演劇「芸人と兵隊」

ウクライナ危機と・・・

戦争というものを考える

 

2月はじめに定例の演劇鑑賞会に行ってきました。
題名は、トム・プロジェクト(株)興行の「芸人と兵隊」です。
出演者は、テレビでもお馴染みの柴田理恵、村井國夫でした。

物語は

日中戦争が泥沼化しつつあり、英米との関係も急速に悪化していた昭和16年春。
あるベテラン夫婦漫才師が中国大陸への慰問の旅に出る。この時の日本では、笑いという戦争とは対極のものを生業とする芸人でさえ戦争の歯車に巻き込まれていた。芸人を続けるには、戦争に協力するしかなかったのだ。笑いに飢えた前線の将兵との触れ合いは、厳しさの中にも張りがある。夫婦は慰問に夢中になることで、再び芸人としての喜びを再認識する。
そんな旅も終わりに近づいたある日、慰問団はついに戦闘に巻き込まれる。そして・・・
「芸人と兵隊」HPより

 

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ストーリーは、夫婦漫才師の村井國夫(座長)と柴田理恵が中心になって、他4人の芸人を連れた慰問団を結成して戦線各地を巡る物語でした。

夫婦漫才をはじめ各芸人が、私たち観客を兵士と見立ててお芝居するものでした。出演者の本格的な漫才や落語を見聞きすることから、演劇というより漫談を観に来たという錯覚さえありました。
題名が「芸人と兵隊」ですが、実は兵隊は一人も出演していません。兵士の存在は音響などの雰囲気だけで演出していました。こうした演劇もあるんだな~と思いました。

「慰問団はついに戦闘に巻き込まれる。そして・・・」の次は、最後の慰問に向かう途中で夫婦漫才師の相方(柴田理恵)が砲撃にあって亡くなるという物語でした。
帰国後、座長(村井國夫)が「この戦争は間違っている」「戦争はやめるべきだ」と叫び、周りの芸人たちが「声を潜めて」「特高が・・・」と周囲をうかがう場面がありました。
戦争を起こした国においては「戦争反対」「反戦」の声を挙げることが許されない状況になります。まさにこうしたことが ”戦時統制” として強制的に敷かれていくのでしょう。

この演劇を観た3週間後にロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。まさか21世紀の時代に武力を持って他国を侵略する事態が起きるとは思ってもみませんでした。

今回の演劇は日中戦争を舞台とするもので、日本が植民地や領土拡大のため中国大陸に進出していったことから始まりました。
共通していることは、戦争を仕掛けた国が自分たちの正当性をでっち上げることです。更にそうした行為は、独裁者や軍部の専行によるもので、国民の意志とはまったくかけ離れたところで起きていることです。
ウクライナ問題に限らず百歩譲って「自分たちの正当性」があったとしても、武力で行使することは絶対に許されるものではありません。

 

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義父は今月103歳を迎えます。
日中戦争の時、長崎から釜山、そして満州へ派兵しソ連国境の虎頭に配属。終戦後は捕虜となりシベリアに4年間抑留されました。
第二シベリア鉄道敷設に駆り出され強制労働、食糧難、極寒という過酷な状況の中、生き延びました。
昭和24年9月、最後の復員船でナホトカから舞鶴に降り立ったと話していました。

そんな厳しい戦争体験をした義父の手記には、こう記されています。

「戦争は死の商人が欲望を満たすために起こすもの、その矛先は他国に向かう。戦争の発端は盧溝橋(日中戦争)にしてもトンキン湾事件(ベトナム戦争)にしてもでっち上げから始まった。集団殺人は何としてもくい止めなければならない」

戦争というものはどういうものなのか、その本質を的確に指摘していました。

 

ロシアによるウクライナ侵攻、そして、演劇「芸人と兵隊」を思い返して、改めて戦争というものを考えてみました。

4 thoughts on “演劇「芸人と兵隊」

  1. またお邪魔いたします。
    私、映画と同じくらいお芝居(演劇)も興味があります。
    今回ご紹介いただいた演目をググったら、ダイジェスト版がYoutubeにアップされていましたの
    で早速、観てみました。
    村井さん相変わらずいい声です。森川 由樹さんという方も動きが良いですね。

    戦時中の慰問団というと加東大介氏の「南の島に雪が降る」という名作が思い出されます。
    舞台劇の醍醐味とは、舞台上にまったく別の時空を超えた空間が構築され、虚構であることは自
    明ながら舞台上のキャラクターに共感し、怒りや悲しみ、歓びの感情を一体となって共有できる
    ことかなと思います。
    「南の島に~」では、舞台上に作られた日本間の障子を照らす夕焼けに、郷里での生活を思い涙
    ぐんだ兵隊さんたちがいたとか。

