東京新聞の読者交流会
福島第一原発事故は人災!
3月9日、東京新聞の「読者のミカタ」交流会に参加しました。
今回は、13年前の東北大震災で起きた福島第一原発事故の現状を読者に伝えるイベントでした。
メディアの報道というのは、その時々の時事を取り上げスピーディに記事にするのが一般的です。
更に、話題性のあるなしを秤にかけて、記事にするしないの判断がされているように思います。
このような中、今回の交流会は、13年間原発事故の取材を続けている社会部の山川剛史編集委員からお話を聞くことができました。
13年間、原発の実態とその周辺地域の変化を見続け監視し、それを報道してきた内容には真実味と重みを感じる講演でした。
以前、ブログでも紹介したフリージャーナリストの青木理氏が述べた「メディアが自らの取材と責任で調べ、報じる『調査報道』に力を入れるべきです」の話は、まさに今回の東京新聞と山川編集委員のことだと思いました。
東京新聞本社で行われた「読者のミカタ」交流会。復興状況の展示。
福島原発周辺地域の調査(放射能や水質など)をするための機器類や道具。コアサンプラー、採泥器、採水器、大型線量計や記録装置などを使って調査。
福島第一原発沖の海洋水質調査に加わる山川氏。トリチウム分析には時間がかかるとのことでした。
13年経った今でも「溶け落ちた核燃料 まだまだ調査段階」とのこと。
1号機はもとより2号機、3号機においてもまだこのような状態が続いているようです。
原子炉内に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しはまだ調査段階で、工法も模索している段階だ。昨年の水中ロボット調査で、1号機圧力容器土台に大きな損傷が確認された。東電は大地震に見舞われても大きな影響はないとするが、計算上の推測にすぎず、更なる実態解明が求められる。
3/10東京新聞 福島第1原発特集版(山川剛史編集委員)
被災地の ”復興” の状況は?
高い放射線量のため、住民ですら立ち入りが制限されてきた帰還困難区域。この2年間で、優先的な除染がされ一部地域の避難指示が相次いで解除されたようです。
住民の選択肢が増えた点は良いことですが、解除後、帰還あるいは新たに転入した人口は少しづつ増えているものの、住民登録している人はわずかで実際には住んでいないそうです。
居住率でみると、双葉町2.9%、大熊町2,8%、富岡町4.3%、浪江町15.9%、飯館村32.8%など。
昨年8月、高濃度汚染水を処理した後の水が海洋放出されました。今のところ明らかな影響は見つかっていないようですが、放出は30年ほどかかる見通しだそうです。
この海洋放出にかかる費用が膨れ上がっているとの説明がありました。
当初の報告書(2016年)では17~34億円。その後、本体工事と風評被害対策や基金、賠償などで850億円、更に増え続け最新の政府見積りでは3000億円だそうです。
以上のように、溶け落ちた核燃料の取り出し状況の実態、被害を受けた周辺自治体の復興状況、そして、汚染水の海洋放出の実情と見通しなど、13年経った今でもまだまだ進んでいないことがわかりました。
交流会では多くの参加者から質問がありました。
その中で、「福島第一原発事故は地震と津波で起きた天災なのか、それとも人災なのか、どうように思われますか?」という問に対して、山川氏は、
「福島第一原発は1980年代から事故が多発していた。東北大震災以降も次から次に深刻な事故を起こしていました。私は人災だと断言します。これだけははっきりと言えます」
地震大国と言われる日本において、原発の設置自体がすでに危険とされています。原発建設後もコントロールできない現実、更に核のゴミ処分もできない状況にあります。
原発事故はいかに悲惨な状況に追い込むのか、改めて感じるものがありました。
そして、今も約2万9千人が避難生活を強いられている現実があります。今ある原発は全て廃炉とし、原発廃止に向けて大きくかじを取る必要があると思います。