登山家~田部井淳子
奥武蔵の小さな山
私の住む川越から車で30分ほどの所に日和田山(ひわださん)があります。
奥武蔵の玄関口にあたる場所です。
まだ子どもが小さかった頃、ハイキングや河原(高麗川)でのバーベキューなどでよく訪れました。
最近では、巾着田の曼殊沙華が有名になり観光地としても人気が高くなっているようです。
退職後、登山や山歩きを趣味にしていることから、近くの奥武蔵や奥多摩周辺によく出かけます。
又、夏山登山に向けたトレーニング場所として利用するようになりました。
その中で最も親しみがあり、よく出かける山がこの日和田山です。
標高は低く(305m)小さな山ですが、短時間で岩場や静かな樹林帯歩きができ、なによりも見晴らしがいいのが気に入っています。
日和田山から望む富士山
山の呼び方として、「〇〇山」(やま)、「〇〇山」(さん)という言い方があります。
この違いはいったい何でしょうか?、というTV番組がありました。
「〇〇山」(さん)は、神の山・信仰の山として呼ばれているそうです。
例えば、富士山(ふじさん)、筑波山(つくばさん)、白山(はくさん)などがそうですね。
「〇〇山」(やま)は、浅間山(あさまやま)、吾妻山(あずまやま)などがあります。
一般的に「さん」づけは敬意を表する言葉として使われることで、昔から神の山、信仰の山として崇められていることなんですね。
日本百名山を例にとっても岳を除いて、この「さん」づけの山が圧倒しています。
それだけ日本は信仰の山が多いということなんですね。
日和田山(ひわださん)も「さん」づけの山です。
中腹には、金刀毘羅神社(ことひらじんじゃ)があり、頂上には宝篋印塔があります。
詳しいことはわかりませんが、昔から地元の人たちに崇められた山だったのでしょう。
日和田山登山口。ここから奥武蔵自然歩道のハイキングコースが続いています。
登山道は、男坂・女坂に分かれ、男坂は岩場を登っていきます。
眼下に巾着田が見えます(高麗川が蛇行し、きんちゃくの形に似ていることから巾着田)
奥多摩、奥武蔵の山並みが一望。
日和田山頂上(305m)
山の裏手にある男岩は、ロッククライミングのトレーニングの場所として知られています。
ちょうど10人くらいのグループがトレーニングしていました。
但し、危険なためクライミング禁止の立て札がありましたが・・・。
下山後、巾着田からの日和田山。
秋にはこの辺りが曼殊沙華でいっぱいになります。
日和田山ハイキングはじめ巾着田周辺の散策も楽しめるので、ぜひ来てみてはいかがでしょうか。
今年1月7日、NHKドキュメンターで「田部井淳子 最後の山へ」が放映されました。
最後の山となったのが、昨年7月東北の高校生たちと一緒に登った富士山でした。
田部井さんは、昨年10月20日に腹膜がんで亡くなられました。
ご存じのとおり、田部井さんは女性として世界で初めて世界最高峰のエベレストおよび七大陸最高峰への登頂に成功した日本を代表する登山家です。
実は、田部井さんは川越在住の方です。(福島出身)
私も同じ川越に住んでいますが、面識はありませんでした。
市内の石井スポーツ店には、田部井ブランドのコーナーもありました。
田部井さんが、がん治療のリハビリコースとして何度か利用していたのが、この日和田山だったそうです。
1975年エベレストに女性世界初の登頂に成功。
日本人女性で次に登頂した難波康子さんが1996年でしたから、田部井さんが登頂してから21年後ということから、その偉業はすごいものなんですね。
田部井さんがリハビリで訪れた日和田山。
「何度も休み、その都度深呼吸し、自分の手で自分の足を持ち上げるようにしながら歩いて頂上に立った」
「何度も見た風景なのに、また来られた。またこの頂上に立てた。大丈夫だ歩ける」
田部井淳子さんが晩年登られた日和田山に登ってきました。
私も何度も登った山でしたが、今年の日和田山は何か感慨深いものがありました。
田部井さんが最後の山に登った「富士山」も、この日和田山からハッキリ見えました。