「年金制度改定法案の可決」に思うこと
年金受給繰り下げに疑問?
現在、日本人の平均寿命は女性で87歳、男性で81歳だそうです。
では平均余命はどうでしょうか。
これは、現在の自身の年齢からみた寿命があとどのくらいか?という目安です。
図表:「シニアガイド」HP、「寿命と病気の統計」HPより転用
医療の発達から平均寿命は延び続けています。
一方、少子高齢化により年金、医療、介護費用の増大から社会保障財源が課題として浮上してきています。
こうした状況の中、高齢者の働き方やその労働環境の整備に向けて、現在国会では高齢者雇用安定法(高年法)と在職老齢年金制度の見直しが図られていました。
また同時に「年金制度改定案」が国会で審議され可決されました。
この改定案ではいくつかの制度見直しがありますが、中でも「繰り下げ受給」に注目しました。
現在の制度では、70歳までの繰り下げ受給が可能ですが、これが更に5年延びて75歳から受給できる制度に改定されるようです。
受給を遅らせることで受給率アップにつながるメリットはありますが・・・。
以前のブログ「2018/10月繰り下げ受給」でも触れました。
今回の75歳年金繰り下げによる受給は、通常の65歳受給に比べ84%アップというのが触れ込みです。
アップ率だけを見る限り約2倍近い年金額ですから大きな魅力があります。
しかし、ここで考えなくはいけないのが冒頭で述べた私たちの平均余命です。そして年金受給総額です。
現在70歳までの繰り下げ受給が可能ですが、実際に利用している人は
■老齢基礎年金:1.4%
■老齢厚生年金:1.1~1.2%
なぜこれだけ利用者が少ないのか?
それは、年金と働いて得た収入で生活がやっとの現実、平均寿命が延びているといってもいつ死ぬかわからない、健康な時だからこそお金が必要であること・・・などからだと思います。
これが現実です。
だからこそ利用率は極端に低いのではないでしょうか。
65歳からの年金総額を上回るのが90歳!?
同法案は年金の受け取り開始を75歳に遅らせると、月額で84%増になるとしています。
問題はこの84%増だけが独り歩きしていることです。
75歳から受給した場合、受給総額で65歳から受給していた年金額を上回るのがなんと90歳のようです。
冒頭で述べた平均余命を考えた時、75歳の平均余命は男性で12年ですから87歳です。
つまり、84%増だといっても実際に受け取るそれまでの年金総額を下回ることになります。
もちろん、あくまで平均からみたもので個人によって実際は異なるものですが、判断の目安になります。
84%増額されてもなぜこのようになるのでしょうか?
それは、75歳に遅らせると住民税、所得税、国民健康・後期高齢者医療保険料などの税負担が大きくなり、84%増といっても実際の受取額が抑えられ可処分所得が減ることからだそうです。
(国会答弁:厚生労働省 年金局長)
問題は、今回の改定案で厚生労働省はこの点についてハッキリ明言していないことです。
そして、年金を減額(マクロ経済スライド)し、少しでも支給を遅らせることで社会保障費の原資を抑えていく狙いがあることです。
以前何度もブログで述べてきましたが、社会保障費は歳入全体から対応する考えと歳出の見直しをすれば、その財源は十分確保できます。
そうした見直しをしないで手っ取り早く財源確保を図るために、”社会保障給付を名目に消費税増税を強行” してきた経緯があります。
消費税増税は、社会保障財源確保を名目にすることで国民の目を逸らすためのものでした。
年金受給の考え方は個人によって様々だと思います。
富裕層の人でしたら年金に頼らず生活できるので、こうした制度を利用する方もいるでしょう。
自分が死んだ後、遺族年金として配偶者に支払われるのでそれで善しとする人もいるでしょう。
しかし、現実は年金を頼りにして生活している人が大半です。
60歳、65歳定年を迎えてもまだまだ働ける、生きがいを持つことができる、そして同時に年金と合わせて生活費をより安定的にしていくことができるからでしょう。
そして、そのことはまだ元気なうちだからこそいろいろな面でお金が必要だからだと思います。
健康で働く機会が増えたといっても65歳を超えればそれほど長い期間ではないと思います。
であるなら、支給開始年齢に達すれば受給するする人が大半であることはごく当たり前のことではないでしょうか。
それは、実際の受給率を見ても明白です。
とは言っても、年金繰り下げ受給の判断は人それぞれだと思います。
その判断する材料として、まずは最低限、税金や保険料が大きく増えることがある事実を、国民に例示すべきではないでしょうか。
政府や官僚の皆さん
コロナ感染拡大の緊急事態の中、なぜ今改定案の国会審議なんですか?
