山仲間6人と北アルプスへ
標高差1281mのブナ立尾根!
我々山岳倶楽部「3776会」の夏山は、毎年北アルプス登山が恒例になっています。
2013年立山、2014年燕岳~常念岳(表銀座縦走)、2015年奥穂高岳、2016年白馬岳、2017年槍ヶ岳、2018年白馬三山縦走、2019年黒部五郎岳、2019年雲ノ平(コロナ禍で中止)
そして今年は、再度北アルプス最深部の雲ノ平を目指した3泊4日の縦走登山を計画しました。
例年7月下旬は梅雨明け後好天に恵まれる期間として天気が安定しているはずだったのですが・・・。
なんと、出発当日になって太平洋上に台風8号が発生! 台風の進路は日本列島の中部・関東・東北地方を直撃する予報でした。
まだ天気が崩れていない初日、2日目はなんとか天候に恵まれたものの、その後の行程では台風の真っただ中になることが予測されたため下山しました。
山の天気というのは、下界に比べその変化が著しいです。
特に北アルプス高山の稜線上の地形は風雨を防ぐ場所がありません。一旦、雨雲の中に入ったら風速10~20mの突風は避けられません。ましてや最深部ということからエスケープルートがほとんどない状況です。
2年越しの雲ノ平を諦めることになりましたが、日本二百名山の烏帽子岳を登頂し、更に裏銀座パノラマルートの一部と高山植物を満喫できた山旅でした。
北アルプス三大急登!
山の世界では「日本三大急登」というものがあります。
これは一般的に、甲斐駒ケ岳の黒戸尾根、谷川岳の西黒尾根、烏帽子岳のブナ立尾根と言われています。
又、「北アルプス三大急登」は、剱岳の早月尾根、燕岳の合戦尾根、そして烏帽子岳のブナ立尾根です。
この二つの三大急登に「ブナ立尾根」が入っています。今回その急登にチャレンジしてきました。
私は今まで甲斐駒ケ岳の黒戸尾根を除き全ての急登を経験してきましたが、今回のブナ立尾根が最も厳しかったという印象です。
グラフ:ヤマレコ資料より
ブナ立尾根
地図上の平面図では約5kmの距離ですが、等高線が細かい急登になっているのがわかります。
ちょうど私たちが登った時、なんとNHKBSで「田中陽希のグレートトラバース2」の烏帽子岳が放送されていました。
鳥瞰図で見るとブナ立尾根の険しさがわかります。(NHKBS放送画面)
烏帽子岳、裏銀座ルートの登山口となる高瀬ダム
我々登山パーティ6人は、前日北アルプス玄関口の信濃大町のホテルに宿泊。翌朝タクシーで高瀬ダムへ。
途中タクシーの中では運転手さんが山の情報に限らず地元の様々なお話を聞かせてくれました。こうした地元の人とのコミュニケーションは貴重なものですね。
早朝6時過ぎ吊り橋を渡って登山開始。
いよいよブナ立尾根の出発点。
標識の上に「12」の番号札が貼ってありました。この地点から高度100mごとに札番号が減っていきます。
12~0までの番号ですから ”1200m登る” ということですね。
平均斜度23度の上り坂が延々と続き、番号札がある地点ごとで小休止。
登りはじめてから高度100mごとの時間は15~18分、その後20~25分の時間がかかりました。それだけ疲労が蓄積して、更に斜度が厳しくなってきたということですね。
登山服は汗でびっしょり、帽子のつばからは汗の水滴がポタポタ、メガネは体温の蒸気で曇り始める・・・。
やっぱり日本一の急登なんですかね(笑)
ブナ立てと言われるように、登山道周辺にはブナの木、ダケカンバやしらびそが林立していました。
まさに北アルプスの樹林帯の雰囲気です。
標高が上がってくると視界が広がりました。
目の前に不動岳(2601m)、更にその奥に黒部湖が見えました。
登山道沿いに咲く高山植物
登山倶楽部の写真撮影上手な仲間の一人が撮ってくれました。スマホでこれだけきれいに撮ることができるなんてプロ並みですね。今回のブログでは、仲間が撮ってくれた花画像を掲載していきます。
烏帽子小屋着
登山口から約6時間の行程でした。参考ルートタイム5時間20分ですから休憩を入れてまずまずの所要時間でした。
小屋の前には一面イワギキョウの群生が出迎えてくれました。この高山植物は一般的に点在して咲いていますが、これだけの群生を見るのははじめてでした。
小屋周辺に咲く高山植物
イワギキョウ、ミヤマキンポウゲ、クルマユリ
小屋の前から望む赤牛岳(二百名山2864m)、奥にゆったりとした薬師岳(百名山2926m)
今夜の宿泊地烏帽子小屋にザックをデポして軽装で烏帽子岳へ
小屋からは「ニセ烏帽子岳」が見えました。烏帽子岳はその奥に鎮座しているそうです。
それにしても「ニセ」という言い方は可哀そうな気がします。せめて「前」とか「小」とか命名してもいいんじゃないですかね~。
話はちょっとズレますが、南アルプスに「間ノ岳」(あいのだけ)という日本第三位の標高をもつ名峰があります。
昔から北岳・間ノ岳・農鳥岳を総称して白根三山と呼ばれています。間ノ岳の名前は、北岳と農鳥岳の「間」にあることからこの名称が付いたと言われています。
日本第三峰の名峰を ”間にあるから間ノ岳?” あまりにも軽々しい名称ではありませんか?!
もっと重厚でカッコイイ名前を付けてあげたいですね。
コマクサ
「高山植物の女王」と呼ばれ、分布地が少なく貴重な種です。これだけの群生を見るのははじめてでした。
烏帽子岳
花崗岩の白砂とハイマツの緑のコントラストが美しい日本二百名山です。
キリッと立つ烏帽子型のオベリスクなんですね!
仲間たち全員が息をのみ、しばらくの間見惚れてしまう一瞬でした。
烏帽子岳は、北アルプス裏銀座縦走の起点となる山。烏帽子岳と名前の付く山は日本に約70座あり、その最高峰がこの烏帽子岳。
「日本アルプスルートガイド」サイトより
烏帽子岳頂上2628m
頂上直下から花崗岩のクサリ場を一人づつ登る険しい岩峰でした。このため上り下りは一方通行となり、次の登山者たちは下で待つことになります。
この時も我々の後に来たパーティが待機する状態でした。
この地から南に向かって北アルプス裏銀座コースが始まります。
明日の天候を願い烏帽子岳を後にしました。
「烏帽子岳(後編)」につづく