財務省主税局審議官のお話しを聞いて
皆さん、寺島実郎という方をご存じでしょうか。
以前、朝日TVのニュースステーション(古舘伊知郎氏の頃)にコメンテーターとして解説されていた方で、現在でもTBSのサンデーモーニング(関口宏氏司会)でも解説されています。
寺島氏は、現在多摩大学学長、日本総合研究所会長を務められている方です。
私は、この寺島氏とはまったく面識もなく関わりもありません。ただテレビで拝見しているだけでした。
特に報道番組では、いろいろな諸問題に対して分かりやすく解説されている方ということで興味を持っていました。
その寺島氏が設立した「寺島文庫」(九段下)に併設された文庫カフェ「みねるばの森」で定期的にセミナーが開催されているようです。
セミナーの内容は、主に政治経済に関することが中心で多岐に渡っているようで、その分野の専門家や学者の方のお話しがあり一種の勉強会のようなもののようです。
そんなセミナーの開催をネットで知り、はじめて参加してみました。
寺島文庫の「カフェ みなるばの森」と店内。
通常はカフェとしてオープンしていますが、セミナーの時はこの場所が会場になり貸し切りというかたちになるようです。
座席数は約30席ほどで、セミナー参加者の定員は30名のようです。
今回のテーマは「日本の財政を考える」と題して、講師は財務省主税局審議官(矢野康治氏)の現役官僚の方でした。
日本の財政運営に携わる高級官僚の方のお話しを直接聞く機会などめったにありません。
普段私たちは、テレビの報道番組や新聞などでの情報を見聞きするだけですが、実際に国家財政に関わっている方がどのような考えを持って仕事されているか、将来どのような課題があるのかなどの「生の声、考え」を聞くチャンスと思いました。
又、矢野氏からは、個人的な考えも入れて忖度のない話しもしていきたいということでしたので、一般的なお話し以上のことも聞くことができました。
セミナーでは、矢野氏から10枚(A4用紙)の資料が配布され、それに沿って日本の財政の現状とこれからの課題についてお話しがありました。
「日本の財政」と聞けば、何か難しさを感じ、私たち庶民にとっては遠い存在のように思います。
しかし、私たちの毎日の生活の中で感じること、疑問や不便に思っていることなどをちょっと考えてみれば、それほど難しいことではないのではないでしょうか。
最初に説明のあった資料では、「日本における収入に応じた受給・負担額の手取り金額(夫婦子二人)」のイメージ図でした。
左図が日本、右図がアメリカです。
見方は、横軸が給与収入(年収の税込金額)、縦軸が受給・負担後の手取り金額。
例えば、年収550万円(横軸)は手取りで約450万円でした。つまり税負担額が約100万円ということです。
日本もアメリカもそうですが、税制度は累進課税のため所得が多ければそれに合わせて税負担が大きくなり、図のように45度(点線)の角度より手取り金額は低くなっていきます。
ここでお話しがあったのは、オレンジ色と黄色の部分です。
オレンジは生活保護の支給金額です。給与収入が低ければその分生活保護金額は増え、収入が少しでも増えてくれば徐々に生活保護費は減っていく図です。
しかし、アメリカ(欧州も同じような図)のような黄色の部分の中低所得者に対する税額控除や支給金額、食料購入用カードの配付などの税負担減が充実しています。
日本もこのようなかたちで中低所得者に対しての税負担減がされていくことが望ましいとの話しがありました。
財務省審議官の話ですので、将来の税制の在り方の改善につながっていくことを期待したいですね。
もう一点、注目すべきことは、単純にこの図を見た時に何を感じることかということです。
矢野氏は、若干この点に触れて「生活保護としての支給があるのであれば、働いてもしょうがない的な思いを持つ人もいるかもしれない」という感じ方です。
もちろん憲法25条(生存権)の話しもありました。
更に、賃金が抑えられていることや非正規雇用の拡大(約40%)もこうした状況(批判的な声)を生む要素になっている点も指摘されていました。
矢野氏は立場上それ以上のことについてはコメントされませんでした。
私は、こうした図のような所得水準と生活保護受給者の支給金額を見て感じたことは、あまりにも青色の部分(可処分所得)が低すぎると思いました。
