コロナ禍の格差拡大

利益は一極集中化!

3つの資本主義が渦を巻く時代?

 

私が30代半ばの30年ほど前、一億総中流と言われる時代がありました。
ちょうどその頃がバブル景気という時代でした。

そして30年後の今、社会経済は大きく変化してきています。
こうした時代で働き、社会を見続けてきたわけですが、たった30年の間にこれほどまでに変わってしまうとは思ってもみなかったことです。

今まではモノを作り、モノを流通させ、そしてモノを販売する過程の中で利潤を生み市場が潤う社会構造がありました。それはまさに ”市場にお金が回る” という時代でしたが・・・。
それが今では金融の流れだけで経済が動くしくみ、そしてITの進行によって更にそれが拡大していく社会になりつつあります。

こうした社会構造が変化する中でコロナ危機が起こりました。
この危機がいったい何を炙り出したのか? それは「格差と貧困」ではないでしょうか。

今年に入って厚生労働省の資料によれば、コロナの影響に伴う「解雇・雇止め」は、1/8時点で累計約8万人に上り、このうち非正規が約半数を占めるそうです。
昨年11月の総務省の労働力調査によると、アルバイトやパートなどの非正規雇用で働く人は2124万人で、コロナ禍の中ではこの数は減少傾向にあるそうです。それは、「解雇・雇止め」が非正規雇用者に集中していることを物語ります。
そしてその中身は、女性への影響が深刻とされ、DVも含め社会的弱者への追い打ちとして浮き彫りになってきたのではないでしょうか。

 

こうした状況の中、今年に入って日経平均株価はバブル崩壊後29年ぶりに高値をつけました。
えっ!なぜこの不況下で株高なの?、日本の成長率(GDP)は戦後最大のマイナス5.27%なのに?

世界株高の背景は、各国中央銀行の金融緩和に加え、コロナ禍対策として各国政府が12兆ドル(約1200兆円)を超える大規模な財政支出を行い、中央銀行も金融緩和政策の深堀りを繰り返してきたことです。
供給された公的マネーは、国民生活や経済崩壊を防ぐために貢献する一方、公的マネーに支えられた企業は倒産せず株価も安定するので、利益を求める世界中のマネーが各国の株式に買い向かい、不況下の株高をもたらした。
山田博文氏(群馬大学名誉教授)

こうしたことは、以前ブログで発信したように日銀やGPIF(年金積立金運用管理法人)による異常なまでの株式投資で株高を演出してきた政府の政策があります。

ブログ:「常温社会」

 

1/17日のTV番組(TOKYO MX1)で寺島実郎氏の「世界を知る力」と題する放送がありました。
以前ブログでも寺島氏の講演を紹介したことがありますが、TVでも定期的に放映されています。

今回の放送では戦後日本の社会経済の変化についてのお話がありました。
バブル以降の経済の変化とコロナ禍が炙り出した社会の現状についてでした。

 

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寺島実郎氏(多摩大学学長)のTV講義 「世界を知る力」

IT社会が進行する中、様々な情報が飛び交い何が本当のことなのか?、何が真実なのか?を知ることが大事なことではないでしょうか。そして、そのことからどう考えていくか・・・。

 

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「3つの資本主義」?

冒頭でお話したようにたった30年の間に社会経済は大きく変化してきました。
それは、モノづくりから始まりその製品の流通と拡大から市場経済が成り立ってきました。それはまさに「産業資本主義」といわれる社会でした。
それが今度は「金融資本主義」、そして「デジタル資本主義」という3つの資本主義が渦を巻くような時代になってきたと寺島氏は指摘しています。

「デジタル資本主義」はGAFAMに代表されるように、グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン・マイクロソフトといったデータリズム台頭の社会です。

今までのように市場にお金が回るということは、働く人たち(サラリーマン・パート・中小個人経営者など)の所得が増えて、モノ・サービスの売買が活発化されることで利潤を生みだし、利益分配の循環が図られてきたわけですが・・・。
しかし、今では市場にお金が回らず異次元金融緩和や株式重視政策の下、金融市場だけにお金が回ることで一部の資産家や投資家、大手金融機関だけが利益を増大させる社会になってきました。

そして、社会経済のデータを掌握できるGAFAMなどのIT産業に利益が一極集中する時代へと。

 

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このような社会状況の中、寺島氏は「今日本はどれだけ貧困化というものが進行しているか」という問題を提起されていました。

それは図表にあるように、

高齢者(70歳以上)の金融資産は、100万円未満or非保有が31.5%、3000万円以上が11.1%という実態から、高齢者は大きく2極分化していること。高齢者の3割が貧困であることを指摘しています。
又、雇用者=現役世代(約6千万人)のなんと32.1%が年収200万円未満というのですから驚きです。

そして、「下層」といわれる年収400万円未満の世帯が5割にも達している状況を指摘して、

コロナが起こって下層の人たちは、額に汗して現場を支えています。
エッセンシャルワーカーズと言われるロジスティック(原料の手当てから販売までの物流)とか、スーパーやコンビニ、小売店で働く人たち、更には、医療従事者や介護にたずさわる人たちなど社会を支える必要不可欠な仕事に従事する方々が、この「下層」にあたります。
そして「中間層」がテレワーク、「上層」と言われる人たちは皮肉にも家にこもってマネーゲーム、株の運用に精を出している。
ピットコインがこのコロナの間に3倍にも跳ね上がっている事実を真剣に考えなければいけない。
金融の肥大化という不条理として「格差と貧困」というものがあるんだということを明らかにしなければならない。

