「何かがおかしい」と思う一年・・・
所得と分配、税の使い方を考える
日本で最初のコロナ陽性者がでたのは2020年1月15日でした。
あれから2年の月日が経つ今も、今度は変異株「オミクロン株」の脅威にさらされています。
ワクチン接種もようやく今年の5月以降進んできましたが、感染拡大による医療・介護施設とその現場の混乱はたいへんな状態が続きました。
こうした中、7月ほぼ強行的に行われた東京五輪によって爆発的な感染拡大が起きました。医療が逼迫し、自宅で亡くなる人が相次いだ状況はまだ記憶に新しいです。
そしてこの五輪の総費用が、招致段階試算の2倍となる1兆4530億円だったというのですから驚きでした。何か大きな矛盾を感じざるを得ません。
この間、「医療現場の崩壊」や「外出・営業自粛」が繰り返されすべてその対策が後手に回ってきました。
このこと自体起こるべくして起こったといっても過言ではないと思います。なぜなら、”今までの政治による政策が招いた” こととも大きな関係にあるからです。
例えば、保健所はここ30年間で半分に減り、職員の数も7000人減ったそうです。又、地方衛生研究所の予算・人員、国立感染研究所の予算・人員も、連続的に削減され続けてきました。
更に公立病院は「赤字だから再編を」「場合によっては閉鎖を」と繰り返し行われ、病床数や医療従事者の削減に至った経緯がありました。
「こうした状況の中でのコロナ感染拡だったんだ」と考えさせられる一年でした。
それは、”いままでの政治は何を優先してきたか” ということです。
こうしたコロナ危機対応と国民生活が最優先されるべき時期に、今月2021年度補正予算案で、防衛費は過去最大の7738億円が盛り込まれました。
そして22年度の防衛費が過去最大の5兆4500億円ということですからこれもまた驚きです。特に「敵基地攻撃能力」保有・推進につながる莫大な予算が組み込まれたことです。これはまさに ”戦争をする国” への足掛かりとなるものです。
今、国として何が本当に必要なのかを真剣に考える時ではないでしょうか。
又、今年に入り森友問題で財務省の決裁文書改ざんへの関与を苦に自殺した赤木さんの妻が、国を訴えていた裁判が続いていました。
先日、国側がこれまでの主張を全面的に受け入れて裁判を終わらせる手段に出ました。この ”国の判断” に多くの国民の怒りが集中しました。
支払われた賠償金は、私たちが払った税金です。赤木さんと私たちは同じ被害者といえます。国政という国民に有無を言わせない権力をもって、税金という国民の共有財産から、不当な国政の犯罪行為隠ぺいに支払われるという不条理。しかも、国民への説明責任にふたをして永久に葬る、という罪の上塗りに、私たちの国税が使われているという不届き。
東京新聞 読者の声
「夫の死の真実を知りたい」と訴えてきたのに、国は、金で臭いものにふたをして、なかったことにしようとしている。ふざけるなと言いたい。税金は国民のものだ。説明責任を果たさない国が、勝手に税金を使うには、許されない。
岸田首相は「政府として、真摯に向き合っていきたい」と言っているが、真相究明する意思は、全く感じられない。
同、読者の声
今までの様々な国政上の場面で「説明責任」や「税の使い方」問題が、悪い意味で話題になりました。
この裁判においても全く同じようなことが繰り返されました。
「何かがおかしい」と思う気持ちは私だけではないと思います。
動かぬ実体経済
先日、毎年年末に行われる寺島実郎氏の講演会に行ってきました。
ここで寺島氏は、「コロナ危機の中間報告」としてこのようなお話がありました。
波状的に増える感染者に、政府は「緊急事態」「蔓延防止」を繰り返し、専門家の意見を受け、ひたすら接触を断つ「自粛国家」の様相を呈してきた。
不思議なのは、この間、この国のリーダーは「直面している事態の意味」「実行した政策と効果」「残された課題と展望」について、責任と信頼込めた説得力のあるメッセージを一切発信しないことである。
国民の不安に応えるために根拠のある政策科学的説明に力を入れるのが、「職業としての政治」を志した者の当然の責務である。
このままでは、後世から「コロナ・パンデミックに際し、国民にマスク2枚と10万円を配った愚かな時代」と嘲笑されるであろう。
寺島氏が言うように、「直面している事態の意味」を本当にわかっているのか?、今までの「政策と効果」はどうであったのか?、そして、「残された課題と展望」についての説明は?・・・。
直近の首相だった人たち、今の首相からもまったくありませんよね。アバウトで抽象的な言葉を羅列しているだけです。これだったらハッキリ言って誰にでもできます。
