米大統領選

世界に広がる貧困と経済格差

 

大方の予想に反してトランプ氏が大統領選を制しました。
実際の米国民でない私たちは、新聞・テレビ・ネットなどの情報だけでその行方を見守っていました。
トランプ氏の女性蔑視、移民やイスラム教徒を敵視する人種差別、障害者など少数派をあざける発言、こうした姿勢は今後何をしでかすかわからない人という危険な存在として映りました。
こんな人が大統領になったらとんでもないことになってしまう、という気持ちになった方は私だけではないと思います。

しかし、トランプ氏が選ばれました。なぜでしょうか。
今回の大統領選は当初からマスコミなどで「中間層の反乱」などと評されていました。
アメリカといえば常に世界経済をリードし、大量生産大量消費というイメージを持ち、裕福な生活水準の高い国として映ってきました。
特に日本は、戦後アメリカの強い影響の下に成長してきた国ですから、そのイメージは他国に比較しても強いものがあったかと思います。
しかし、今の米国は格差の拡大による生活の不安、地方経済の深刻な疲弊、テロや戦争の悪循環など、現実に対する不満と怒りが渦巻いているのではないかと思います。

今回の選挙戦での米国民の有権者の声として、こんな発言を目にしました。
「今回の選挙の争点は、人口の1%の人たちに富が集中する経済システムを変えるかどうかです。一部の大企業がもうけをあげるのではなく、庶民がまともに暮らせるようにしてほしい」

選挙戦の争点となる政治・経済・外交などの諸課題はいろいろあると思いますが、庶民にとってはやはり毎日の生活の安定ではないかと思います。
米国に限らず、日本においてもこの願いは同じものではないでしょうか。
そして、いろいろな願いの底辺にはこの思いがあると思います。
この発言は、米国民の思いが端的に現れている一言ではないかと思いました。

トランプ氏がこうした現状を変えられるかというと大きな疑問です。
それにかかわらず勝利したことは、現状を変えてほしいと願う有権者の不満と怒りの根深さを感じました。

一方、ヒラリー氏は「すべての人のためになる経済が必要だ」と語り、富裕層や大企業が利益を上げれば庶民に回るという「トリクルダウン理論」を批判しました。
しかし、上院議員や国務長官を務め、ウォール街からの多額の献金を受け取る同氏が、有権者の目に既得権益を代表する政治家と映ったことは否めないのではないでしょうか。
又、民主党の予備選挙段階では格差是正を正面に掲げたサンダース氏が善戦し、変革を求める運動が広がりました。
ウォール街の高額報酬や企業献金、低すぎる最低賃金、国民皆保険の欠如など、米国の直面する深刻な課題を争点に揚げ、特に20~30代の若者の支持を集めるうねりになりました。
敗因としては、こうした同じ民主党内の票がヒラリー氏に動かなかったこともあるのではないかと個人的に思いました。

私は、米国政治についてはよくわかりません。
テレビ、新聞などマスコミを通じての一般的な日本の報道を目にするだけです。
今回の選挙戦で素人ながら感じたことは、米国社会の深刻な問題として経済格差が広がり、既存政治への不満と怒りを反映したものだったように思います。
このことは米国に限らず日本においても同じことのように思えます。

 

一部の企業・資本家に富が集中

 

先日、読売新聞に「一流の経営者とは」というタイトルでコラムが掲載されていました。
今回の米国大統領選とは全く関係しませんが、関連として思うところがあったのでご紹介します。

 

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「円高や中国経済の減速が心配で、賃上げどころではない」。2017年春闘に向け、企業側からは早くも弱気な声が聞こえてくる・・・。中略
一世紀前、米フォード・モーターを創業したヘンリー・フォードは、従業員の賃金を一気に2倍にした。従業員はやる気が高まり、技術革新に励んだ。大衆車「T型フォード」は生産コストが下がり、何度も値下げ。従業員もこぞって買った。
自動車王は「利益を社内に蓄積することののみ汲々とする経営者は、企業の社会的貢献に鈍感な二流、三流の企業人だ」と断じた。
賃上げしながら17年3月期にも最高益を予想する日本電産の永守重信会長兼社長は似た考えだろう。
「みんな円高で苦しんでいるが、うちは全部吸収している。いつも円安で景気が良ければ経営者はいらない」と手厳しい。
働き手は買い手でもある。収入が伸びれば消費に回すお金が増え、経済の好循環が動き出す。
経営者が嘆くばかりでは従業員の奮闘も浮かばれない。前向きな発想で賃上げに取り組むべきではないか。

