原発事故の防災対策

自然災害への対応は範疇外!?

珠洲原発を止めて「本当に良かった」

 

能登半島地震によって志賀原発(石川県志賀町)で、深刻がトラブルが発生したことがメディアの報道で伝えられました。
地震の揺れによって、変圧器が故障し、外部電源が一部使えなくなり、絶縁や冷却のための油が漏れ出した状況になったようです。
また、使用済み核燃料のプールは止まり一時的に冷却が停止するなどのトラブルが起こりました。

こうした事態を知り、「もし珠洲原発があったらどのようなことが起こっていたか?」と空恐ろしくなりました。
この珠洲原発(石川県珠洲市)は、1975年に原発計画が持ち上がった町です。28年に及ぶ住民の反対運動によって2003年に凍結されました。

かつて「珠洲原発」の予定地だった石川県珠洲市高屋町も孤立。住民が市外に逃れるのに10日余りを要した。計画は住民の反対を受けて2003年に凍結されたが、「珠洲原発があったら、避難どころじゃなかった」・・・。
100人ほどが暮らす高屋地区は平地が少なく、住宅は海岸線と急斜面の山との間に並ぶ。集落に通じる道は3方向にあえるが、すべて土砂崩れで断絶。海岸線は数メートル隆起し、船も出入りできない状況になった。
1/22 東京新聞Web

 

今回の能登半島地震は、13年前東日本大震災で起きた福島第一原発事故を思い出した人は私だけではないと思います。
二度とこのような事故が起きないために原発ゼロや再生可能エネルギーへの転換、更に様々な防災対策が叫ばれてきました。
にもかかわらず、岸田首相は施政方針演説(1/30)で原子力発電について「引き続き活用を進める」と強調しました。2024年度の予算案は原発産業を優遇し、原発再稼働を加速させる内容です。
経済産業省は原発など発電施設が立地している自治体向けの「電源立地地域対策交付金」に760億円を計上しました。又、これとは別枠で長期停止中や避難計画のない原発を対象に交付金などを支給する「原子力発電施設等立地地域基盤整備支援」に112億円を充当しました。
こうした交付金、支援金は私たちの税金です。再稼働に向け立地自治体を懐柔する資金に私たちの大事な税金が使われているんです。

 

原発を含めた総合的な防災対策の必要性

 

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こうした中、先日(2/14)原子力規制委員会が定例会合で原発事故時の防災対応を定めた原子力災害対策指針の見直しについて、環境に拡散した放射性物質による被ばくを避ける住民の「屋内退避」の手法に限って議論する方針を決めた内容の記事が東京新聞に掲載されていました。

一面の「家屋倒壊時の退避 議論せず」との見出しに注目しました。

山中伸介委員長は会合後の記者会見で、家屋倒壊や避難ルートの寸断などは自治体側の検討課題と強調。「自然災害への対応はわれわれの範疇外」と繰り返した。
屋内退避ができる前提で今後の議論をするのかを問われると、「そのような考え方で結構」と答えた。

見直しの議論は、屋内退避を原発からどれくらい離れた場所に住む人々が何日間ぐらい実施するかや、解除の判断基準など、現行指針に具体的な記載がない項目に限る

つまり、地震などの自然災害で原発事故が起きた時、原子力災害対策指針はあくまでも被ばくを避ける住民の「屋内退避」に限って議論するというものです。これには驚きを通り過ぎて呆れてしまいました。

今回の能登半島地震では多くの家屋倒壊が起きました。私たちは「屋内退避ができない状態」になったことを各種メディアの報道などで目の当たりにしました。更に、避難するための道路はすべて寸断され逃げ場を失う状態になりました。

報道では、北陸電力志賀原発の避難計画に照らし合わせてその矛盾が明らかになっていました。
同地震で志賀原発の30km圏の通行止めは16路線30ケ所に及んだこと。同原発から5km圏の住民は、避難先に指定されている同半島北東部にも避難するよう求められていますが、避難先の珠洲、輪島両市と能登町では、道路の寸断により8日間も孤立した集落があったそうです。
つまり、避難ルートが使えるかわからないのに避難先が指定されている。そのルートが使えないなら、どうやって避難するのか?
また、屋内退避というが、家屋の倒壊、停電や断水もあり、食料も調達できない状態になりました。
まさに「絵に描いた餅」ともいえるでしょう。

 

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東日本大震災をはじめ能登半島地震でも「地震が起きたらこのような事態になるんだ」と同時に、原発事故による被ばく対策も考えなければいけないことを改めて教えられました。
地震大国の日本の場合、自然災害と原発事故は同時に起こるものとして想定しなければならないと思います。
そのためには自然災害と原発事故は総合的な防災対策が必須ではないでしょうか。それぞれがそれぞれ(原発側と自治体)の対策を図るのではなく、国・自治体・原発が一体となった防災対策が求められると思います。

以前、内閣府防災担当官による「激甚化する災害と政府の対応」というタイトルの講演がありました。
内容は自然災害が多発する中、政府としての防災対策についてのお話でした。この時、私は東日本大震災の福島第一原発事故の例を挙げて、その避難計画と対策について質問しました。
その問いに対して、原発事故の影響とその対策は資源エネルギー庁の管轄であり、内閣府防災担当としては関与しないとの返答でした。
今回の原子力規制委員会の防災対策指針と同じような言い分です。つまり、縦割り組織のため、あくまでも自分たち組織としての対策だけに固執し、当然起こりうる問題については関与しないという考えです。

 

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原発再稼働の現実

 

原発をめぐっては地元の市町村議会や住民から「交付金があるから」という声をよく聞きます。
しかし、その受け入れは本当に地域振興に役立つのでしょうか?
こうしたことも珠洲原発計画凍結の教訓から考えさせられます。

現在、山口県の上関原発建設の計画が進められているようです。この上関原発計画にあたって関連する交付金は、調べてみると40年間で実に51億円近くも国から交付されていました。
原発が着工・運転していない時から交付されています。様々な施設や建て替え費用、新たな文化センターなどの建設資金に使われているそうです。しかし、それら施設の維持管理費も当然必要になってきます。いわゆる ”箱もの” と言われる建物の管理費で、こうした費用も継続して多額にかかってくるとよく耳にします。
上関の場合、長年に渡って地域住民が原発建設を止めてきた経緯があります。その計画が思うように進まないということから、今度は政府と電力会社から使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設の話が持ち上がっているそうです。

全国の原発で、敷地内のプールに貯めこまれている使用済み核燃料は、軒並み容量の7割~8割に達しています。この使用済み核燃料を中間的に貯蔵する施設も必要となり、電力会社同士が協力してつくるということで進められているようです。

ブログ:核のゴミ処分場

 

真に「地域振興」のためというのなら、再生可能エネルギーへの支援こそ必要ではないでしょうか。
原発に「絶対安全」はない、「安全神話」からの決別こそが福島第一原発事故の教訓です。
そして、今回の能登半島地震で、珠洲原発を止めたことがその証拠として教えられました。

地震大国の日本では原発ゼロを決断すべきです。同時に稼働してなくても原発事故は起こりうることから総合的な防災対策を緊急に検討しなければならないと思います。
毎年のように予算化されている交付金や支援金は、こうした防災対策に使われることが必要ではないでしょうか。

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