「首都大学東京」オープンユニバーシティ
ヒタヒタと水面下で起きていること・・・
社会人向けの「市民講座」は、年間を通して各大学などで開催されています。
私も昨年から興味や関心のある講座に絞って参加してきました。
こうした講座の中身は多種多様です。
最も多い講座としては語学(外国語)がありますが、その他にも歴史、芸術、文学・古典、スポーツ、経済・ビジネス、社会、科学・技術など多岐にわたっています。
こうした市民大学講座の参加者の年代層もまた多岐にわたっていますが、私が見聞きした感じでは、定年退職した方や子育てが一段落したご婦人などシニア層が多いというのが実感です。
又、費用もそれほど高くなく、一定の時間で定期的に行われることから無理なく参加できるのが利点なのでしょう。
首都大学東京 飯田橋校舎
私が現在受講している大学は、昨年に引き続き首都大学東京(飯田橋校舎)です。
今回の講座は、社会経済の「格差社会の謎」と題して一橋大学の福田教授が講師で4回開催されます。
ちょっと難しそうで肩の凝るようなタイトルという感じですが、私たちが今直面している日常生活に大きく関係する問題だと思います。
大学教授ということで単に現在の社会状況を指摘するだけでなく、なぜこうした問題が起きてきたのか?、どのようにして社会・経済が変化してきたのか?など歴史をひも解くところから始まりました。
そんなことから、この歳になってのこうした授業はちょっと眠気も起きてしまいそうな講義という感じもありました(笑)
2019年版案内書 今回の講座資料
レジュメ 「巨大株式会社の権力:権力と分配」と「格差拡大と巨大株式会社への所得集中」
今回のブログでは、その詳細をアップすることは省きますが、一部講義の内容と現在起きている労働環境や社会経済状況について学んだこと・感じたことに触れていきたいと思います。
現在、異常な金融緩和によって円安や株高が演出され、特に大企業を中心に収益が高まり「戦後最長の景気回復」(現政府)と言われています。
しかし、現実の実態経済はどうなんでしょうか?
生産や雇用が増え、所得が増えて消費が拡大するという本来の経済成長とは裏腹な状況が続いています。
こうした偽の好景気感に惑わされ、一部の富裕層や大企業への ”富の集中” が水面下で進行していることに注目しなければならないのではないでしょうか。
今まで企業の利益は、そこで働く人たちへ賃金として還元され、勤労者の所得が増えることで消費も拡大し、マーケット全体が成長する社会構図がありました。
しかし、現在企業の利益は貯め込まれ(内部留保や投資)、又、株主への配当として使われてきています。
株主への配当は、一部の個人株主や投資家、更にはほとんどが企業投資として貯め込まれる状況にあります。
つまり、市場に出ないお金(消費されないお金)が行きかうだけのマネーゲーム化しているのが現実といっても過言ではないと思います。
こうした経済状況の中、今どのようなことが現実として起きているのでしょうか?
具体的な数値を取り挙げて検証してみると、
■家計消費支出:2013年364万円 ⇒ 2018年339万円(25万円マイナス) ※2人以上世帯の実質
■実質賃上げ率:2013年~18年平均 1.1% ※2010年~12年2.59%、
■企業内部留保:2017年425兆円
■法人実効税率:2013年37% ⇒ 2018年29.74%
■非正規雇用率:2017年37.8%
■雇用者増推移:2012年~18年 435万人増。内、非正規304万人増(内、65歳以上179万人・学生56万人増)
これらの数値を見ても明らかなように、政府が声高らかに言っている「戦後最長の景気回復」「今世紀最高の賃上げ(名目)」なの?
実態は、”一部富裕層や大企業の富の拡大” だけを指して経済成長しているということがはっきり分かります。
2000年度を100とした時の過年度の賃金水準推移と他国との比較 ※講義資料
先進諸国と比較してみても、日本の賃金水準がいかに抑えられていることが分かります。
ではなぜこうした状況になったのか?