一世紀前の社会状態と今の経済状況を照らし合わせ比較することはできません。
しかし、現在の政治経済の状況下でも、こうした考えに似た経営者がいることも確かです。
そして、健全な経済循環のあり方は、昔も今も変わるものではないと思います。

 

現在、企業がもうけを示す「内部留保」は増え続けています
2015年は、377兆円にも達しているようです。
グローバル化した多国籍企業、大企業の利益は膨らみ続け、実質の市場経済には回ってきてはいません。
一部の企業、一部の資本家だけに富が集中し、経済格差が深刻化する中、貧困が生まれる土壌が広がっています。
このことは日本に限らず、今回の大統領選が行われた米国はじめ世界中で起きている問題です。

「人口の1%の人たちに富が集中する経済システムを変えるかどうか」という米国有権者の声は、日本においても共通するものがあると思います。

現政府は、今だトリクルダウンにしがみつき、大企業に有利な法人税減税を推進し、富が集中する経済システムをすすめています。賃上げにおいてはポーズだけということはハッキリ分かっています。

一流の経営者とは、政治家とは、どういうものかということを今回の大統領選で思うところがありました。

 

2 thoughts on “米大統領選

  1.  私はアメリカ在住です。
    息子も娘もクリントンに投票しました。 今朝彼らとメールをやり取りしたら、今回の
    選挙結果に愕然としていたのは私たちと同様でした。

    今回のすーさんの感想はほぼ私のそれと重なります。敢えて言えば、トランプが勝
    ったというよりクリントンがあまりにも評価が低かった、ということでしょうか。その
    理由は書かれているように現状に不満を持つ層にとってクリントンはその「現状」
    を創り出した側の人間だったからでしょう。

    自分のブログでも大分以前に書きましたが、今回の選挙はどちらが大統領にふさ
    わしいか、という人気投票ではなく、どちらが大統領にふさわしくないか、という不
    人気投票になってしまいました。 討論会も私は1回目だけですが、最初から最後
    まで見ていましたがあまりの次元の低さに愕然としました。この二人の中のどちら
    かを選ばなくてはならないアメリカ人が気の毒に思えたほどでした。

    そうは言っても結果は出てしまったわけで、こうなったからには、今後それを前提と
    してどうしてゆくかが問われます。 ここに於いてもあまりにも不確定要素が大きす
    ぎますが、それでも進まなくてはならない、というところにむずかしさがありますね。

    日本も・・・・大統領選のような形で直接民意が反映される仕組みはありませんが、
    それでも状況は似たり寄ったりのなか、本当に国民のことを考える政治家なり企
    業家が出てくれることを祈るばかりです。

    1. リンロン88さん

      地元米国からの貴重なコメントありがとうございます。
      その前にリンロン88さんが米国在住だと知りませんでした。

      リンロン88さんがおっしゃった、討論会の次元の低さに愕然し、この二人のどちらかを選ばなくてはならないアメリカ人が気の毒・・・。
      この討論会の様子がテレビで流れ、家内と二人で観ていました。
      リンロン88さんと同じように、あまりの次元の低さに、これが世界をリードする米国の大統領選か!?と驚きました。
      実は、今回のブログの中でこの点について触れようと思いましたが、こんな次元の低いことを取り上げることがくだらなく感じて、本来の政治のあり方について書いてみました。

      又、マスコミの報道についても疑問を感じます。
      ”ほんとうに国民のことを考える政治家”の視点でどうなのか?という報道を流し、国民に考えさせる報道も必要ではないかと思いました。

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