劇団朋友~主演原日出子
「あなたにとって夫婦ってなに?」
定年後
毎日ダンナが家にいる・・・。
どうすりゃいいの、セカンドライフ
定年退職した夫は、四六時中家でごろごろぶらぶら、何もせずにどこにも行かない・・・。
邪魔ったらありゃしない!
そのイライラで「夫在宅ストレス症候群」に蝕まれる妻たち。
定年後、家庭内に引きこもり何もしない夫を「みのむし夫」と名づけ、進化し続ける妻とみのむし夫とのギャップ、夫婦の葛藤、妻の本音、定年夫との長~い老後をどう生きればいいのか・・・。
こんなフレーズで物語が進んでいく演劇は、定年という人生の節目を経験する夫婦やシニア世代にとって考えさせられるストーリーでした。
そんな演劇に「行ってみない?」とカミサンから誘われました。
カミサンは年6回定期的に開催される演劇鑑賞の会に入会していることから、今までも面白そうなストーリーであれば誘われて何度か一緒に観に行く機会がありました。
今回も「主演は、あなたの好きな女優原日出子よ」と言われれば断る理由はありません(笑)
広い会場にはシニア世代と思われる観客が500人以上? かなり盛況なんですね。
カミサンは会員のため指定された前列の席、私はおば様たちに囲まれた後列の席でした。シニア世代のおば様たちが大半を占め、私を含めたおじさんたちの姿もチラホラ。
こうした観劇というものは、やはり圧倒的に女性が多いんですね~。
ストーリーは、
シニア女性のリーダー猪飼良子を中心に2年前に結成したコーラスグループ「あんだんて」は平均年齢55歳を超え、合唱の経験者が主人公の赤城響子(原日出子)一人というグループ。
週一回水曜日の午後、響子の家で集うコーラスの練習は、メンバーにとって楽しい時間であった。
ある時、リーダーから合唱コンクールに出ようという提案があったが、一部メンバーから練習量が多くなり、仕事や家庭のスケジュールが調整できないという不満が噴出する。
赤城響子の夫は定年退職したばかりで、以前からコーラスの練習を自宅ですることに批判的。
響子は自宅で練習を続けるために夫に気を使い、夫にとって毎日の生活が不自由なく過ごせるように家事全般を全てこなす毎日が続いていた。
そんなある日、とうとう夫は響子にコーラスをやめるように言う。
自分は定年退職したのだから、気軽に静かに過ごしたいのだ。食べたい物を食べ、早い時間にお風呂に入って気ままに暮らすんだと。自分の生活ペースに合わすように言い、家では何でも自分の思い通りになる考えを持っていた。
更に、夫は響子に対して、「君はコーラスのメンバーにいいように利用されているんだ」と言われ、次第に思い悩むようになっていく。
響子は何度も夫にコーラスの練習を続けることを頼むが理解してもらえない。
そして響子は夫に尋ねる。
「あなたにとって夫婦ってなに?」
夫は、「そうだな~、空気みたいなものかな~」と。
ある時、響子は夫に合わせて我慢してきたことがストレスになり、手のしびれや顔面マヒになるほどの体調不良になる。
そして響子は入院し、夫に会うことさえも拒否してしまう・・・。
冒頭で触れたように、定年退職後の夫婦生活の中で起きる出来事を物語にしたものですが、この演劇では「夫在宅ストレス症候群」や「夫源病」というものがテーマになっていました。
第一幕(75分)終了後、15分間の休憩がありました。
私の周りの席は、7~8割ほど60~70代のおば様たちで占められていました。
隣に座っているおば様たちグループ?の話し声が聞こえてきます。その話しぶりから察すると、その人たちのご主人は完全リタイアされている家庭のようでした。
「うちの人はまったく料理しないのよ~、男子厨房に入るべからずっていう考えなのよ~」
「うちのもそう!、一応言えば手伝うんだけど、言わなきゃ何~んにもしないのよ~」
「先日親戚の甥っ子が来て自分で料理するってうちの主人に話したら、うちの人ったら ”男はそんなことする必要ない!” って自慢するように言ってたわよ~」
「この演劇は、夫婦で観たほうがいいわよね~」
そんな会話が耳に入ってきた時、今度は私の方を向いて聞いてきました。えっ!(笑)
「いかがでしたか~、今日の演劇」
「は~、私も退職した身ですが、この歳になると家庭によっていろいろあるんですね~」
「ご主人はご自宅でお料理されるんですか?」
「はい、しますよ。味付けは下手ですけどけっこう楽しいですよね」
「そうなんですか~、奥様と一緒にお買い物されたりするんですか?」
「たまにはしますよ。自分が食べたい物を作りたいんで、一人で買い物する機会が多いですが(笑)」
「うちのはもう70代なんですが、失礼ですけどおいくつですか?」
「今年63になります」