講義の中で参加者の一人が、この表を見て「他国と比較してなぜここまで差があるのか?信じられない」と質問されました。
私も同様な思いでしたが、この点についてはすでに講義の中で何度も説明された事柄でもありました。
それは2つのポイントがあります。
一つは、労働組合の組織化とその活動が低迷してきたことのようです。
他国においては、日本に比べ働く人たちの力(意見や要望、組織力)が強く、労使交渉においても発言力があるようです。
例えば、昨年12月に米国ニューヨーク州において最低賃金が15ドル(1660円)に引き上げられました。
ちなみに日本の場合、最も高い東京都の最低賃金は985円、最も低い鹿児島県は761円です。
二つ目は、政治によるもののようです。
この間の労働基準法、労働者派遣事業法の幾度となる改定により、企業側にとって有利な労働条件・環境が整い非正規雇用が異常に拡大したことです。
非正規雇用は非組合員であることから、賃上げや労働条件などにおいては全く蚊帳の外といった状態です。
極端に言えば、雇用する側の言い値の賃金で働き、状況に応じて雇止めもできるしくみになっている法令が確立されたことです。
厚生労働省の「正規・非正規の格差容認」記事 ※講義資料
前述の質問をされた方は65歳くらいのシニアの方でした。
私も含め参加者の7割がシニア層で、この世代は昭和から平成にかけてある程度賃金がアップしてきた世代でした。
自分たちの時代と比較してしまうため、どうしても受け入れがたい現実を目の当たりにした感じなのでしょう。
今、第一線で働いている若者や中年層においては、このグラフを見て他国の推移は別としてそれほど驚かないのではないでしょうか。
賃金が上がらない状況が何年も続いている中、「これが現実だよ」と言われるかもしれません。
今や非正規で働く人など「ワーキングプア(働く貧困層)」と呼ばれる年収200万円未満の人たちは4年連続で1100万人を上回ったようです。
そうした状況において、前述したいくつかの指標(家計消費支出、賃上げ率、内部留保・・など)が、まさに今の時代を大きくあらわしているのではないでしょうか。
働き方改革や派遣事業法など国会でも大きく取り上げられ、野党を中心に反対の意見が出され議論されました。
しかし、数の力というものは恐ろしいものです。
こうした法案ひとつひとつの改悪が、確実に ”格差” を生む要因になっているからです。
今までそれほど ”格差” という言葉に敏感になるようなことはありませんでしたが、そうした社会がヒタヒタと訪れていることに私たちは注目しなければならないのではないでしょうか。
わたし馬鹿なもので・・・
賃金上がってないけど、物価も上がってないよね。
表の先進国の賃金の上がり具合と物価の上昇率を対比させないと詐欺や。
権威ある人の資料で自分が信じたい事なら簡単に納得しないほうがいい。
全てにobjectionしてみて下さい(無理にでも)
それから納得かな。
欧米との比較は、日本のいい所を潰していく事になる。
比較してる欧米の労働者は、そんなにハッピーですか?
年収が変わらない。
昭和の年収1000万と今の500万
快適度は、今の500万ですよ。
今のほうが貧乏になりましたか?
食事も安い、衣服もエアチケットも・・・
すーさんが楽しんでるお試し住宅なんか安くて楽しめる典型ですよね。
富の集中ってのも
一人一人に年収1000万でも世の中は変わらない。
一人で10億持つのがいいの。
お金あれば自由に雇用を大きく生み出せる。
労働者の権利意識が強いから、起業は罰ゲームですよ。
こっちは残業しても無制限OK手当なし。
これからもっと非正規は増える、
終身雇用は日本の素晴らしい文化ですが。
今日本で一番困る事(将来に危機感持ってる事)
起業する若い子がいないことです。
人を使うことが、罰ゲームになってきてる。
正社員、勝ち組やもん。
若いリーダーがいない事が、一番の損失。
企業の内部保留は、企業の中で
新しい事にチャレンジする若い奴が出てくれば投資されると。
失敗を恐れて、皆無らしい。
わたしも、法人税納めて内部留保にいそしんでる。
日本は潰れた場合、個人は再起出来ない。
海外は、個人と会社は別モンだから。
B級グルメの家族経営なんか、旨いと哀しくなるよね。
経営者の時間や手間や知恵をタダ同然に消費して。
継ぐ人いないもん。
そういう消費は、終わらせたい。
ヒロさん
コメントありがとうございます。
>賃金上がってないけど、物価も上がってない。
現在の経済状況は、今までに比べれば確かに物価は上がっていませんね。
おっしゃるように諸外国と単純に賃金上昇推移を比較するのも無理な点があると思います。
今、経済界などで言われている造語の一つとして、「適温経済」という言葉があります。
これは株高にも関わらずインフレが顕在化しないという意味から付けられたようです。
緩やかな成長を維持した適度な景気状況のことを指すようです。
これは表面的な現象を指して言っているだけで、実はその中身については触れていません。
