紅葉の早池峰山へ
早池峰(はやちね)は東北では、鳥海、岩手、月山につぐ高峰でありながら、案外世に知られないのは、僻遠の地にあるためだろう。
早池峰という響きのいい名前で、この山は早くから私の胸にありながら、その姿を撮った写真を見たことがなかった。
盛岡の平野から遥かに見えないわけではないが、それは撮影にはあまりにも遠すぎる。
また山の近くまで来るとその全容を美しく捕えることが出来ない。
深田久弥著「日本百名山 早池峰山」より
早池峰山に向けて、平泉~北上~東和~花巻に至る田園地帯と山間部を走りながら遠方の山並みに目を向けるもその姿は一度として望むことができませんでした。
前泊した道の駅「はやちね」からも高い山に遮られ、どの山が早池峰山か?と確かめるもなかなかその姿を見いだせず、岳川沿いに登山口まで奥深く車を走らせました。
深田氏が言うように、その全容を美しく捕えることが出来ない山のようです。
早池峰に向かう途中、花巻市郊外の田園地帯は黄色く色づいた稲穂がたわわになった風景が続いていました。
この時期、わら、草を燃やす風景も所々で見受けられました。
変わった稲の干し方です。くいかけ、棒かけと言われる干し方だそうです。
これも日本の原風景なのでしょう。
道の駅「はやちね」に車中泊して、翌早朝早池峰山の登山口「小田越」に向かいました。
約10Kmの山間部の道路とすれ違いできない狭い林道を走り続け、ようやく奥深き登山口までたどり着きました。
早朝6時、ここで初めて早池峰山を目にすることができました。やれやれ遠い道のりでしたね。
登山口の小田越にある高山植物監視小屋周辺も色づき始めていました。
樹林帯を抜けると視界が一気に開け、秋の気配が漂っています。
振り返ると薬師岳が。
森林限界を超え山の斜面のハイマツ帯にナナカマドが点在しています。
この山特有の硬い蛇紋岩が乱雑に折り重なっています。
登山道にもこの岩がかなりありますが、多くの登山者の登山靴で磨きこまれているためツルツルの状態でした。
標高を上げ眼下に目をやると雲海が広がっていました。
蛇紋岩の登山道を登り、徐々に険しさを増していきます。
晴れていた空もガスがかかってきました。山の天気ってこんなものです。
岩稜帯を登っていくと頂上が見えました。頂上に建つ避難小屋。
早池峰山頂上 1917m、早池峰神社奥宮。
振り返って見上げる頂上付近。
下山途中、登ってきた団塊世代の登山者と立ち話しました。
名古屋からフェリー(自家用車)で仙台まで乗船して、東北自動車道を青森まで北上し、八甲田山、八幡平、岩手山、そして早池峰山に来たそうです。
なんと今回私たちが北上しながら登って行くコースの逆パターンだったので話が弾みました。
特に百名山であれば、こうした山旅をしている中高年の登山者に出会う機会がたくさんあります。
今年北海道ロングステイの時もまさにそうした登山者と出会う旅でもありました。
一期一会ですが、同じ志を持つ者同士初対面でも通じ合うものがあります。
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