    さて、現実へ目を向ければ、いつ果てるともわからない殺戮が続いています。
    私自身、まさか本当に戦争になるとは思っていなかったのですが、CNNのニュースの冷酷な映
    像を見るとき、何もできない無力な自分を感じるのです。

    我が国の場合、憲法第9条があれば、あるいは日米の安全保障条約があれば、我が国の安全は担
    保されると考える人間が少なからずいると思います。
    しかし、今回のウクライナ紛争を前にしてみると、それは相当に楽観的過ぎる考えだと思うよう
    になりました。
    これ以上の意見表明は控えますが、国としてまた民族としての誇りを忘れてはいけないと感じま
    す。
    もし仮にいわれのない辱めを他国から受けたとしたら、ラストサムライのようにいきなり首を刎
    ねるのは論外ですがそれなりに毅然とした対応をして然るべきと考えます。

    ウクライナの紛争が最悪の展開にならないことを願うだけです。

    1. Zampanoさん

      お久しぶりですね。お元気そうで何よりです。

      >戦時中の慰問団というと加東大介の「南の島に雪が降る」という名作

      知りませんでした。そういう慰問団を舞台にした名作があったんですね。
      今回の舞台では、やはり村井國夫さんの演技が良かったです。もちろん他の役者さんたちも上手で臨場感があり引き込まれました。

      さて、今回のウクライナ危機に関連して、日本においても様々な防衛論が話題になってきています。
      例えば、仮想敵の脅威(軍事力や核など)に対しては軍事力で対処するという「抑止力」についてです。この「抑止力」は「軍事的抑止力」のため、相手国や、さらに周辺国に対して脅威を与えてしまい、お互いエスカレートしてしまう恐れがあると思います。
      軍事以外でも違ったかたちでの「抑止力」があるはずだと思っています。それは、経済的な結びつきや、国際交流、日常的な友好外交など・・・。
      「攻められたらどうする」ではなく、「攻められないためにどうする」という視点で外交や交流を深めていくことが大事なことではないかと思っています。
      もちろん難しい問題ではありますが、常にそういう姿勢で冷静に対応していければと思います。

      Zampanoさんがおっしゃるように、ウクライナの紛争が最悪の展開にならないように祈りたいです。

      貴重なコメントありがとうございました。

  2. ここまでロシアに経済制裁すれば、ウクライナに最悪な結果が待ってる可能性高くなってくると
    考えてます。
    日本の白黒ハッキリつけない優柔不断力がある国がいない。
    ウクライナの大統領が有能ですね。
    ロシアの顔を立てながら矛を収めるような雰囲気にもっていかないとヤバい。
    核で脅すっー絶対ないよね?という一般の予想の上をいったよ、プーチン。
    この紛争でアメリカの天然ガスや小麦の価格は跳ね上がる為に調整役は無理ですし
    ドイツは先の戦争責任の為に経済力があっても紛争にはEU内で発言権弱い。

    そして東北の地震が昨日。
    電力不足の為に原発の再稼働の道が遠のいた。

    「攻められたらどうする?」って日本はdefenseしか出来ないから、仮に攻められたら負けます
    よ。すーさんの言われるとおり「攻められない」為に外交すべきです。

    軍事力強化は無理なので、経済力を高めて一目置かせるのが必要。
    それが難しいんですねー。

    話は変わりますが、頭悪いので、こういう芝居は寝てしまうわ(;^ω^)
    バレエもミュージカルも海外旅行も「お楽しみ」がないっー!キーとしてましたが
    世界の動きと日本の凋落ぶりが面白いですねー。
    架空より現実のほうがドラマチック(;^ω^)

    義父様もお元気で何よりです。
    確かに素晴らしい義父様だと思いますが(クズな老人や障がい者でも~)弱いモノが快適に過ご
    せる社会が維持できますように、願ってやみません。

  3. 猫のヒトミさん

    はじめまして
    まずは義父へのやさしいお言葉たいへんありがとうございます。現在、義父は介護施設で穏やかに過ごしています。歳ですから耳が不自由になりましたが、今でも好きな短歌を毎日詠んで元気です。

    「抑止力」については、ヒトミさんもおっしゃるように外交に力を入れていくことがいいことだと私も思います。軍事による抑止力より、お互いのために良くなる方向性を常に追求していくことが大事なことだと思います。様々な難しい問題があると思いますが、時間をかけて地道にやっていければと思います。

    昨夜の地震ビックリしました。11年前の東日本大震災のことが頭をよぎりました。テレビをつけたところ津波情報が流れていました。やはり地震=津波がとても心配でした。
    福島にいる友人にすぐ連絡しました。被害もなく無事であったようで何よりでした。

    貴重なコメントありがとうございました。

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