少子化問題

出生数80万人割れ

若い世代の貧困化が原因か!?

 

今、国会では少子化対策に関して議論されています。
こうした中、先日政府・自民党の調査会から「出産したら奨学金の返済を減免する」「育児休業中のリスキング(学び直し)を後押しする」など、若い世代が直面する問題から大きくずれる発言がありました。
私のような専門家でない一市民でさえ、「えっ!何を言ってるの?」と思うようなこの発言に呆れてしまいました。

2022年に生まれた赤ちゃんは、79万9728人で1899年の統計開始以来初めて80万人を下回ったようです。
今や少子高齢化問題で減少し続ける勤労者世代が高齢者を支えることが困難になりつつある状況です。このまま少子化が進めば将来の社会保障制度自体に大きく影響してくるでしょう。

 

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少子化に関する新聞報道(東京新聞3/1付)。来年度予算の防衛費と子ども支援関係予算報道(3/5サンデーモーニング)

 

このような少子化の原因はいろいろあると思います。
若者の生き方や結婚観など様々な価値観の多様化、経済的な負担、子育てに対する負担感、子育て環境の整備の遅れなど・・・。
どの原因も全て当たっていると思いますが、これらが複雑に絡み合っていることからその対策が容易に進まないのでしょう。
ただ、その対策ではっきり言えることは、少子化が個人(若者)の責任だけに留めるのではなく、社会全体で支え対応する政策が求められていると思います。

少子化の原因がいろいろある中で、私は特に ”経済的な問題“ が多分にあると思っています。
それは、この間の労働法制の改悪(「労働者派遣法」「労働契約法」「パートタイム労働法」)によって、非正規雇用が合法化されたことで雇用の破壊が進み、低賃金と生活の不安定化が進んだからと思います。

 

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東京都立大学オープンユニバーシティ講座

 

今、私は東京都立大学のオープンユニバーシティの講座を受講しています。
講義は「格差社会の謎」というテーマで一橋大学の教授が担当する講座です。このブログではその詳細については省きますが、格差社会が急速に進んできた中で、少子化の原因となる「非正規雇用と結婚難」がありました。

まず前述した労働法制に改悪については、

「労働派遣法」(一部抜粋と改悪の変遷)
■派遣労働者と派遣先の労働者(正規雇用者)とで賃金の格差を設けることは合法とみなされる。
■派遣労働者に対しては、同じ課で働ける上限をすべて3年とする一方、受け入れ企業に対しては、労働者を入れ替えれば同じ部署でも上限3年を超えて無期限の派遣利用を可能にした。
※今までは3年経てば正規雇用化しなければならない法令であった。

私も働いていた時にこの派遣法に関して体験したことがありました。優秀な派遣社員を3年雇用した後、正規社員にするよう人事部に依頼したところ雇止めするよう指示がありました。一定期間(雇止め)を設けて再度その人材を雇い入れることで「無期限の派遣利用が可能」になるとの言い分でした。つまり正規雇用にしないという合法的な手段が法令化されたということです。

ちなみにその優秀な派遣社員は30代で結婚していませんでした。

 

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講義資料と「非正規雇用と結婚難」にかんするデータ

 

ワーキングプア
1年を通して働く民間労働者5270万人の内、年収が200万円に達しない労働者が1126万人、労働者の5人に1人の割合を占める。
年収300万円に達しない労働者は1908万人、雇用者の36.2%を占める。年収400万円以下が過半数の51%を占める。
30歳以上のどの年齢階層においても年収300万円未満の雇用者が40%を超える。
講義資料より

この数字を見ても明らかなように非正規雇用者の年収は低く抑えられています。社会保険(雇用、年金、健康保険など)もほとんどが自己負担です。
更に最近ではプラットフォーム・ワーカー(ウーバー型)も増え続け、実質的な雇用破壊が進んでいます。

このような低賃金・低年収の状況から結婚できない現実があるのではないでしょうか。当然このことは少子化に拍車をかけています。

20代、30代の正規雇用と非正規雇用の結婚難比較に関するデータによれば、既婚者は正規21.6%、非正規12.4%、恋人ありは正規33.5%、非正規24.6%、恋人なしは正規32%、非正規36.8%、交際経験なしは正規12.9%、非正規26.3%。

こちらの数字からも非正規雇用の結婚難が見えてくるものがあります。

 

私たち60~70代シニア世代においては正規雇用が当り前の時代でした。少なからず労働組合も組織化され春闘でも賃上げがなされてきました。
しかし、1990年代からの極端な資本の集中化(独占資本)と政治によって格差と貧困が進んできました。賃金格差と低所得者層の拡大は子育てや結婚難=少子化にも大きな影響をもたらしたのではないでしょうか。

