税収入のあり方と分配
もっと先に見えるものは?・・・
今夏、山仲間たちと共に白馬三山縦走の山旅に行ってきました。
この時、仲間の一人が登山装備品やグッズをモンベルのポイントで購入したと話していました。
私もモンベルをよく利用するためそれなりのポイントが貯まっていました。先日もポイントを利用してウェストポーチを80円で買ったことを話ながら登りました。
しかし、彼の場合、ポイントが桁ちがいに多かったことで山仲間全員が驚きました。
なんと5万円分のポイント!?
彼の話によると長野県大町市の「ふるさと納税」を利用(寄付)したことで、モンベルのポイント5万円分が貰えたとのことでした。
「ふるさと納税」のことは知っていましたが、品物や食品などではなくポイントもあるんだということなんですね。
彼は埼玉に住んでいますが、所得税の還付、住民税の控除が受けられると話していました。
登山などのアウトドアを趣味にしている人にとっては、 ”実においしい還元だ!” と、仲間みんなでワイワイ語り合いました。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は、納税とはいいますが、地方自治体への寄付を通じて地域創生に参加できる制度のこと。
自分の生まれ故郷だけではなく、お世話になった地域や応援したい地方など、好きな自治体に寄付金を送ることが特徴。
そしてそのお礼として、その土地のお米やお肉といった特産品や名産品が「お礼品」として貰えることから人気を集めている。
寄付後、所得税の還付や住民税の控除が受けられ、実質的な自己負担額を2000円にすることができる・・・。
ふるさと納税サイトより
そんなふるさと納税の「返礼品」は、ここ最近各自治体が競うようになり、かなり魅力的な商品や高額の返礼品が目立つようになってきたようです。友人のモンベルポイントもその一例なのでしょう。
その自治体に特定して寄付をするという動機は様々だと思います。
寄付が集まることで地方の財政は潤い、創生・活性化に結び付いていくことでしょう。
そして、寄付をするという動機は、主に地方やその自治体を応援したい(生まれ故郷、お世話になったなど)ということから始まったものですが、過度の「返礼品」競争からそれだけが目的という動機に変わってきたことが問題になってきました。
その反面、寄付する人が住んでいる自治体では、所得税の還付や住民税の控除ということから莫大な税金が減少し、財政がひっ迫するという事態になってきたようです。
自治体財政ひっ迫の例として、こんな記事がサイトに掲載されていました。
「ふるさと納税」による世田谷区の減収額が増大しています。
2016年度(平成28年度)の影響をみると、前年に区内で2万4345人がふるさと納税を利用して、43億6388万円の寄付をした結果、27億5553万円の控除額でした。
控除額のうち、東京都の都税分が11億211万円、世田谷区の区税分が16億5342万円です。つまり区の歳入から16億5342万円のマイナスが生じたことになります。
過熱する「返礼品競争」やテレビCM等で、ふるさと納税ブームは高まりつつあり、さらに影響額はふくらむと予想せざるをえません。
2016年度(平成29年度)の新年度予算は、ふるさと納税による税源流出の影響額は30億円まで達する見込みを立てています。
ふるさと納税によって税収減に陥る自治体はありますが、国の地方交付税で75%補てんされます。
ところが、東京23区は不交付団体なので、補てんはまったくなされずに税収の「純減」になります。
2017年2月世田谷区長
9月12日 朝日新聞 9月12日 毎日新聞
そのようなことから、先日総務省は、ふるさと納税で「過度な返礼品」を送っている自治体を制度の対象外とすることを検討すると表明しました。
ふるさと納税の基本的な返礼品は、「寄付額の3割以下」「地場産品」とするよう求め、通知を受け入れない自治体を対象外とする方向のようです。
制度の対象外ということは、その自治体に寄付をしても税控除が受けられなくなるということのようです。
先日、この総務省の通達を受けて、各テレビ局では様々な意見が出されていました。
ふるさと納税によって、少しでも財政が立ち直る自治体もあれば、一方では前述したような財政ひっ迫に陥る自治体もあります。
ふるさと納税制度の当初の主旨からみれば、やはり異常なかたちにゆがんできているように感じます。
私は、郷里への応援、被災地支援など、その効果はあると思っています。
しかし、本来の趣旨を生かせるよう改善の必要性があるのではないかと思います。
地方交付税
今の日本において、地方創生、財政の立て直しなど、地方自治体の活性化が大きな課題になっていると思います。
私たち夫婦も全国くるま旅や山旅で各地方に出かけることが多く、旅先で目にする光景から将来の日本を危惧する思いが沸きあがってくることが度々あります。
地方活性化につながる政策として、「ふるさと納税」は大きな意義を持ちますが、様々な諸課題もあります。
単に「ふるさと納税」だけをみてしまうと、”一つのパイを取り合う” ような感じにも見えてきます。
総務省の傘の下、各自治体がいがみ合う構図も見え隠れするような感じです。
以前、社会保障費の財源についてブログに記したことがあります。
少子高齢化に伴い年々増加する社会保障費において、年金、医療、介護など高齢者への財政負担が拡大する一方、子育てや若者への支援がそのために抑えられているといった新聞記事に対する反論でした。
ここでも、”社会保障費という一つのパイの取り合い” という構図を出し、高齢者対幼児・若者といった対立に目を向けさせ、本来の税収入や分配のあり方(歳入と歳出)に目を向けさせない政府の意図があります。
本来、社会保障費というのは、各種公的保険料だけでまかなうものではありません。国の歳入全体から必要と思われる費用として分配されるものだと思います。
税収入が減少しているとか、他にも国政上重要な歳出があるため、求めようとする必要な予算化は難しいということもあるでしょう。(各省庁の予算)
これらの予算というのは、国会での政策(政府予算)で決まるものです。問題はその政策にあるということが、様々なところに影響を及ぼしていると強く思います。
社会保障費、地方交付税などもその一例ではないでしょうか。
東日本大震災から7年半経ち、福島第一原発事故による処理費用は21.5兆円に達しているようです。さらにこの費用はどこまで膨らむかわかりません。
これらは私たちの大切な税金が使われ、電力料金にも跳ね返ってきていることが現実です。
現政府の原発推進の下、福島第一原発以外でも各地原発の廃炉、核のゴミ処理費用も税金で賄われ続けようとされています。
又、税政策においては、大企業優遇税制や減税により大企業の内部留保は400兆円に達しています。
経済市場の拡大や株価高騰、求人倍率など政府の謳い文句で宣伝されているようですが、勤労者の賃金は減少し、格差と貧困が拡大しているのが実態です。
私たちは、税収入のあり方、使われ方に目を向けなければならないのではないでしょうか。
税収入が足りなければ取るべきところから取る政策、不必要な支出を止めて必要なところに充てる政策こそが求められると思います。
「ふるさと納税」は、税に対する国民の意識を高め、地方を自主的に応援する制度として効果はあると思います。
一方でこの「ふるさと納税」をとおして、慢性的な地方財源不足のために地方交付税の抜本的な拡充が必要ではないかと感じました。
「木を見て森を見ず」ということわざがあります。
そこだけを見てしまうと全体が見えないことがあります。
ふるさと納税と原発? ふるさと納税と大企業優遇税制? 社会保障と原発? 社会保障と内部留保? 全く関係がないようなことのように見えますが、森を見たら何かが見えてきたような気がします。
来年10月、消費税10%増税! 本当に必要なの? これもまた何か見えてきたように思えます(笑)