短時間往復のピークハントだけではつまらない
ルートによって登山の醍醐味が味わえる!
好きな山、登り慣れた山に何度も登るハイカーは多いです。又は、季節を変えて違った景色を楽しむために登攀される方もいます。そしてその時は、前回と異なるルートでチャレンジしてみたりします。 例えば富士山のような単独峰の場合、主に四つのルートがあります。吉田口、御殿場口、富士宮口、須走口などです。又、百名山の中でも最も多い登山口を持つ鳥海山は、なんと八つのルートがあります。 単独峰以外では、稜線や尾根づたいに頂上を目指していく連峰型もあります。代表的なものとして北アルプス、南アルプス、中央アルプス、後立山連峰などです。その中の槍ヶ岳を例に挙げると、北・東・西鎌尾根と南尾根の四方から、更に、槍沢・飛騨沢の沢づたいから目指すルートがあり、これだけで六つもあります。
はじめてその山に登る時は、比較的安全で時間的にも余裕を持って登れるルートを選ぶ方が多いと思います。又、ルートを決める場合、体力・時間・資金も当然考慮に入れて決めることになります。日本全国に散らばる百の頂きを踏破するのですから、自宅からの距離・時間を考えた時、一度きりしか登らない山も数多くあると思います。 だからこそ、ルート選びには充分な検討を加え決定していきたいと考えています。今では多くの登山専門誌もあり、更に、ネットからはあらゆる情報をリアルに取り入れることができます。こうした情報を駆使すれば、単なるピークハントの往復登山ではなく、もっと楽しめる山旅ができるのではないでしょうか。
高度感あふれる稜線・尾根から目指すルート
北アルプスの中で最も人気の高い憧れの山といえば「槍ヶ岳」が最右翼に挙がります。
槍ヶ岳を目指すルートは六つあります。その中で最も多く登られている登山道は槍沢ルートです。上高地から横尾、槍沢ロッジ、ババ平を経て槍沢を直登していくコースです。整備された登山道と岩稜帯を登ることなく比較的安全なルートであり、他のルートと比べ時間的にも余裕があります。しかし、東鎌尾根と南尾根に阻まれた沢づたいですから展望は望めません。ひたすら目の前の槍の穂先を見ながら登ることになります。
百名山を目指す方であれば、それなりの体力・気力を持ち合わせているという前提に立って考えた時、はたしてこのルートでいいの?という思いもあります。余計なお世話だと言われればそれまでですが・・・。槍沢ルート往復だけでは、せっかく行くのだからもったいないという気持ちがあります。 北鎌尾根はハイレベルな一握りのベテラン登山者だけに許されるルートですが、他の三つの尾根から槍を目指すコースは、北アルプス全てを満喫しながら高度感あふれる登山の醍醐味を味わうことができます。
写真左:東鎌尾根から見る景色。眼下に槍沢と穂高岳に続く3000m級の稜線を眺望することができます。 写真右:東鎌尾根を槍ヶ岳目指して登るカミサン。眼下に間ノ沢を覗きながら高度感あふれる登山道です。(東鎌尾根コース)
写真左:槍沢を直登しないで、途中から天狗原(氷河公園)を通り南岳の稜線に登っていきます。 写真右:南岳から中岳、大喰岳の3000m級の高度感ある稜線を歩き、槍ヶ岳を目指します。(南尾根コース)
常念岳は、主に一ノ沢を登り常念小屋の稜線に出て頂上を目指すルートが一般的です。
その他、表銀座から大天井岳を経て稜線歩きで常念を目指すルート、又、逆に蝶ケ岳方面からこれもまた稜線歩きで常念を目指すルートがあります。
単にピークハントであれば、一ノ沢直登か本沢~前常念を経て山頂に至るコースを選びます。しかし、これではやはり面白くありません。なぜなら槍ヶ岳と同様に沢づたいになればどうしても景観がイマイチです。標高の高い稜線や尾根に出て、そこから周辺の眺望を楽しみながら目指す山歩きの方が登山の醍醐味が味わえます。 となれば、大天井岳や蝶ケ岳方面から槍穂高連峰を望みながら常念の頂目指して稜線闊歩した方がずっと楽しいです。
槍穂高連峰を望みながら空中散歩 遠く常念岳に続く稜線歩き
見渡す限りのハイ松ジュータンの中を通る一本の登山道が続いています。昨年夏、登山仲間たちとこの表銀座から常念岳を目指しました。
白馬岳は、大雪渓があまりにも有名です。白馬に行くならこの雪渓を登り頂きを目指すというのは多くのハイカーの憧れでもあります。頂上直下の山小屋で一泊後、小蓮華山を通って白馬大池に下るコースがあります。又、杓子岳、白馬鑓を縦走する白馬三山も見逃せません。せっかく行くのであれば、これもまたピークハントだけでなく他の峰も走破しながら稜線を縦走する山旅も醍醐味があります。
八方尾根からの白馬三山 白馬大雪渓
杓子岳から望む白馬岳 白馬山荘付近からの杓子岳と白馬鑓ケ岳
ご紹介した北アルプスの槍ヶ岳、常念岳、白馬岳の登山ルートはほんの一例です。
私たち百名山を目指すハイカーは、はるばる遠方から時間と資金を使って出かけて行きます。だからこそ一山一山のピークハントだけに終わらず、周辺の山々も含めたその存在を確かめながら登山を楽しみたいと思います。 登頂までのコースタイムや距離だけにこだわらないで、どんなルートが面白いのか、景観や眺望を楽しめるコースがあるんじゃないかいった想いあれば、いろいろな登り方に関わる選択肢も増えてくるのではないでしょうか。
「日本百名山に思うこと」 つづく