この改定案に税金と労力をかけて立案する作業を、もっと国民にとって有益な作業に置き換えたらいかがでしょうか。
社会保障財源確保やその抑制をするために、安易に消費税増税をしたり、このような法案を立案したり・・・、そんなことをしないでも税制や歳出の見直しをすれば十分対応できるはずです。
その方がよっぽど国民のためになる政治・行政ができると思います。
今やるべきことは、コロナ危機対策のために医療・介護現場や企業・個人事業主への休業補償に向けた財政支援ではないでしょうか。
すーさんのご意見を拝見しておりますが、いつもながらよくお勉強されて
いるなと感心します。
私も厚生年金部分は、63歳から受給を選択しました。
まあ、父が年金受給前の50代で死亡したことと会社のOBさんたちの
寿命が結構短い(特に管理職経験者)を見て、繰り下げは検討しません
でした。
年金の受給は、1)先に企業・個人年金+厚生年金をもらい、80歳以降は
貯蓄の切り崩しを行う方法。2)極力年金繰り下げを行い、貯蓄+勤労で
70歳前後まで生活し、その後、年金生活をする方法。の2つがありますが、
私は前者を選択しました。
周りをみると男性の場合、80歳も過ぎると結構、亡くなっており、平均
寿命は特定の長生きする方が、平均値を上げているのかなと思います。
そうなると夫婦で人生を楽しめる時間は短く、その意味での年金選択でした。
政府の考えていることは、とにかく年金受給総額を抑えたいとしか、見れ
ませんね。
それなら、正直に言ってもらって、財源論議や個人負担論議をすればよいと
思います。
いつもながらのすり替え論議が、見えてきます。
企業の場合、決算書があり、株主もいますので、正面から正直に取り組む
ことが正論ですが、政治の政界は、どうも違うようで、困ったものです。
米国ではありませんが、自己防衛するしかないのかもしれませんね。
あらちゃんさん
個人によって年金の受け取り方はそれぞれだと思いますが・・・、
>夫婦で人生を楽しめる時間は短く、その意味での年金選択でした。
私も同じ考えでした。
この歳で思うことは、元気で過ごせる時間というものは意外と短いものです。
それは親や義父母、更には周りをみてもそう感じるものがあります。
であるなら、年金は健康でいられる時に必要であり使いたいと思っています。
将来への不安はあるものの寝たきりになってしまったら使う道は限られてくるでしょう。
今の政治や社会のことを考えると自己防衛も致し方ないと思うものがありますが・・・。
そうならないためにも政治がしっかり機能してもらうことを願うばかりです。
社会保障制度というものが本来どうあるべきか、ということを議論してその道筋をはっきりつけてほしいものです。
今の社会が自己責任論的な ”働いて補え” というような考えや風潮はなくすべきだと思います。
それは政治の在り方ひとつで十分できると信じています。
コメントありがとうございました。
年金は保険のようなモノで「元が取れる」云々は違和感あります。
過度な自己責任論も違います。
国民年金も掛けてなく、子供にも頼らず生活保護も受けず(持ち家がある
為)一人暮らしのシニアを知ってます、明るい人なので悲壮感はないです。
年金制度、生活保護制度を止めて、もっと満遍なく働かない(何かやってる
けれど金になんない人)働けない人にいきわたるようにすべきです。
シニアの特権を奪えとも考えてないですよ。
選挙制度でシニアはマジョリティなので、わたしの希望は実現しないでしょ
うが・・・
政治を変えるなら、最低の生活は出来るように年齢関係なく保障して欲しい
し、それが出来たら安心して色々な事にチャレンジする人(年齢関係なく)
増えると思いますよ。
余談です、年金を株に突っ込んでますよね、不景気が続くと塩漬けしか手が
ないが、どうするのでしょうかね???他人様のお金を扱う事に危機感なさ
すぎです。年金は損切も出来ないでしょうし・・・
「楽しみ」を自分で探すというか?能動的に生きられる人は少ないですね。
不安だから働くのではなく、やりたい事を見つける手間を取りたくない人や
どうやって心の声を聞けばいいか分からないは多いです。
将来の不安を煽って「自己責任」と切り捨てる風潮に危険なモノを感じま
す、それは自分が得をすれば他の人はどうでもいい、という残酷な無関心に
繋がる、危険な事です。
コロナ、早く収束しないと足が弱りそう( ;∀;)
ヒロさん
>将来の不安を煽って「自己責任」と切り捨てる風潮に危険なモノを感じます・・・。
同感です。
自分さえよければという考えや風潮は良くないことですよね。
どんな人でも生きるということは尊いものです。社会が支え合って成り立つことは大事なことだと思います。
>政治を変えるなら、最低の生活はできるように・・・安心していろいろなことにチャレンジする人が増える
私もそう思います。
私たちの生活は政治と深く結びついています。なぜなら私たちが生きていく上で様々な税金を払い国家を支えているからです。
国は国民の生活を守り、安心して過ごせるようにすることが一番の役割です。
そのことに照らし合わせた時、今の政治が果たして私たちが望む政策や法案ができているか?
そのことをしっかり検証しなければならないと思います。
誤った方向に向かうのであれば、ハッキリと「ノー」の意見や考えを出すべきだと思います。
そうした意見や行動がなければ、権力を持った一部の人や組織の思うがままになり、あらゆる利権が集中してしまう恐れがあります。
憲法さえも「解釈」によって自分の思うがままに変えられることが現実に起こっています。
憲法に合わせて政権の都合を抑制するのではなく、反対に政権の都合に合わせて憲法の意味を自在に「解釈」する政治が行われています。
私たちが何も言わないのであれば、”国民のための社会” が崩壊していくでしょう。
そうならないためにも私たちは政治というものにしっかり向き合っていくことが大事だと思います。
貴重なご意見、コメントありがとうございました。