株価高騰の裏

ゆとりのない実体経済

人為的に円安と株高の誘導!?

 

日経平均株価の終値が高値を維持し続けています。
これを受けて新聞、TV、ネットなどのメディアがお祭りのように連日報道していました。
こうした状況を見て「何か浮かれているな~」という感じです。

このような金融市場の動向が、私たちの日常生活の向上に反映されるかというと決してそうでもないです。
なぜならあくまでも金融取引上のもので実際の経済活動に生かされていないからです。
簡単に言えば、私たちの頭上でお金が行き来しているだけで、私たちの足元に回ってこない状態が繰り返されているからです。

例えば、高度経済成長の頃、株価上昇によって企業は設備投資に回し、賃金は上昇しました。投資による設備拡充は経済を活性化させ雇用拡大にもつながりました。賃金が増えれば消費は拡大します。それに伴い企業の売上は増加して更に設備投資が進むというサイクルが生まれました。
これがいわゆる ”経済が回る・循環する” という形で、個人消費の拡大はGDP(国民総生産)を押し上げていきます。

 

株価は本来、企業の業績や景気予測などに基づいた投資家の売買で決まる。将来の株価が上がると思ったら買い、下がると思えば売る。需要と供給によって適正な株価が決まっていくのが市場メカニズムだ。
しかし、市場原理と無関係に、日銀は株安になると、ほぼ自動的に買い入れてきた。

3月17日東京新聞

 

20240228_102326   20240319_155306

 

今のような株高現象は

■政府、日銀による異次元金融政策で起きたものです。
本来、日銀の役割はインフレ・物価高を調整する金利等、いわゆる「物価の番人」です。しかし、現政府(アベノミクス)の後押しによって金利はゼロベースに張り付き、これ以下に下げようがないため資金供給量を増大させました。これにより日本経済社会に溢れかえるマネーが注ぎ込まれました。

■この金融政策により日米の金利差が拡大したことで円安が急速に進みました。ドルで評価した日本株は割安となり海外投資家の日本株買いが拡大しました。これが海外投資家頼りの株高が実現するといった形になります。

■同時に、中央銀行が株価を安定・吊り上げておくために株式市場に資金を供給しました。これが日銀による株式ETFの大規模買入です。株式市場に日銀マネーが投入され、株価の下落を食い止めてきたわけです。日銀が爆買いした株式は、保有時価総額71兆円越
さらに、年金基金GPIF(年金積立金管理法人)も日本株を買い支えるために株式投資枠を拡大し続けました。

日銀は3/19日、マイナス金利政策の解除を決めました。これにより株価を事実上下支えしてきたETFの新規買い入れも終了するようです。

本来、企業の株価はその成長を見越して株主が投資し、その資金を使って設備投資に回すことで事業拡大を図り営業利益を上げていくものです。
しかし、現状は海外投資家をはじめとする多くの投資家の目的は、日本経済成長のために資金を供給するのではなく、日本株投資で儲けることにあります。こうした投資家は、内外の様々な政治経済情勢に機敏に反応して、資金を引き上げることも十分にあります。

又、日本の大企業や銀行なども同じように利益は株式や国債に投入されています。企業の利益は内部留保として貯めこまれるか、自社株買いをはじめ各種投資に回っているのが現状です。

銀行においてもリスクのある融資は控えられ、国債や株投資に注がれています。
国債は、政府が利子の支払いと元本の償還を保証しているので、信用力の高い投資物件といってもいいでしょう。景気変動の影響を受けることなく、利子は年2回、元本は償還期日に、必ず満額支払われます。
今や莫大となった政府債務(1000兆円越)の償還費は、毎年度の予算で社会保障費や文教科学費、公共事業費より先に優先的に償還と利払いがあります。
この金額が来年度(令和6年)の歳出でみると、債務償還費17兆円、そして利払費がなんと9兆7000億円です。
銀行などの国債投資家が政府の債権者ですが、私たち国民が消費税などを負担し、そうした税収入から国債の利子だけで10兆円近く支払われることになります。

国の運営が借金しながらの自転車操業になっている状況の中、私たちが納める税金の多くがこれら債権者(国債投資家)の利益になっていると思うと何とも言えない気持ちです。

 

20240228_174839

財務省HP「令和6年度予算」資料

 

資産運用立国?

 

今回のような政府と日銀の金融政策は、禁じ手といわれる株式市場への介入により莫大な資金を投入したことで後戻りができない状態になっていると思います。資金を引き上げれば一気に株価は下落するのですから。

こうした中、政府の金融政策として出されたのが「資産運用立国」です。

政府は、我が国の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費に繋がる、「成長と分配の好循環」が実現していくことが重要であると考えています。
金融庁HP

一言でいえば、個人の預貯金を金融投資に動員する政策です。
これが最近よく宣伝されている新NISAで、更に投資促進を図る追加政策(非課税上限額1800万円など)が拡充されました。
日銀のEIFや年金基金GPIFが、日本株を買い支えるといったかたちで推奨するものですが、あくまでも長期の資産運用を目的とした制度のため、短期の売買に向かない点も留意したいものです。
特に若い世代の人たちにとっては将来の社会保障制度に不安をもっていることから、多少の預金を投資に回す動きがあります。こうした動向は政府と金融機関の一大キャンペーンも影響しています。

非課税枠を拡大した新NISAは、預金も合わせ金融資産を多く持つ富裕層にとって最も有効的な制度です。「1億円の壁問題」(分離課税)にもあるように、税制のあり方として更に格差を広げる制度といってもいいでしょう。

本来の政治は、国民の暮らしの安定と向上に向けた政策推進が役割です。
社会保障の充実、逆進性のある消費税減税など、こうした政策を棚上げにして、投資を含む資産形成を組み込むことを推奨しているのが今の政治です。

資産運用立国?、その正体は「すべて自己責任で」ということです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。