自民党の「憲法改正草案」の中身
「緊急事態条項」に警鐘・・・
報ステの古舘氏は、自民党改憲草案の中の「緊急事態条項」の問題を指摘しています。 他国の憲法においてもこれに類する条項があるそうです。 国家が何らかの事情で緊急事態に陥った時、その対応を図らねばならないということは、私たち庶民にも分かります。 ではなぜ、この「緊急事態条項」が問題なのでしょうか?
ドイツからの古舘伊知郎氏のレポートより
ワイマール憲法に詳しいドイツのミハエル・ドライアー教授の談話
この内容(自民党の改憲草案)は、ワイマール憲法第48条(国家緊急権)を思い起させます。 内閣の一人の人間に利用される危険性がありとても問題です。 一見読むと無害に見えますし、他国と同じような緊急事態の規則にも見えますが、特に(議会や憲法裁判所などの)チェックが不十分に思えます。 このような権力の集中には、通常の法律より多くのチェックが必要です。 議会からの厳しいチェックができないと悪用の危険性を与えることになります。 なぜ一人の人間、首相に権限を集中しなければならないのか。 首相が(立法や首長への指示など)直接介入することができ、さらに首相自身が一定の財政支出まで出来る。 民主主義の支配とは「法の支配」で「人の支配」ではありません。 人の支配は性善説が前提となっているが、良い人ばかりではない。 民主主義の創設者たちは人に懐柔的です。常に権力の悪用に不安を抱いているのです。 権力者はいつの時代でも常にさらなる権力を求めるものです。 日本はあのような災害(東日本大震災)にも対処しており、なぜ今この緊急事態条項を入れる必要があるのでしょうか。
この緊急事態条項に関して、報ステが自民党議員に質問したところ「国会の合意に取り組んでいく」とのコメントがあったようです。 一人の人間に権限があるということだけで決めることのないよう、国会の審議(チェック)を通して議論していくことと思いますが、憲法の条文に入れる必要はあるのでしょうか。
憲法学者の長谷部恭男氏は、必要とあらば法律の制定でできるものと指摘しています。 「昨年フランスで起きた大規模なテロ事件がありました。この時、非常事態宣言を出しています。これは憲法に基づいたものではありません。非常事態法という法律に基づいたものです。又、日本でもすでに災害対策基本法(東日本大震災時制定)があります。 本当に必要であれば法律のレベルで制定していけばいいと考えるべきです」
今回、報道ステーションの憲法改正に関わる特集を見て、安易に改憲が行われていいものかどうか、もう一度立ち止まって考えてみる必要があると改めて感じました。 改憲をすすめようとしている政党や議員の方々は、この「緊急事態条項」によって一人の人間に権限が集中され、ナチ政権のような独裁が行われるようなことは決してないと思っているし、起きるはずはないと信じていると思います。 しかし、今の政権でなくても将来の時の政権によって、何らかのかたちで悪用される危険性があるのではないでしょうか。 なぜなら、憲法に条文として明記されている以上、その緊急事態宣言の発動の機会はいつでも利用できることになるからだと、古舘氏は警鐘していました。
別件になりますが、この問題と関連して国会の合法性について考えてみました。 国会の合意(3分の2以上の賛成)があれば憲法改正ができるとなっていますが、今の選挙制度(小選挙区制)においては大きな問題をはらんでいると思います。 現連立政権の得票率は約4割で70%以上の議席数を確保しています(小選挙区制度) 過半数以上の票(国民の声)が死票になっている現実があります。 民主的?に選ばれた政権によって国会での合意があったとしても、今の選挙制度で国民の声はほんとうに届いているのでしょうか。 議会制民主主義における議会運営の基本的方法として多数決が位置付けられています。 国会に提出された法案はこの多数決で採決されます。昨年の安保法案もそうでした。 議会制民主主義にのっとって合法的に採決されたとはいっても、現行の選挙制度を考えた時、ほんとうにこれでいいのかという大きな疑問を持ちます。
話は戻りますが、今夏の参議院選挙を控え今政界の中で「憲法改正」の議論が大きく話題になってきています。 このことは、私たち国民の日常生活において一見無害に思えるようにみえますが、今回の報道において改めて考えなければならないと感じました。 TVや新聞などメディアの報道は、視聴者(国民)に対して「今起きている事実を正確に伝える役割」を持っていると思います。 そして、もう一歩踏み込んで「事実を伝える」だけのことの先に「どんな影響があるのか」「どのような変化が起きるのか」ということの問題提起や警鐘を鳴らすこともたいへん大事なことだと思いました。 そういう意味では、今まで12年間の報道にたずさわってきた古舘氏の降板は残念でなりません。 4月から新たなキャスターを迎え再スタートするようですが、今までのような報道を期待したいです。
最後に今回の特集番組の中でナチ政権に捕えられたユダヤ人はじめ民主的な一般市民、政権に反対した野党議員、学識者などが収容されたブーヘンヴァルト強制収容所の映像と解説がありましたのでご紹介します。
戦争が終結して、連合軍がワイマールにあるブーヘンヴァルト強制収容所に立ち入った時あまりの悲惨な光景(収容された方々の死体の山と餓死寸前の収容者)に驚いたと言っていました。 この惨状を見た連合軍は、ワイマール市民に見せたそうです。 この光景を見た市民から「知らなかったんだ」という声があちこちからあったそうです。 しかし、収容者たちは怒りをあらわに「いや、あなたたちは知っていた」と・・・。
たいへん印象的な場面でした。 ワイマール市民が、はたして知っていたか、知らなかったのか、それは分かりません。 ナチ政権によって報道が統制され、言論の自由が奪われ、政権に対して反対や批判することさえも許されませんでした。そして、同じドイツ人(国民)を差別することによって統制を強化することがナチ政権(独裁)のやり方でした。 ワイマール市民は知っていたかもしれません。しかし、市民もまたナチ政権の被害者で、口に出しては言えない圧力があったと思います。 こうした一般の市民を非難することはできないと思います。
これが、まさに独裁政治の現実ではないでしょうか。 しつこいようですが、日本においてこんな独裁政治が起きるなんて誰もが思っていません。そんなことは当たり前だろうと固く信じて疑いません。 しかし、絶対変えてはならない私たちの憲法に今一粒の種が植えられようとしています。
「TVニュース番組」 つづく
政治的な事は言いたくないのですが、
安保法施行されてしまった。
この国は、いったいどこに行こうとしてるのか?
ヒトミさん
コメントありがとうございます。
圧倒的多数の憲法学者はこの安保法制(戦争法)を違憲と考えています。 憲法違反の戦争法が施行されたということは、戦争ができる国になったということです。一種のクーデターと言っても過言ではないと思います。
残念ながら施行されましたが、多くの国民がこの戦争法に反対しています。
これからの国政選挙において、戦争法に反対する多くの国民や議員、政党によって廃止することができると思います。