というのは、物価が上がらない要因としていくつかの要素がありますが、その中の大きなポイントとしては、人件費が抑え込まれていることがあります。
企業間の価格競争が激化する中、企業として商品価格を抑えながら少しでも利益を上げるための手法として、商品原価の抑え込み(下請けへの原価引き下げなど)や販管費として最もウェイトが高い人件費を削減することです。
これが物価高が見えてこない要因のひとつなのではないでしょうか。
私も働いていた頃、こうした状況や実態を身を持って体験してきました。
特に大手企業のサプライヤーへの力関係は強く、お互い少しでも利益を上げる手立てとして人件費削減に邁進する構図が出来てきます。
こうしたサイクルが繰り返し行われてきたことで、正社員の給与の抑えはおろか非正規の拡大と使い捨てが進行してきたと思います。
本来の経済成長とはブログでも述べましたが、生産や雇用が増え、所得が増えて消費が拡大していくことだと思います。
こうした循環は、働く人や企業にとっても利益を生むものだと思います。
一部の大企業や富裕層だけに所得が集中し、市場に出回らないお金は何ら経済成長につながらないものではないでしょうか。
こうした考えは理想論ではありません。
現状がそうだからという固定概念を持ってしまえばそれまでだと思います。
何かおかしい!、偏っている!という思いがあれば変えていく考えを持つことも必要なことではないでしょうか。
労働基準法、労働者派遣事業法、最低賃金など・・・、私たちの生活を取り巻く法律が改善されることで少しでも向上していくことが大事なことだと思います。
又、法人税率の底上げや大企業優遇税制の見直し、本来あるべき累進課税への転換などによって十分な歳入も見込まれ、それらを社会保障をはじめとする歳出に充てれば、少しでも国民生活の安定と増税回避(消費税増税など)につながると思います。
すーさんが危機感を持ってるのはよく分かります。
大企業優遇税制は見直したほうがいいと。
消費税も悪税やね。
でも労働基準法は、労働者の権利を守るのに十分な法律ですよ。
まじ、仕事出来ないくせに法律に詳しいゴミ雇うと泣かされます。
フランスなんて、労働者の権利守ってEUの二流国の落ちた。
すーさんがおっしゃってる法律で規制する事は、効果ない、
逆に悪循環になる。
法律で規制すればするほど、経済は発展できなくなり国民は貧乏になります。
国がやるべき事は、法規制ではなくホワイト企業を育てる事。
日本人の個人の富裕層は、海外に出てますよ。
基礎研究やってる奴も。
法人税もしかり。
すーさんやリベラルな学者が言う事実行したら
近い将来、
金持ちや優秀な人材が流出して、貧乏人と老人ばっかになるよ。
その時に、どうかじ取ればいいのかな?
ヒロさん
コメントありがとうございます。
大企業優遇税制の代表的なものは研究開発減税です。
この制度は研究費増加を促進するという口実で設けられたものです。
それが「研究費が増加した」企業から「研究費の総額に応じて」減税する制度に変更されました。
つまり、研究費と法人税が多額の大企業ほど恩恵が大きくなります。
このことによって減税総額の約9割が資本金10億円を超える大企業に集中しています。
その他には、大企業の利益を圧縮し、法人税を安くするしくみとして、受取配当益不算入という制度があります。これは国内の他の会社から受け取った配当を利益に含まないことにして、課税対象から外す制度です。
子会社がたくさんあったり、株式持ち合いをしている大企業ほど恩恵を受ける税制です。
こうした恩恵によって大企業は莫大な利益を確保(内部留保)しているのが現実です。
又、所得1億円を境に高額所得者ほど所得税の負担率は低くなっています。
これは、高額所得者の所得の多くを株式譲渡益や配当が占めているからです。
所得税の累進課税を正常化するとともに証券課税強化(税率アップ)をする必要もあると思っています。
こうした税制を一つ一つ見直すことで税収入は確保でき、社会保障費への対応(歳出)もできてくるのではないでしょうか。
現在の労働基準法を否定するものではありません。
働く人たちにとって不利益になる ”一部法令の見直し・改善” が必要だと思います。
ヒロさんがおっしゃるようにホワイト企業を育成していくことは、私も大事なことだと思っています。
国は、ホワイト企業が育つような法整備や環境づくりをしていくことが大切なことですよね。
一部の富裕層や大企業に所得集中しないような法規制(税制度)やホワィト企業が育つような労働法が必要なことではないでしょうか。
経済の発展というものは、大企業や一部個人の富が拡大することではなく、GDPの6割を占める個人消費がいかに拡大していくかということです。
個人消費が低迷すれば確実に市場(マーケット)は冷え込み、経済発展はできません。
そのためにはやはり個人所得を増やし、消費を拡大することで好循環がうまれると思います。
このことは企業にとっても利益確保という点で有利になるのではないでしょうか。
法規制によって企業や人材の海外流出もあるかと思いますが、まずは不備な税制や労働法などの見直し・改善をすすめていくことが大事なことだと思います。