登山倶楽部の仲間9人で
ミズバショウ咲く尾瀬ヶ原へ
♬ 夏が来れば思い出す はるかな尾瀬とおい空 きりの中に浮びくる やさしい影野の小路
みず芭蕉の花が咲いている 夢見て咲いている水のほとり ・・・
このフレーズを聞いただけで誰にでもわかる童謡「夏の思い出」です。
尾瀬といえばミズバショウ、ミズバショウといえば尾瀬の代名詞になっていると思います。
全国各地に登山して偶然ミズバショウを発見した時、「あれっ、ミズバショウだ」と軽い認識を持つものの足早に通り過ぎてしまいます。
しかし、「尾瀬のミズバショウ」の存在はとてつもなく大きく、「尾瀬でミズバショウ見てきたよ!」の一言は大きな話題と自慢になったりします。
私たち日本人の心の中に浸み込んでいる ”尾瀬のミズバショウ” は、特別なものだと思います。
尾瀬のミズバショウが咲く時期は、5月下旬から6月上旬で一般的に梅雨入りの頃です。
童謡「夏の思い出」の歌詞は、タイトルからも「夏」を冠していることから ”ミズバショウ=夏” のイメージがあります。
しかし、現実は春~初夏に咲くということで、実際の夏(7~8月)に咲くことはありません。
では、なぜでしょうか?ちょっと気になるので調べてみました。
ミズバショウの咲くのは5月末であり、尾瀬の春先にあたる。そのため、せっかく夏に来たのにミズバショウを見ることができなかった、という人は多い。作詞家江間章子はその理由を『(夏の思い出)その想いのゆくえ』で以下のように述べている。
「尾瀬においてミズバショウの最も見事な5、6月を私は夏とよぶ、それは歳時記の影響だと思う」
歳時記には俳句の季語が掲載されており、ミズバショウは夏の季語である。文学上の季節と実際の季節には、少しずれがある。
ウィキペディアより
う~ん、なるほどそうなんですね。
そんな想いを知ってか知らずか、今回は登山倶楽部の仲間9人で尾瀬トレッキングに行って来ました。
普段であれば燧ケ岳か至仏山に登るのですが、今回はあくまでもミズバショウが目的でした。
一行は二手に分かれ、一組(5人)は大清水から尾瀬沼周遊、もう一組(4人)は鳩待峠から尾瀬ヶ原散策、その後見晴の弥四郎小屋で合流するプランでした。
登山倶楽部結成13年、今までの登山・トレッキング歴59回。
富士山をはじめ北・南・中央アルプスの高山や丹沢、奥多摩、上信越の山々など山歩きしてきましたが、なんと尾瀬はその内7回の実績がありました。
又、私自身、登山倶楽部とは別にカミサンとも3回の尾瀬歩きがありました。
なぜ同じ場所・コースに何度も?
それは、我々登山倶楽部以外の山歩き好きな人たちも同じようなことが言えると思います。
広大な湿原とそれらを取り囲む名山の絶景、春の新緑とミズバショウ、夏のニッコウキスゲをはじめとする高山植物、秋の草紅葉などシーズンを通して魅了するものがあります。
又、木道や登山道は常に整備メンテナンスされ歩きやすく、このため老若男女を問わず気軽にハイキングできる環境があるからでしょう。
今はコロナ禍で訪れる人は限られていますが、今まで何度も訪れた時に利用した駐車場の車は全国からのナンバーでした。
「尾瀬」は、最近人気のある観光地化した関東の高尾山、関西の六甲山とは一線を画しています。
又、山や花好きな愛好家にとっての大雪山(北海道)やくじゅう山(九州)とは違った意味での ”全国ブランド” があると思います。
それは「上高地」と双璧のハイカーたちの聖地と言ってもいいのではないでしょうか。
何よりも「夏の思い出」が語るミズバショウのイメージが、尾瀬すべての魅力を引き出し日本人の心にあるからだと。
私は今回鳩待峠グループに参加しました。
麓の戸倉から専用ワゴン車(片道1000円)で鳩待峠へ。
この時期は大勢の登山者で賑わっているはずですが、やはりコロナ禍の影響で客足が少なかったです。
山の鼻に行く途中、木道沿いに咲くミズバショウが出迎えてくれました。
これは期待できそうです!
山の鼻とその周辺に咲くミズバショウの群落。ちょうど真っ盛りといった感じでした!
山の鼻から尾瀬ヶ原へ
仰ぎ見る至仏山(日本百名山)と水中に漂うミズバショウ。冷たい水の中でも勢いよく咲いていました。
湿原の中の木道沿いと小川は一面のミズバショウ
正面には燧ケ岳(日本百名山)の名峰
広大な尾瀬ヶ原を差し挟んで東西に対立している燧ケ岳と至仏山。燧の颯爽として威厳のある形を厳父とすれば、至仏の悠揚とした軟らかみのある姿は、慈母にたとえられようか。
原の中央に立ってかれを仰ぎ、これを眺めると、対照の妙を得た造化に感歎(かんたん)せざるを得ない。
深田久弥著「日本百名山:燧ケ岳」
木道沿いに咲いていたリュウキンカ
リュウキンカの見頃は6月初旬~6月中旬の雪解けの湿原で、ミズバショウとともに春の尾瀬を彩る花だそうです。
池塘に映る「逆さ燧ケ岳」
花好きな仲間の一人が、この時期尾瀬に咲く花を撮ってくれました。
ミズバショウやリュウキンカ以外にもちょっと目を凝らせば小さく可憐な花が咲いてました。
ショウジョウバカマ、オゼヌマタイゲキ、ニリンソウ
尾瀬ケ原から望む至仏山とミズバショウのビュースポット
尾瀬ケ原のほぼ中間地点の竜宮を前にして休憩。
ザックをおろして一休みしようとしたところ、前方に何か黒い物体が?(画像中央の黒い点)
仲間の一人が「何か動いているぞ、なんだありゃ?」
よ~く見ると小熊だ! 小熊がいるということは近くに親熊がいるぞ~!!!
ひえ~~~、おろしたばかりのザックを再び背負い急いで竜宮小屋へ。
こんなこともあるんですね。実に愉快な体験でした。
燧ケ岳直下の見晴にある今夜の宿泊地「弥四郎小屋」(9900円)
すでに到着していたもう一組のグループ(5人)が途中まで迎えに来てくれました。
この小屋は見晴らしが良く入浴できることから尾瀬の常宿にしています。
風呂に入った後は、小屋前の広々としたテラスでビール乾杯!
夕食はとんかつでした。山奥の不便な山小屋でも肉と生野菜が食べられるだけで満足です。
この日は私たちグループを含め25人ほど宿泊者がいました。
夜は消灯の9時まで尽きることのない山の話で盛り上がりました。
「尾瀬トレッキング(後編)」へつづく