政治家であれば、一国のトップリーダーであれば「根拠ある政策科学的説明」をしてください。
このようなコロナ危機の中、「世界不平等研究所」(本部・パリ)の報告書が新聞記事になりました。
世界上位1%の超富裕層の試算が今年、世界全体の個人資産の37.8%を占めた。下位50%の資産は全体のわずか2%だった。新型コロナウィルス禍で落ち込んだ景気への刺激策で株式などの資産価値が急騰、格差が一段と広がった。
富の集中は鮮明。「不平等は今後も広がり続け、巨大な水準に達する」と懸念し、富裕層や巨大企業への課税強化が不可欠だと訴えた。
東京新聞 12/27付
巨大企業への富の集中
米国IT企業5社の株式時価総額は8.6兆ドル(約961兆円)グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト
日本企業のトップ、トヨタ自動車の時価総額が32.6兆円と比較すればその大きさがわかります。
このような富の集中と貧困の拡大は日本においても安倍政権以降急速に進んできました。
アベノミクスによる異次元金融緩和と財政出動による調整インフレ政策の失敗が物語っています。結果、消費者物価指数は0.0%、GDP目標比▲約11%。
国家財政による異常なまでの株式投資政策によって株価は上がり、一部の富裕層や大企業、海外投資家だけがその恩恵を受けました。まさに実体経済とは全くかけ離れた経済政策(マネーゲーム)によって格差と貧困を拡大させることになりました。
同時に国の税政策においても法人税減税と大企業優遇税制、その穴埋めに2度にわたる消費税増税が続きました。
このような無策によって「動かぬ実体経済」が浮き彫りになりました。
このことは私たち勤労者世帯の所得と家計消費支出をみれば明らかです。
講演会資料
■勤労者世帯所得:2010年43.0万円、12年42.5万円、19年47.7万円、20年47.1万円 (ピーク97年49.7万円)
■家計消費支出 :2010年29.0万円、12年28.6万円、19年29.3万円、20年27.8万円 (ピーク93年33.5万円)
大企業を中心に内部留保は9年連続で過去最高を示し20年度末で484兆円にのぼったそうです。
一方で、勤労者の所得は横ばい、家計消費は減少傾向にあります。
国の経済指標となる国内総生産(GDP)の6割を占めるのが家計消費です。
経済成長を維持していくためには消費を活性化することが最も重要なことですが、その消費が長期に渡って低迷しています。
先進国の勤労者所得はここ数年2ケタの伸びを示していますが、日本だけが伸びていません。この結果、消費に回るお金が足りず、又、将来への不安もあることから消費活動が低迷しています。
昨年の特別定額給付金10万円支給が、「貯蓄に回って消費活性化につながっていない」と言って失敗だったと話していた政治家、官僚、経済評論家がいました。
国民の生活実態、雇用状況(非正規の拡大)など具体的な現実を把握しようとせず、単なる机上論で話をしているのに呆れました。
所得が伸びなければ当然消費は落ち込みます。
一部の富裕層や大企業だけが有利に展開される経済政策(新自由主義)と税政策によって、格差と貧困が広がっている現実があるからです。
講演会資料
講演の中で「日本における産業間の就業者移動と所得の劣化問題」を指摘していました。
2020年の雇用者5963万人中、非正規雇用(パート、アルバイト、派遣、契約社員)は2090万人で全雇用者の35%。その内、年収200万円未満の「ワーキングプア」は、1506万人で非正規雇用者の72.1%を占める。
200万円未満の収入で働く人は雇用者全体の31.1%にあたる1854万人にのぼる。
こうした非正規の人たちの多くが就業している業種は、主に医療福祉業、宿泊・飲食・小売りサービス業、運輸・郵便業に際立って高まっています。
今回のコロナ禍で私たちの生活維持に直接関わっていた業種の人たちでしたから、何とも言えない気持ちになります。
私たちシニア世代(60~70代)にとっては、自分たちが働いてきた時代と比較してこれほどまでに変わってきてしまった現実に驚きというより、恐怖さえ感じるものがあります。
若い時は非正規雇用で何とか働いて食いつないでいくエネルギーがあっても、彼らが高齢世代になった時にはどうなるんだろうと想像するだけでも恐ろしいです。
「困窮相談 コロナ前の2.5倍 (全国30万件 21年度上半期)」 東京新聞 12/26付
”女性や非正規の苦境続く” の見出し
2021年の世界、国内情勢はコロナに始まりコロナで終わろうとしています。