冒頭で述べたように少子化の原因はいろいろあると思いますが、やはり経済的な面が大きく関わっていると思います。
少子化対策と子育てに関しては一時金の支援や税負担軽減もあるでしょう。給食費や学費免除などの取り組みも国が主導していかなければならない思います。
なによりも生活維持のベースとなる労働に応じた適正な収入の安定こそ最も大事なことだと思います。それが今できていないことが大きな問題であり、まずはその点に目を向け改善する必要があると思います。

4 thoughts on “少子化問題

  1. 収入が増えれば少子化が解消されるとは思いません。
    私たちが結婚した当時を思い出してみてください。

    15歳頃から外形的性差が生じて、異性に強い関心を持つようになり、エロ本に
    興奮した経験がありますよね。
    そして体育祭のフォークダンスで手を繋いだだけで、その夜は眠れなかった
    なんて思い出しませんか。
    でも実際には、本命の彼女の手前で曲が変わり反対回りになったものです。

    やがて就職し自立するようになると、人並みに結婚したいと願いますが、
    貯金をしてからなんてことはなかったと思います。

    一時期は親の享楽の果てに生まれたと反抗した若者もいましたが、生物として
    「種の保存」に駆られて結婚願望に駆られるのは自然なことですよね。
    稼ぎが少ないけど何とかなるから一緒になろうよ!
    こう言って結婚したものではないでしょうか。

    ところが今は、収入の多寡にかかわらず晩婚化していることに危機感を持ちます。
    また体外授精や出産前検査などにより出産をコントロールする風潮も心配です。

    私たちの頃は「授かりもの」と受けとめていたので、稼ぎが少なくてもほかの出費
    を削って子育てに回したのではないでしょうか。

    こうした考えが薄れた原因は、安易に薬に依存する生活習慣によって体質が変化した
    のではないかと思えてなりません。

    本来「医食同源」と言われるように日頃からバランスの取れた美味しい食事をとる
    ことにより心身ともに健康が保たれていれば、青春期に妊娠・出産が訪れるもので、
    子が授からないなんてありえないことだと思えてなりません。

    1. 凡夫さん

      少子化の原因にはいろいろありますよね。
      一言でこれが原因だということは難しいと思います。
      ブログでも述べましたが、若者の生き方や結婚観などが変化してきていることもあると思います。
      又、凡夫さんのおっしゃる薬や医療に依存する生活習慣もあるでしょう。
      最近では若者世代のアニメ視聴頻度が高まっているようで、異性よりも他の方向に関心が移ってきていて結婚しない、晩婚化傾向もあるのかな?と思います。

      いずれにせよ、少子化や子育てについては、経済的な問題も含め社会全体で考えていく必要があると思います。
      コメントありがとうございました。

  2. 私も少子化問題の一番の原因は「労働法制の改悪(「労働者派遣法」「労働契約法」「パートタ
    イム労働法」)」だと思いますし、断言してもいいほどではないかと思います。

    これらの法の悪業は人々を低賃金で働かせることも大きいですが、一番は将来の生きていく安定
    した気持ちをくじくことにあります。いつどうなるかわからないと不安だらけにする。将来設計
    が立てられない。将来の希望を奪っていることだと思います。

    確かに私たちが若いころは収入がその時少なくとも、どんな職業に就こうとも多くの若者が結婚
    しました。私などはまだ就職も決まっていませんでした。
    しかし私たちは無期限雇用で就職したし、できると思えました。そして「定年」まで勤めるつも
    りでいたことと思います。ですから人それぞれの生活設計を持つことができ、結婚することがで
    きたのだと思います。

    例えとして良いかどうかわかりませんが、人間にとって最大?の苦痛は何かの終わりがいつか分
    からないことだと聞いたことがあります。どこかの運動部のペナルティに「運動場を10周回っ
    て来い」というより、いつ終わるかわからないただ「回って来い」というほうが不安が増大する
    らしいです。今の若者はこのペナルティが終わることがあるのかどうかも不安で過ごしているの
    ではないでしょうか?

    1. 槌が崎さん

      こんにちは
      貴重なお話ありがとうございます。

      >私たちは無期限雇用で就職したし、できると思えました。

      確かに私たちの時代はそうでしたね。今、受講しているオープンカレッジの資料に「雇用の不安定化」に関してのデータ(2018年)がありました。
      それによると、有期の契約は1677万人(男女計)、割合は30.3%でした。その中には「期間がわからない」7.4%、「雇用契約期間の定めがあるかわからない」4.5%でした。これが今の現実なのか?と驚きました。
      槌が崎さんがおっしゃるように「いつどうなるかわからない、将来設計が立てられない・・・」まさに今起きている現実なんですね。

      少子化の原因にはいろいろあると思います。そうした中でやはり経済面での不安定さは大きいと思います。いくら働いても賃金は上がらない、将来の生活が不安・・・。
      格差拡大は社会の様々な面で深刻な問題が噴出してきていると思います。その一つが少子化問題ではないでしょうか。

      コメントありがとうございました。

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