「そうなんですか~。うちのは古い時代の人なんで、ほんとに何もしないんですよ~」
「人によって様々だと思いますが、今の50~60代前半の世代はここまで何もしない(劇中での家事など)というのは、少ないと思いますよ」
「そうですよね~、今の若い世代の人はけっこう家事をしますよね」
「若くはありませんが、団塊世代以上の世代と比べれば一回りほど違いますから、いろいろな考え方も違ってきていますよね」
このご婦人方のグループとしばらく話をしている中で、団塊の世代とそれ以上の世代の人たちということが分かりました。
こうした演劇やその他映画やテレビドラマ・小説などは、どうしても少し誇張された表現で物語が作られたりします。
定年退職後いつもぶらぶらして何もしないオヤジ、一日3食の食事を妻に作らせそれを当たり前のように考えているオヤジ、身体が不自由になったら妻に面倒をみてもらう在宅介護が当たり前と考えているオヤジ、そして、「俺の方が早く死ぬんだから」と口癖のように言うオヤジ・・・。
社会情勢や物事の考え方が変わりつつある中、まだこうした考えや思いを持っている人がまだまだ多くいるのかもしれません。
その結果、妻のストレスが増大し夫源病になる、まさに現代的な病気が発生してくるんでしょうか。
この演劇の物語は、ハッピーエンドで終わります。
妻が入院したことから、夫の気持ちや考え方が変わり今までの自分を反省します。
そして、最後は夫もコーラスグループに入り、夫婦一緒に趣味を楽しむようになります。
人生100年時代、こうした夫婦の生活にスポットを当てた演劇、映画、小説などが増えてきているように思えます。
ここ最近では、内館牧子さんの「終わった人」(映画化)と「すぐ死ぬんだから」、岸本裕紀子さんの「定年女子」(ドラマ化)、垣谷美雨さんの「定年オヤジ改造計画」など。
どれもシニア世代にとっては関心のある題材であり物語でした。
「あなたにとって夫婦ってなに?」
考えさせられる演劇でした。
「夫在宅ストレス症候群」は見かけますね。
自分の観察からすると、こうした奥さんは専業主婦に多いように感じます。
共稼ぎ夫婦は、互いに家事を分担する習慣がついているので、退職後に
極端な変化は無いでしょう。
また夫婦で一緒に仕事をしている小規模自営業者等は、生涯現役であったり、
子供にバトンタッチして裏方に徹しても、生活習慣が大きく変わることはない
でしょう。
ところが専業主婦は、四六時中家族の面倒を見ているので、ストレスが溜ります。
そこで手際よく片付けて、旦那のいない時間帯にママ友と息抜きをしますよね。
そこに退職した旦那がいると、それまでのように自由が利かないんですよ。
旦那にしてみれば朝から晩まで働いて、ノルマ達成のために息抜きなんてできない。
帰宅したからと言っても、自由時間なんてほとんどなかったので、カミさんの行動が
目につくんでしょうね。
そこでつい「どこに行くんだ!」と監視するのでしょう。
だから旅行好きなカミさんでも、「旦那と一緒なら行かないわよ!」だとか
「同じ墓には入らないわよ!」ってことになるんでしょうね。
紹介した演劇は所詮物語と言うか、こうあってほしいというフィクションでしょうね。
>妻が入院したことから、夫の気持ちや考え方が変わり今までの自分を反省します。
そして、最後は夫もコーラスグループに入り、夫婦一緒に趣味を楽しむようになります。
こんなことはほとんどあり得ないですよ! こんなに物分かりの良い旦那なら、事前に
気付いて対処しているはずです。
瀬戸内寂聴さんによれば、
「亭主だってもう20年も30年も付き合ったら、皆好きじゃないでしょう。本音を吐けば
(笑)。
向こうもそう、女房と畳は新しい方がいいと思ってる。それを辛坊してくれてるんですから、
こっちも辛抱しなきゃいけないのね」
と仰っています。 これは瀬戸内晴美が不倫して駆け落ちして、最期に尼になったからこそ
会得されたことですが、所詮他人の夫婦なので、互いにおもいやりを持ち合いたいものですね。
凡夫さん
コメントありがとうございます。
こうした演劇(ドラマや映画も)は、一般的にハッピーエンドで終わるものですが、現実は凡夫さんが言われるように難しいものがありますよね。
確かに
>こんなに物分かりの良い旦那なら、事前に気付いて対処しているはずです。
と、私もそう思います。
最後にコメントされているように
>互いにおもいやりを持ち合いたいものですね。
全く同感です。
長年一緒に生活してきたとはいえ、感情や気持ちまで一緒というわけではないです。
いろいろな面ですれ違うことは当たり前のことですから、そこでおっしゃられるように「おもいやり」というものを持ち合うことは大事なことですよね。
貴重なご意見ありがとうございました。