小説「墓じまいラプソディ」(後編)

選択的夫婦別姓を考える・・・

男のプライドや沽券!?

 

小説「墓じまいラプソディ」は、社会の少子高齢化や核家族化に伴う墓じまいに関わる話ですが、それと関連して選択的夫婦別姓について投げかけられている物語でした。

いま世界で夫婦同姓を法律で義務づけている国は日本だけです。国民世論も、すでに7割以上が選択的夫婦別姓制度の導入に賛成しているのが現実です。
又、結婚が最も多い若い世代に至っては約8割が賛成という世論調査も発表されています。

 

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ではなぜ夫婦同姓が義務付けられているかといえば、日本は昔からの家父長制による男性上位の家族観が浸透してきたことから結婚後男性の姓を名のるのが当たり前の風潮がありました。
それは今でも変わらず、現在でも結婚時に改姓するのは女性が96%ということをみても明らかです。
特に疑問を持たず男性の姓にするのがごく自然のように思われましたが・・・。

しかし、社会の変化に伴い夫婦・家族のあり方は多様化し、そのかたちはさまざまに変化してきています。
特に女性の社会進出が高まるにつれ、仕事や社会生活を送る上での様々な不便・不利益をもたらしていることが夫婦別姓を考えるキッカケになっているのではないでしょうか。

一方、女性の方から積極的に男性側の姓に変えたいと思っている人や実際に改姓した人も数多くいます。それはそれで個人や夫婦の考え、意志によるものですから夫の名字で夫婦同姓であればいいと思います。
ここではあくまでも「選択的にできる」ようになればいいという考え方です。

 

この物語の中で選択的夫婦別姓に関しての講演会の場面がありました。講演者は選択的夫婦別姓に反対する元国会議員と参加者の老人とのやりとりがありました。

老人
孫娘が名字のことで結婚を躊躇する姿を見て、私は今まで間違っていたことに気づいたんです。どちらの姓を名乗ってもいいと法律で決められているのは確かです。ですが、実際は96%が夫の姓を選んでいる。これは平等なんかじゃない。私や先生のような頭の古い男性が日本の民度を下げているのではないかと思うようになったんです。

元国会議員
あなた、本気で言ってるの?男が名字を変えるなんて、男のプライドがズタズタになりますよ。

ちょっと極端な会話になりますが、現実はまだまだこうした考え、思いが少なからず世の男性の中にはあるのではないでしょうか。

その他にも主人公の娘が結婚相手を前にして

名字を変えたら男の沽券にかかわるとか考えているわけ?

これもまた厳しく突っ込んだ言い方のようですが、本音は意外と近いのではないでしょうか。

実は私の場合、自分の名字が好きでなかったため、結婚する時に妻の名字にしたいと思っていました。しかし、妻の方は妻の方で「私も自分の名字は好きでないからあなたの名字にしたい」と話が分かれました。何度も話し合ったのですがうまく決着できませんでした。
そこで、最終的にジャンケンで決めることになり、私が負けたことで今までの名字なんです。

このようなことは多分珍しいと思います。
この物語の中でもジャンケン場面が出てきたため苦笑いでした。

 

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今回の小説「墓じまいラプソディ」は、その底辺にジェンダー問題を題材にしています。
それは、私たちの日常生活の中にある何気ない場面で ”違和感を抱く思い” をストレートに物語化したものだと思いました。
このことは女性はもちろんのことですが、最近では男性においても同じような感情を持つ人も増えてきているのではないでしょうか。
しかし、口では「男女平等」と言いながら、実際の行動や会話の中にはまだまだ差別的な言動があります。

この物語の中では、日常生活の一コマで「手伝う」という言葉が禁句と指摘されていました。
今では夫婦共働きが一般的な社会です。例えば、夫が「家事を手伝うよ」という言葉自体当事者意識がまったくない表れだということです。
「手伝う」ではなく「する」ものということなんです。

 

ジェンダー平等社会を目指すとは、あらゆる分野で「男女平等」を求めるとともに、男性も、女性も、更に多様な性を持つ人々も差別なく平等な社会をめざすということではないでしょうか。

この小説を読んで改めて考えさせられた一冊でした。

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