公的年金のルール

「賃金マイナススライド」?

物価高なのに年金引き下げ!

 

日常出歩く足はほとんどが車です。
今乗っている車は10数年経ち20万キロに近づいています。もうそろそろ買い替えの時期ですが、愛着がありまだ十分乗れるからと使い続けています。
古い車のため燃費はあまりよくありません。リッター9kmといったところでしょうか。今ではハイブリッド車が主流になり、環境を考慮した電気自動車が次世代カーになつつあります。

ここ最近ガソリン価格が高騰しています。レギュラー160円を超える価格ですからやはり気になります。その他、私たちの身の回りの食品や電気ガス料金など原油高や円安の影響で物価上昇が続いています。

こうした中、先日21日厚生労働省は、2022年度の公的年金額を21年度から0.4%引き下げることを発表しました。引き下げは2年連続になります。
年金生活者としてはかなり気になる数字です。▲0.4%を高いとみるか低いとみるかはそれぞれ個人差がありますが、これを過年度累計でみた時にその意識は変わると思います。
安倍政権以降今までの10年間で実質6.6%も削減されていることを考えれば、深刻な事態になってきていることがわかります。

 

年金制度は現役世代から高齢者への「仕送り方式」のため、暮らしに影響する物価だけでなく、現役の賃金変動も考慮して毎年度改正される。18~20年度の賃金変動率がマイナス0.4%だった。
1/22日付 東京新聞

年金変動の指標となる21年度の物価変動率は▲0.2%、賃金変動率は▲0.4%でした。
ここで注目したいのは年金額改定のルールです。物価よりも賃金の変動率のマイナスが大きいときは、賃金の変動率を改定率にすることにしており、結果▲0.4%としたことです。

改定のルール?

今までの年金額は「マクロ経済スライド」で調整されてきました。
これは、賃金や物価の増減率と保険料収入などの財源の範囲内で調整されるしくみです。実際には賃金や物価が上昇するほどは増やさないしくみでした。
この制度自体年金額が増えにくいしくみなのに、更に輪をかけた「改定ルール」を安倍政権が導入し21年度から始まりました。
これが「賃金マイナススライド」です。

現役勤労者の賃金変動率がマイナスとなった場合は、物価変動率がプラスだったり、賃金より小幅なマイナスだったりした場合でも、ひたすら ”低い方” に合わせて年金額を削減するしくみです。
まさに今回の場合が当てはまります。上記のように物価変動率▲0.2%、賃金変動率▲0.4%だったことから、低い方の指標に合わせる結果になりました。

政府は、今回の年金支給率マイナス0.4%改定について、20年度の実質賃金が下がったことを理由にしています。
しかし、これは、新型コロナの影響で賃金収入が減ったことや消費税増税で物価が上がったことの影響を受けたものです。
更に前述したように原油高や円安の影響などで生活必需品の価格高騰が進む中、なぜ ”2年前の賃金低下” を理由に年金が削られなければならないのか? 疑問です。

こうした制度・ルールの背景にはいったい何があるのか?
それは、高齢化社会に向かう社会保障財源という理由で ”増やさない年金” が根底にあることから「削減ありき」の ”机上の指標” を作った苦肉のしくみではないでしょうか。

 

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近年の年金額改定状況(1/22付東京新聞)

 

巨額の年金積立金

 

「高齢化に伴う社会保障財源危機」を口にすれば、誰でもがしょうがないと納得してしまう傾向にあります。
では、そのための消費税増税だったのでは?と思いますが、その増税分は社会保障財源になっていないことはすでに明らかになっています。

現在、年金積立金は、厚生年金、国民年金、共済年金(公務員)をあわせて200兆円にのぼっています。これは給付費の4年分にあたるそうです。
現行制度では、現役世代の保険料をベースにして対応するしくみで、高齢化に伴う年金増分は今までの積立金から充てられるものですから急激な財源減につながるものではないでしょう。
現実には、保険料の収納と年金支払いの時間的ずれにより資金の過不足が生じます。これだって短期国債の発行を認めれば十分調整できる範囲です。
他国の年金積立金をみると、ドイツが給付費の1.6ケ月分、イギリスが2ケ月分、フランスが1ケ月未満ということですから、日本の高齢化対策に備えることを口実にした ”ためこみ” は異常であり不要です。

更に、この年金積立金が投資に使われているのですから呆れます。
これは安倍政権時代に行われたもので、株式への投資によって株価を意図的につり上げるものでした。
これによって実体経済とはかけ離れた株価上昇を引き起こしました。
内外株式の投資比率を25%から50%に倍増させたこともとんでもないことです。結果、外国人投資家や大企業、一握りの富裕層を喜ばせることになりました。

年金の給付削減と現役世代の保険料値上げ、そして積立金のため込みは国民の可処分所得を減らしました。
同時にこれらのことは、消費支出にも影響して経済の循環が損なわれる結果を生み出しました。
つまり、「年金政策」だけをとっても、”その考え方とやり方しだい” によって日本経済全体に大きな影響を与えるものだと思います。

こうした年金削減は、現在受給している高齢者世代だけの問題ではないと思います。
実は今の若い世代、現役世代に多大な影響を及ぼすものなんだということがわかってきます。

「削減ありき」の ”机上の指標” にとらわれす、「減らない年金」に改革することこそ結果として経済活性化につながるものだと考えます。

4 thoughts on “公的年金のルール

  1. あなたのご意見に同意します。
    安倍さんが導入した、年金給付削
    減策、ならびに年金積立金の株式
    への投資は全くの愚策だ。
    もう少しまともな経済政策がとれ
    る政治家を望むよ。東大経済学部
    卒の林外務大臣、あとは頼んだ
    よ。読んでいてくれたら、嬉しい
    な。

    1. みちおさん

      はじめまして
      コメントありがとうございます。

      みちおさんがおっしゃるように、まともな経済政策がとれる政治家を望みますよね。
      これらのことは、どの方向に向いた政治なのか?と考えさせられます。

      GDPの6割が「家計消費」ですから、もっと「所得と消費」というものをしっかり考えた経済政策をしてほしいと望みます。
      経済成長は、勤労者の所得増とそれに伴う消費が活性化することで成長していきますよね。
      年金政策においても、減らない年金によって生活の安定と消費に結びつきます。
      私たち庶民にしっかり向き合った政治を望みます。

      またこれからもこのブログに立ち寄ってください。
      ありがとうございました。

  2. 外務大臣が公的年金のことをするんだ、おもしろい。
    年金受給者4067万人支給額52兆5925億円、現役世代6746万人保険料収入38兆3795億円、差し引
    き14兆2130億円(2018年度統計)若い世代の年金はどうなるんでしょうかね。

    1. 匿名さん

      社会保障給付費は、歳入全体から対応することが基本的な考え方です。
      年金、医療、介護など各種保険料だけでは賄いきれません。租税収入全体(公費負担)から社会保障費を支えていくことになります。

      ブログでも述べましたが、現状の年金積立金は総額200兆円にのぼります。少子高齢化に伴い現役世代の負担増が懸念される中、この積立金を利用して少しでも負担を軽減することが必要な措置だと思います。
      この積立金は先進諸国と比較しても異常な額です。”ため込み” よりも活用することが今求められるものではないでしょうか。

      みちおさんのコメントにあった「外務大臣」については、個人のコメントですので差し控えますが、各大臣を含めた ”政府全体で” という意味として私は捉えました。

      コメントありがとうございました。

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