 

無為無策な施政方針演説

 

1/18日、コロナ感染が拡大する真っただ中、通常国会が開催され菅首相の施政方針演説が行われました。
多くの国民の皆さんは、TV中継や新聞、ニュースなどで聞き及んだと思います。

この演説というものは、その年の政府の基本方針を明らかにするものです。
特に今年は、国をあげて新型コロナウィルス感染対策に全力を尽くすための具体的で実行力のある施策が発せられると注目しましたが、残念ながら全く無為無策の演説でした。

新型コロナから「国民の命と健康を守り抜く」という言葉だけでした
本来であれば、無症状感染者の発見、保護のためのPCR検査の拡充、医療機関全体への減収補てん、又、持続化給付金や家賃支援給付金の支給などが最も有効的な対策であるはずですが・・・。
そんな施策は全くなく、コロナ収束を前提にした「Go To トラベル」の延長に1兆円の予算を積むという呆れた補正予算を組んでいます。

そして、更に呆れることに、新型コロナ対応の特別措置法の改定で「罰則規定」を盛り込むことを表明しました。

緊急事態宣言の対象区域で、事業者が休業や営業時間短縮の命令に応じなかった場合に行政罰の50万円以下の過料を設ける。感染者が入院を拒んだ場合には刑事罰の罰則を科す。
1/19付 朝日新聞

 

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菅首相の施政方針演説を報じる各紙

 
今の世界と日本の状況は、3つの資本主義が渦巻く社会ということを学習しました。
そして、昨年から続くコロナ禍が、今まで水面下で進行していた「格差と貧困」を炙り出しました。
今回の施政方針演説では、本当に「国民の命と健康を守り抜く」という言葉とは裏腹に、自分たちの政策を棚に上げ「自己責任」と弱者に追い打ちをかけるものでした。

それはコロナ対策以外においても、1兆円をかけたデジタル庁の始動、後期高齢者の医療費窓口2割負担、戦後最大の防衛費(軍事費)、原子力発電は温存したまま石炭火力発電の新増設を進める内容でした。
更には、「桜を見る会」問題や元農水相の収賄事件、日本学術会議への人事介入に蓋をして一言の言及もありませんでした。政治モラルも地に落ちたという感です。

本当に必要なところに財政出動を図り、「国民の命と健康を守り抜く」ことが今の政治に求められていますが、こうした政府の下では「格差と貧困」が拡大していくだけではないでしょうか。

2 thoughts on “コロナ禍の格差拡大

  1.  ブログの内容については本当にそのおりだと思います。
     これだけ分かりやすく書くのはとても大変なことだと思います。
     いま、今日明日の生活が大変な人の多くが今の政府を支持しているという状況にあるらしいこ
    とを聞いて、一番虐げられている人たちがなぜ自分の首を絞めるようなことをするのかと疑問で
    した。冷静に考えてみればそういう人たちは生活にゆとりも持てず冷静さを持って現状を考える
    ことなどできない状態であろうということで、今以上に悪くならなければ良いと考えるのではな
    いでしょうか。
     ですから、今少しでも生活に余裕のある人たちが考えられる力があるうちに明日は我が身だと
    考え、半年後一年後を想像してほしいと思います。
     今は内閣の不支持率が上昇していますが、これが大きなエネルギーになり、社会の変革につな
    がらないようだと、今までの例のように一過性の現象で終わるような気もします。
     本当に今の危機にみんなが少しでも関心を持つことができなければ、このブログのテーマでも
    ある「格差と貧困」がこれから更にさらに拡大をし、この社会が崩壊してしまう危険に直面して
    いるのではないでしょうか。

  2. 槌が崎さん

    貴重なご意見ありがとうございます。

    >一番虐げられている人たちがなぜ自分の首を絞めるようなことをするのか

    私も同感です。
    このことは非常に難しい問題のようで私もその点はよくわかりません。
    槌が崎さんがおっしゃるように不満はあるものの「今以上に悪くならなければ」という楽観的な思いがあるのでしょうか。
    又、こうした事態に直面していても、”政治のあり方や転換(交代)に直接結びつかない” のかと思ってしまいます。

    その他、よく言われることとして「野党がだらしない」という声も聞かれます。
    しかし、よくよく精査してみるとそのようなことはありません。必ず代案を持ち動議も提出していることからも明らかです。ただ、数の力で退けられているのが実態です。

    私たちの日常の生活は、政治と大きく結びついています。
    それは国政に関わらず市政、県政も同じです。今、地域の自治会グループの中で市政の地域問題についての勉強会に参加しています。
    下水道、河川、道路補修から健康保険料や税制まで多岐にわたっていますが、こうした問題一つとっても自分たちの生活に直接関係しているんだな~と強く感じます。

    市民の意識は非常に高いと感じていますが、こうした意識を槌が崎さんがおっしゃるように「大きなエネルギー」に結びついていったらと思います。

    コメントありがとうございました。

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