この間の状況をみる限り、私たちの生活は ”政治との関わり” というものを強く感じる年だったと思います。
先の総選挙では、既存政権に対する批判票が多数あったとしても、結果としては今までと変わらない政治が行われようとしています。
多分、これからも「何かがおかしい」という思いや疑問は続くと思います。それは「批判」として声を上げることもあるでしょう。でなければ何も変わらないと思うからです。
「所得と分配」「税の使い方」、これらを見直すことで新たな道が開けてくると思います。
今年もこのブログに多くの読者の皆さんが訪れてくれました。時にはコメントをいただき大変嬉しく思っています。
ブログ開設以来8年経ちました。
当初は登山・山歩き、そして夫婦くるま旅を中心にアップしてきましたが、その後は「退職後の暮らし、生き方」を中心に様々なジャンルの話題について広げてきました。
これからも引き続きアップしていきたいと思っています。
ありがとうございました。
よいお年をお迎えください。
今年もあと2時間30分で終わろうとしています。
コロナ+変異型株が収まらないままですが、来年は良い年となると良いです
ね。
スーさんのブログは様々な話題を提供してくださって新たに振り返りができ
ます。
そして何よりも人生後半を楽しんでいらっしゃるようで何よりです。そこに
はやはり人とのつながりを感じます。
私も緩い人間関係を大切にしたいと思っています。
明日はホーチミン出身の若者を招いて日本のお正月を一緒に祝う予定です。
海外に出て、ローカルの人たちから受けた親切は本当にありがたかったで
す。その人たちに御恩を返せませんがささやかな国際交流を末永く
続けて行けたらと思っています。
どうぞ。お体に気を付けて良いお年をお迎えください。
ありがとうございました。
Roseさん
毎回たくさんのコメントありがとうございました。
Roseさんの温かなコメントにいつも元気をいただいていました。
>緩い人間関係を大切に
この年になると、人との付き合いや出会いを一つ一つ大切にしていきたい気持ちになりますね。
そういう意味では、焦らずじっくり長い目で「緩い人間関係」を繋げていく大事さがいいのではないかと私も思っています。
海外赴任経験のあるRoseさんにとって、今でも継続して国際交流の場があることは素晴らしいですね。国や人種を越えて様々な人たちとの出会いと交流は、何か気持ちの上でも豊かになるように思います。
ぜひ末永く続けてください。
年明けの返信になりましたので、改めて今年もよろしくお願いします。
ご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
すーさんの意見に全く全く同感です。あまりに同感で次の言葉がありません。
今日、「肉屋を応援する豚」という言葉を聞きました。
私は何十年も前から「自分の首を絞めているの気が付かず、さらに他人の首まで絞めている」と
言い続けているのですが、人間て余りにも虐げられた状況に陥ると今の自分の存在を正当化しな
いとバランスが取れなくなるのでしょうか。だから自分を支配者側にいるんだと思い込み、なり
きろうとし、それを実社会で具体化するのですかね。選挙結果からもそれが見えるような気がし
ます。そういうひとほど自民党に投票しているのでしょう。今回は維新へも。
これも元は違う意味でしょうけど、「衣食足りて礼節を知る。」今日、明日、明後日のことが目
いっぱいの人たちに来年のことを考えてと言うほうが無理を言っていることになるのでしょう。
槌が崎さん
昨年はいろいろな場面でのコメントありがとうございました。
今年もよろしくお願いいたします。
>「肉屋を応援する豚」
初めて聞く言葉でしたので調べてみました。なるほど、そういうことかと知りました。
政治に対しての考えや行動、又、個人の仕事上(会社組織)などでもよくありますね。
やはり、「その実態を知らない」「知ろうとしない」ことからそうした行動をとるのでしょうか。
例えば、自分が体制側につくことが「正義だという錯覚」を生み出し、自分自身に安心感をもたらすものなのかなと感じます。
結果、槌が崎さんがおっしゃるように「自分の首を絞めているのに気づかず・・・」ということになるのでしょう。
昨年に続き今年も変わらない政権による政治が行われようとしています。
こうした政治では様々な事柄について利害関係や忖度がはびこり、あらぬところにいきやすいです。だからこそ「その本質」というものをできるだけ明らかにしていきたいですね。
”自分がどのような立場に立つか” その軸をぶらさなければ、ハッキリした考えと行動がとれるのではないかと思います。
コメントありがとうございました。