黒部五郎岳 後編

スプーンでえぐり取ったようなカール

ずしりと座す、巨大な山体!

 

肩から圏谷の底へ下る道には、真夏でもまだ若干の雪が残っている。
底から見上げたカールは実に立派である。三方を岩尾根に包まれて、青天井の大伽藍(だいがらん)の中に入ったようである。
すばらしい景色はどこにでもあるが、ここは他に類例のないすばらしさである。
圏谷の底という感じをこれほど強烈に与える場所はほかにない。
深田久弥著「日本百名山:黒部五郎岳」より

 

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黒部五郎岳の特徴は山頂部の巨大なカール

 

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岩尾根の残雪

 

 

いよいよ圏谷の底から岩尾根へ

 

早朝4時30分、まだ薄暗い視界の中ヘッドライトを付けて黒部五郎小舎を出発。
当初の予定では、往路はカールを登り、復路は尾根(主稜線)づたいに下山する計画でした。
しかし、前日に小舎の管理人さんに確認したところ、尾根にはまだ多くの残雪があり危険ということでした。
そんな現地の貴重なアドバイスを受け、急きょ予定を変更してカール往復に切り替えました。

 

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振り返ると、まだ朝日が出る前の山並みのシルエットが浮かんでいました。
昨日縦走してきた双六岳、丸山、三俣蓮華岳の稜線がくっきり見えます。

前方のカールは薄っすらと赤く染まり始めました。

 

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黒部五郎岳の頂上から徐々に朝日に照らされてきたモルゲンロート。

 

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ワリモ岳(鷲羽岳と水晶岳の中間)からの朝日。
私たちは振り返ってご来光の瞬間を撮影。今日は天気が良さそうです!

 

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朝日を浴びて一気に黒部五郎岳の姿が露わになりました。

 

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カールの底は大きな岩がゴロゴロ。
この岩を縫うように登山道が続いています。

黒部五郎岳は人名ではない。山中の岩場のことをゴーロという。
五郎はゴーロの宛字(あてじ)で、それが黒部川の源流近くにあることから、黒部のゴーロ、すなわち黒部五郎岳となったのである。
北アルプスには、ほかに野口五郎岳がある。二つのゴーロの山を区別するため、黒部と野口を上に冠したのである。
深田久弥著「日本百名山」より

 

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登山道は、カールの底から草つきの斜面をジグザグに登って頂稜に出る道順でした。
斜面に張り付くようにコバイケイソウが群生していました。

 

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頂稜(鞍部)から望むカール。
ここに立つと裏側の山並みが見えました。富山県側の太郎平からの北ノ俣岳の稜線。

 

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遠方から見てきた黒部五郎岳の姿は一変し、岩の塊といった山なんですね。

 

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前方には黒部五郎岳の主稜線と頂上が見えました。

 

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黒部五郎岳頂上2840m

これで北アルプスの日本百名山15座登頂できました。累計で90座目の登頂です。

 

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頂上からの見る北アルプス。槍・穂高連峰と笠ヶ岳。

 

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登ってきたカールの登山道を下山。途中、ライチョウを発見! ラッキーでした。

 

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帰路の途中、振り返って見た黒部五郎岳

 

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黒部乗越付近から望む北アルプスの秘境 ”雲ノ平”

雲ノ平は、薬師岳、黒部五郎岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳、水晶岳など北アルプス最奥部の名峰に囲まれた台地です。
岳人たちが一度は訪れてみたいと声を揃えて言う秘境中の秘境です。

ここで私たち登山倶楽部(3776会)の団長が、
「いつもどこの山に行こうかと手探りのように決めているが、やはり現場で決めることが最適だね。よし!来年は目の前に見えるあの雲ノ平に行こう!」
この一言で、来年の夏山は決まりました。

会のメンバーが北アルプスの絶景に魅了され、気持ちも高揚している中で ”あの場所に行きたい、あの山に登りたい” という強い思いこそが大事なことで、次の登山への期待と憧れが生まれてくるものなんですね。

 

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下山途中、双六岳中道のお花畑の中にあるテラス?を発見。

 

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中道のお花畑 チングルマやコイワカガミが。

 

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ここでゆっくり山カフェ! 至極のひとときです。

 

 

最終日、双六山荘から新穂高温泉へ下山

 

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登山4日目
双六山荘から見る日の出と朝日に照らし出された笠ヶ岳

 

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弓折岳稜線からの槍・穂高連峰

 

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昨日登ってきた黒部五郎岳の雄姿をもう一度振り返って望む仲間たち。

 

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弓折岳稜線からの黒部五郎岳

 

確かに、世にもてはやされている北アルプスの他の山々に比べて、その独自性において少しも遜色のないこの見事な山が、多くの人に見落とされている。しかし、それでいい。この強烈な個性が世に認められるまでには、まだ年月を必要としよう。
黒部五郎岳が To the happy few  の山であることは、ますます私には好ましい。
深田久弥著「日本百名山」より