一般に報道されているような生活保護バッシングは、結果として自分たちの生存権を脅かすものだと思います。
自分たちが収めた税金がなぜ生活保護受給者に使われなければならないのかという声を聞きます。
非正規雇用により低賃金に抑えられ、ブラック企業による労働環境の悪化などの怒りが、社会的に弱い人(生活保護受給者)に向けられる傾向が多いように思います。
この点については、自己責任論を否定する藤田氏の「下流老人、続・下流老人」に詳しく書かれています。
本来であれば怒りの矛先は、こうした格差社会を作り出している企業(利益至上主義)や派遣法などの国の法律に向けられなければならないと強く思います。
矢野氏がおっしゃる国の税制度の改善はぜひとも願うものですが、それなりの歳入があってできることだと思います。
こうした制度の推進をする一方で最低賃金を上げることや非正規から社員化する制度導入も必要ではないかと思います。
個人消費水準の推移
「日本の財政を考える」というテーマでは、やはりどうしても避けて通れない点は、消費税と個人消費です。
矢野氏のお話しの中では、主に消費税と超高齢化に対応した財政政策に集中していました。
2014年4月に消費税が5%から8%に上がりました。
この時の個人消費は、図表で見れば一目瞭然で、駆け込み需要の1-3月期では個人消費は跳ね上がっています。
導入後の4月(第二四半期)以降は下がっています。
ここで矢野氏は、個人消費において消費税増税の影響はあったと言いつつも、その後は「横ばい」と言う点を強調されていました。
世間では下がってきていると言われているが、その傾向はあくまでも横ばいで推移しているということです。
つまり何を言いたいかということですが、結論としては消費税を増税したい方向に意図があるようです。
この消費税(増税)については後で話しますが、ここでは「横ばい」について疑問がありました。
確かに矢野氏が言われるように大きな落ち込みはあったものの、その後は一定水準で落ち着いているように思えます。
あくまでもこの折れ線グラフをみればそう思うかもしれませんが、この中に隠されているものをしっかり見なければ現実はわからないと思います。
まずは、先ほど出ていた勤労者世帯の所得は5年連続マイナス状況です(現在平均420万円)
所得が減って個人消費が一定(横這い)であれば、家計においては厳しい状況が続いていている点です。
更に物価上昇、公的制度の改正(年金削減、医療費負担増、介護保険制度の自己負担増など)も加味すれば単純に生活水準は悪化しているのが現実ではないでしょうか。
見方を変えれば考え方も大きく変わってきます。
どんな場合でもそうですが、出された資料の説明を受ければ「なるほどそうだよな~」と思うことがありますが、あくまでも提出した側の資料ですから、そうした説明を受ければその方向に考えが向かってしまう恐れがあるようです。
財務省は、国を運営していく上で税収が多ければそれなりの施策に手を打つことができるため歳入を増やす方向に向かいます。
バブル以降の低成長時代を迎え企業の業績悪化・低迷による税収は厳しいものになってきています。
このため国債(国の借金)を増やしているのが現状です。
そうした中で消費税増税の方向に傾きつつあることが、今回のセミナーでなんとなくわかりました。
消費税についての話は次回のブログで紹介したいと思いますが、まずは今回配付された資料の「消費税の特徴」を添付しますので皆さんちょっと見て考えてみてください。
今回、国の財政に関わる財務省の主税局審議官のお話を聞く機会に恵まれました。
国家政策に関してのさまざまな資料作成や方向性を提言されていると思います。
そして、国家公務員という仕事ですから当然国民の立場に立ってお仕事をされていると思います。
国や国民のためにどういう施策が良いかベストを尽くしていると思いますが、そのやり方はいろいろあると思いますが・・・。
次回は、今回のセミナーの中で出た上記資料の「消費税」について考えてみたいと思います。
つづく
今日は。 この手の話題にはすぐ食いついてしまいます(笑)
最後の消費税に関する特徴のリストに関しては感じることが多々ありますが、敢えてすーさんが
記事を書かれてからにしたいと思います。
前半の財務省の方の話、ならびにその資料。 すーさんがかなり慎重な受け取り方をされている
