社会保障の財源

日本の財政悪化は・・・

社会保障費拡大が原因なの!?

 

昨年10月に消費税増税(10%) が実施されてから4ケ月経ちました。

増税による消費の低迷は続いています。
10、11月の家計消費支出は前年同月比マイナス。又、商業販売額は6.5%悪化、企業の倒産件数は11年ぶりに前年を上回ったという結果が出ていました。
特に商店街の閉店や倒産など中小企業に目立っているようです。
それは、増税による売上減少によるものと、キャッシュレス決済でのポイント還元ができる店などに客を奪われる現象が続いていることも大きな要因だといわれています。

 

20200208_160417   20200208_160801

2月8日付 各新聞社の「景気動向指数」5ケ月連続悪化を報じる記事。

 

先日、定期的に参加しているセミナーに行ってきました。
このセミナーは、その時々の時事問題(政治・経済・社会問題など)をテーマに取り上げ、それに関わる専門家や従事する方をゲストスピーカーに招いた講演会です。

 

20200207_180031   20200209_081539

今回のテーマは、「我が国の財政の現状等について」と題し、財務省主計局次長による講演でした。

この講演の概要は、2020年度予算の歳入・歳出に関しての説明でした。
そして、その中心になった内容は、”社会保障給付費の増大と消費税増税” についてのお話しでした。

 

20200208_102522   20200208_102538

2020年度の一般会計歳入総額は102.7兆円
今年度初めて歳入に占める消費税の割合が一番多くなりました。消費税21.7兆円、法人税12.1兆円、所得税19.6兆円。

1975年から現在に至るまで、歳出は一貫して伸び続ける一方、税収は伸び悩み、その差はワニの口のように開き、借金である公債の発行で穴埋めされてきた実態があるという資料。

 

 

20200208_102555

社会保障費 1990年度11.6兆円→2020年度35.9兆円。

 

20200208_102624   20200208_102728

 

資料では、「なぜ財政は悪化したのか」について説明がありました。

それは、少子高齢化による社会保障費が大きく伸びていることが、大きな要因としてあることを指摘されていました。

■社会保障は、年金、医療、介護、子ども・子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約1/3を占める我が国の最大の支出項目となっています。

■我が国の社会保障制度では、社会保険方式を採りながら、高齢者医療・介護給付金の5割を公費で賄うなど、公費負担に相当程度依存しています。

■高齢化に伴い社会保障の費用は増え続け、税金や借金に頼る分も増えています。

※資料より抜粋

 
私はこの説明を聞いて ”たいへん違和感を感じる” ものがありました。
それは、「なぜ財政が悪化したのか」という理由が、「社会保障・・・我が国最大の支出項目」、「公費負担に相当程度依存」、「税金や借金に頼る分も増えている」という指摘です。

少子高齢化は今に始まったものではありません。
数十年前からその予測は指摘され現在に至っています。そしてその対策は当然されるべきものであったはずです。
又、社会保障は国民の生活を安定させるための最低限の保障制度です。そして、国家財政の歳入は国民が支払った税金で全て成り立っています。
高齢化が進む中、社会保障費は当然増えるものであり、最大の支出項目になってもおかしくないものでもあります。
公費負担は依存ではなく当たり前の負担でもあります。そして税金に頼ることも当たり前のことです。
国民の命を守る保障費は最優先支出項目として考えなければならないと思います。

”社会保障費の増大が国家財政を圧迫する諸悪の根源のような考え方” こそ間違っているのではないでしょうか。

 

では、社会保障費の増大を賄う財源はどうしたらいいのでしょうか?
現政府や財務省は、消費税増税による対応を図りました。

 

20200208_121403   20200208_121413

 

■少子高齢化や財源の不足といった状況に対応した社会保障とするため、現在「社会保障と税の一体改革」を行っています。

■消費税率引き上げによる増収分は全て社会保障に充て・・・「全世代型」の社会保障に転換します。

■国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合い、社会保障の安定した財源を確保する観点から・・・税収が景気の変化に左右されにくく安定している。

※資料より抜粋

 

社会保障費が増大するから、「消費税を増税して皆さん負担してください」「財源が足りないから増税はしょうがないでしょ」というように受け止められます。
又、「全世代型の社会保障」? はたしてそうでしょうか。

消費税の最大の欠点は「逆進性」です。
低所得者ほどその負担率は大きく、不公平税制の典型です。
政府や財務省は、消費税の特徴として「特定の人に集中することがない」と言いますが、全く間違っています。

「社会保障と税の一体改革」「全世代型の社会保障」と言われますが、増税分は国の借金返済にまわっている部分もあります。

社会保障予算は、厚労省の概算要求時に5300億円と見込んだ自然増を1200億円圧縮されました。
年金は「マクロ経済スライド」で実質削減が続いています。
医療費は、75歳以上の保険料が所得に応じて2割負担になることが検討されています。
介護では、「要支援1、2」の訪問・通所介護を保険給付から外し、「要介護1、2」も保険給付外しがされようとしています。又、介護の現場で働く人たちの給与は全産業平均を大きく下回っているのが現状です。
※ブログ「社会福祉の現場から」

消費税増税による社会保障の拡充とうたわれていますが、実際はその逆が進行しています。

 

 

消費税増税に頼らない別の道

 

消費税導入から31年経ちました。
この間の消費税収は397兆円に達しています。
逆に法人税は毎年のように減税が続き、その累計は298兆円になっているのが現実です。
消費税は増え続け、法人税は減り続けているのが実態です。

 

20200209_092558

資料では、法人税の特徴として、

「税収が景気の動向に比較的左右されやすい特徴がある」と記していました。

つまり、その時々の経済状況から法人税収は不安定要素が高いということからなんでしょう。
又、法人税を高くすれば勤労者の給与に影響することが懸念されると話されていました。
その他、財界からは、法人税は企業の競争力を阻害するため減税すべきという要望があり、それに沿ったかたちで減税され続けてきました。

この結果、どのようなことが起きてきているのでしょうか?

ここ最近の特に大企業を中心に経常利益は大きく伸びてきています。
企業によっては過去最高益を更新し続けているところもあります。

一方、勤労者の賃金は、2012年の平均562万円→2019年585万円でほぼ横ばいです。
更に、物価上昇や各種公的保険料値上げによって、実質マイナスといったところです。
又、雇用・健康保険未加入など不安定で低賃金の非正規雇用は4割近くに達する状況にあります。

企業の利益は勤労者の賃金には回らず、更に非正規雇用の拡大で人件費を圧縮させ、法人税減税をいいことに企業の内部留保は増え続け、今や450兆円に達しています。

これだけには留まらず、企業の研究開発減税(大企業が9割)を推し進め、その結果、中小企業の法人税負担率は18%に対し大企業は10%という実態です。

今回の財務省資料では、「歳出は一貫して伸び続ける一方、税収は伸び悩み、ワニの口のように開き公債で穴埋め」???。
自分たちがやってきた税政策で法人税を下げ続けてきた結果、「税収は伸び悩み」なんではないんですか!
そうしたツケを「社会保障費の増大」という理由で、消費税増税というかたちで全て国民に負担させることではないんですか!

”ワニの口のように開いた口がふさがらない” というのは、こういう実態を指して言うものなのかもしれません。
全く情けない話しであり、無策な税政策であることは明らかなのではないでしょうか。
次回また「税政策」について財務省職員の方のセミナーがあります。
今度は、財務省の「財政至上主義」について考えていきたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。