距離が比較的短い場所など・・・。
そんな都合の良い所なんてあるの?、と探してみたら八ヶ岳連峰の ”天狗岳” を見つけました。
近くには通年営業の黒百合ヒュッテ(テント場)があり、樹林に囲まれた場所としては好適地のようです。

 

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八ヶ岳は、過去に麦草峠から北八ヶ岳の峰々の周遊登山、又、南八ヶ岳の主峰赤岳に登ったことはありました。
今回の天狗岳は南北に長い八ヶ岳連峰のちょうど真ん中に位置します。

ちょっと話は逸れますが、日本百名山の「八ヶ岳」について考察してみようと思います。

八ヶ岳は南北に延びる大きな山塊をひとまとめにした総称です。これは百名山の中で例えば「大雪山」「丹沢山」「赤城山」「九重山」「霧島山」などと同じように総称として呼びます。
八ヶ岳の主峰は「赤岳」です。百名山を目指す登山者は、一般的にこの「赤岳」に登ることで ”八ヶ岳登頂” とみなしています。
実はこの八ヶ岳と言う大きな山塊の最北にある「蓼科山」は堂々たる日本百名山の一座です。確かに独立的な山容としての風格があることからなのでしょう。
そこで気になるのは、なぜこんなに大きな山塊をひとまとめにして「百名山」にしたのか?。
というもの、この山塊の最も高い「赤岳」はどこから見ても鋭利にそびえ立つ山として押しも押されぬ高峰です。八ヶ岳ではなく「赤岳」でも良かったのではないかと思っていました。

樋口一郎氏の「新釈日本百名山」の「八ヶ岳の頁」でこんなことが書かれていました。

深田久弥が日本百名山の選定を発表して著作としてまとめたのは戦後であるが、戦前の別系列での百名山候補(戦前版百名山)の中ではズバリ「赤嶽」の名がランクアップされている。おそらくは、戦争を挟んで深田が悩んだのだろう。赤岳は捨てがたいが、山のまとまりとしての八ヶ岳、こちらを外すわけにはいかなかったのだ。
山として完全にダブる赤岳と八ヶ岳の双方を選定するわけにはいかない。それで泣く泣く(?)赤岳を外した。しかしこの結果、赤岳は槍ヶ岳や北岳と共通の土俵に上がることができなくなってしまった。

あ~そうだったんだ。
とは言っても、深田氏は最終的に赤岳という突出した峰だけでなく、八ヶ岳という大きな山塊そのものに価値があると判断したからなのでしょう。

今回登る「天狗岳」(2645m)の地図を見ていたら「日本二百名山」と記されていました。
この日本二百名山は、深田久弥のファン組織「深田クラブ」によって、クラブ創立10周年を記念して1984年に選定された日本の代表的な200の山です。
ここで気になったのは、すでに「八ヶ岳」として日本百名山に選定されている山群の中に二百名山が選ばれていることです。この点についてはどうなのかな?と。
「赤岳」は盟主としての威厳はあるものの百名山という勲章?を得られず、同じ領域内にある天狗岳が二百名山という勲章をいただいたわけですから気になりますよね。
広大な八ヶ岳連峰の中でもこの天狗岳だけが二百名山です。例えば、他の峰を見てみると、阿弥陀岳(2805m)、横岳(2829m)、権現岳(2672m)など天狗岳を上回る背丈があり遠方からも突出して見えます。
これは地理的なことが関係しているのでしょうか。阿弥陀岳、横岳、権現岳は主峰赤岳に近く南八ヶ岳山域に集中しています。
一方、天狗岳はこの山域から少し離れた独立峰として存在しています。そんなことから赤岳近隣の高峰にとっては、「なぜお前(天狗岳)が二百名山なんだ?!」と面白くないかもしれませんね(笑)

 

余談が長くなりました。

今回の登山では、そんな天狗岳から赤岳をはじめとする南八ヶ岳の山群を見わたすことができた山旅でした。

 

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今回はテント泊ということで荷物が増えました。テント本体とカバー、シート、ポール、シュラフやマットなどかさばる物ばかりです。最近のテントは品質や軽量化がすすんでいるとはいっても、やはりそれなりの容量になります。
又、食料は簡易のレトルト食品はやめて、すべて手作りの料理を冷凍して持参しました。これもテント泊の楽しみの一つですね。

 

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天気予報が週末土日から月曜日にかけて晴マーク。本来であれば週末は避けたい気持ちでしたが、やっぱり天気の良い日に行動したいことから日曜日に出かけました。
案の定、登山口「唐沢鉱泉」の駐車場は満車状態でした。川越早朝4時出発も登山口に着いたのは7時半。一般的な登山開始時間からすれば遅い時間帯です。これも想定内でしたが、やっぱりなという思いでした。なんとか道路脇に縦列駐車。

 

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登山口からしらびその樹林帯が続きました。
ザックがいつもより重いのでゆっくり登りました。後から登ってくる若者には道を譲りましたが、同じ年代の登山者たちの列が後ろに続いてしまいました。

 

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樹林帯の急登を登ること1時間30分、目の前がいっきに広がりました。尾根(西尾根)に出たようです。

 

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南八ヶ岳の山群一望

遠方にそびえ立つ赤岳(左)と阿弥陀岳(右)がくっきり見えました。両高峰は、やっぱり八ヶ岳のシンボル的な存在ですね。

八ヶ岳のいいところは、その高山地帯についで、層の厚い森林地帯があり、その下が豊かな裾野となって四方に展開していることである。
「日本百名山 八ヶ岳」より

この後、尾根づたいに西天狗岳を目指しました。

 

「天狗岳(後編)」へ続く

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