し、変に鵜呑みにしていないので安心して記事が読めます^^;
私が感じた違和感の一つには生活保護を夫婦二人と子供二人の「標準世帯」に付け加えている
点です。 ご承知のように日本の生活保護の補足率は国際的にも最低ランクだし、ましてや、そ
れが書かれているように「オレンジは生活保護の支給金額です。給与収入が低ければその分生活
保護金額は増え、収入が少しでも増えてくれば徐々に生活保護費は減っていく図です。」となる
のはいったい国民の何%の話か、という点です。 「標準」家庭と言うのであれば、この図の青
色の部分だけの話をするほうが妥当でしょう。(⇒ 参考
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/seikatuhogo_qa.pdf )
また個人の消費水準に関する意見は、すーさんの書かれていることに同意します。ただ、「バブ
ル以降の低成長時代を迎え企業の業績悪化・低迷による税収は厳しいものになってきています。
このため国債(国の借金)を増やしているのが現状です。」に関しては一方で企業の内部留保が
史上最高にまで膨れ上がっている、という事実もあり、法人税の減税による減収を消費税の増税
でまかなうのが本当にいいのか?という疑問もありますが。
リンロン88さん
リンロンさんのコメント表示が遅れまして申し訳ございませんでした。
コメントは全てすぐに表示されるように設定してありましたが、何らかのトラブル?で即表示されない設定に切り替わっていました。つまり、管理者の承認有無の設定になっていました。
今回のブログは、現職の審議官のお話しということである程度慎重に作成しています(笑)
セミナーでは審議官の個人的な意見もあったのであまり差し障りのないように作成しました。
リンロンさんがおっしゃるように生活保護受給者が国民の何%に当たるかということも考慮しなくてはいけませんよね。この図を見れば圧倒的に多いという風に捉えられてしまいます。
その為の税金が多額に使われているような錯覚にもなりますね。
リンロンさんのご指摘もっともです。
消費税については、次のブログでご紹介していきますが、セミナーで審議官のお話しが終わった後、30分ほどの質問時間がありました。
その時に実は質問しました。
その内容は、「消費税に頼らない方法(政策)があるのではないか?」という点を質問しました。
リンロンさんが疑問に感じていることと全く同じように「法人税の減税による減収を消費税の増税でまかなうのは本当にいいのか?」という質問でした。(笑)
質問の前段で大企業の内部留保についても指摘しました。
多くの皆さんが感じていること、疑問に思っていることを率直に質問してみました。一庶民が現役の財務省官僚に質問する機会は、こんな時でしかありませんからね(笑)
次回、その点をブログでご紹介していきます。
コメントありがとうございました。
生活保護受給者の多くは高齢者だと言います。また、保護費の中では生活扶助よ
りも医療扶助の支給の方が相当額多いそうです。
現役世代の人の生活保護受給者の比率は高齢者よりも小さく、病気や障害のた
めに働けないなどよほどの事情が勘案されないと受給は難しく、行政による受給抑
制の動きも強いと聞いています。
低所得者をどんどん増やし歳入を減らしながら役人はよく言うものだと思いまし
た。子や孫の暮らしや将来を想像すると、40年間支払ってきた税・社会保険料など
が、これら役人や政治家の人件費も含めどんな使われ方をしてきたのかと、積み立
てた投資先を見誤ったような気分です。
mittyさん
コメントありがとうございます。
mittyさんがおっしゃるように生活保護受給者の多くは高齢者だと思います。
加齢、病気、障害などで働けなくなった方々がほとんどだと思います。
こうした中での行政による受給抑制の動きに憤りを感じます。
低所得者の拡大をはじめ、私たちはこのような格差社会の中で、”どこに目を向けなければならないのか”ということを真剣に考える時だと思います。
今回、こうしたセミナーを通して国家財政に携わる方の考えを聞く機会がありましたが、結局のところは「政治」を動かすのは私たち国民でなければならないということが分かりました。
この点についても、次回のブログの中で考えていきたいと思います。