日本百名山の本が出て半世紀以上経ちます。
その間多くの登山者が、この黒部五郎岳を目指して黒部源流最深部へ足を踏み込んできたと思います。
そして、そうした年月を経て今や ”世に認められた名峰” ではないかと。

一方、様々なスタイルで現在登山ブームが巻き起こっている中、この黒部五郎岳は百名山を目指す限られた登山者だけが訪れる山ではないかと思います。
そういう意味では、To the happy few  の山であり続けるのかもしれません。

そんな強烈な個性を持つ名山に仲間たちと共に登れたことは、私にとっても思い出に残る百名山の一つになったと思います。

 

「黒部五郎岳」 おわり

5 thoughts on “黒部五郎岳 後編

  1. すーさん、そろそろ北海道ですね。

    大沼国定公園の駒ヶ岳にトライするのでしょうか。

    それを眺望できる303mの山があります。
    そこからの眺望があまりにも良く、日が暮れるまで見入ってしまったというのが、「日暮山展望
    台」です。

    国道沿いにある小さな標識を何気なく見て、通り過ぎてから引き返して砂利道を10分ほど走るう
    ちに止めようかと思いましたが、頂上に着いてから感動の景色に出会いましたよ。
    https://www.hakobura.jp/db/db-view/2011/04/post.html

    もう一か所が、長万部町にある「二股らじうむ温泉」です。
    函館在住の大学の先輩が、北海道に来るならここでしょう!
    と紹介されました。

    本来、湯治がお勧めですが、1,100円で日帰り入浴も出来るので、寄り道すると良いですよ。
    http://www.futamata-onsen.com/

    最近認知症気味なので、以前にも紹介したかもしれません。
    でも、ブログファンの方にも参考になればと思い投稿します。

    1. Rockyさん

      コメントありがとうございます。
      コメント欄への投稿承認がどういうわけかOFFになっていたため、表示されていませんでした。
      たいへん申し訳ございませんでした。
      通常誰もがコメント投稿後表示されますが、何らかのシステム上の誤作動があったかしれません。
      2度投稿していただきすいませんでした。

      今年の北海道は8月末から出かける予定です。
      以前お話したとおり今年は函館周辺に滞在します。
      駒ケ岳にはぜひ登ってみたいと思っています。「日暮山展望台」の情報ありがとうございます。
      こちらへも日程がうまく合えば日暮れ時に行ってみようと思います。

      長万部町の「二股らじうむ温泉」ですか!
      ぜひ日程調整して立ち寄ってみたいと思います。

      いつも北海道の情報ありがとうございます。
      訪れたらブログにアップしますよ(笑)

  2. 今晩は~。

    急に暑くなりましたので、涼しげな山の写真が清涼剤になります。
    黒部にはかなり昔(30歳の頃)に行き、感激しました~。

    >累計で90座目の登頂です

    すごいですね。おめでとうございます。
    楽しいコーヒーブレイクタイムもあり、目の保養をさせて戴きました。

    1. Roseさん

      コメントありがとうございます。

      登山者にとって夏と言えばやっぱり北アルプスなんですね。
      涼しさはもちろんですが、真っ青な青空と入道雲、お花畑と雪渓、3000m級の岩稜帯とハイマツ・・・、もうこれだけでワクワクしてきちゃいます。
      Roseさんも若い頃行かれたんですか。写真を見て思い出していただければ嬉しい限りです。

      日本百名山90座目ですが、実を言うと今南会津来ています。
      7/31日に関越道の小出(新潟)から奥只見に入り、平ケ岳と会津駒ケ岳を登ってきました。
      これで92座になりました(笑)
      ここ最近、夏の時期は北海道に行っていたため、関東周辺の百名山を残していました。
      そんなことでちょっと頑張って登っています。

      またこの時の登山記録をアップしますので、引き続き見てください。
      お花や湿原がとても素晴らしかったので写真をたくさん掲載したいと思っています。

  3. すーさん、そろそろ北海道ですね。

    最近、認知症気味なので重複するかもしれませんが、ブログファンにも参考になるかと思います
    ので、投稿します。

    1. 日暮山展望台
    大沼国定公園の駒ヶ岳をトライすると思いますが、それを一望できる標高303mの山がありま
    す。この山頂からの眺望のよさに、日が暮れるまで景色に見入ってしまったという「日暮山展望
    台」です。

    私が麓の国道を走ってるときに小さな標識を見て通り過ぎてしまいましたが、気になってUター
    ンしました。砂利道を10分ほど走るのですが、途中で止めようかと思いました。でも行ってよか
    ったと感動する眺望でした。
    https://www.hakobura.jp/db/db-view/2011/04/post.html

    2. 二股らじうむ温泉

    函館在住で大学の先輩が「北海道の温泉ならここでしょう!」と推薦されました。
    本来、湯治目的のお客さんが多いのですが、1,100円で日帰り入浴できるので、話のタネになる
    と思います。
    http://www.futamata-onsen.com/ 

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