月1回のセミナー参加から
今年の世相を表す漢字「災」は?
先日、今年最後のセミナーに参加してきました。
このセミナーは、その時々の政治社会問題を題材に取り上げ、その仕事にたずさわる方や専門家をゲストスピーカーとして招きお話を聞く会です。
今回のセミナーは、「激甚化する災害と政府の対応」と題して内閣府防災担当参事官の黒田昌義氏による講演でした。
その年の世相を一文字で表す2018年の漢字は「災」(サイ/わざわい)に決まりました。
今年は全国各地で自然災害が発生し甚大な被害に見舞われました。
そうした状況からこの漢字に決まったことは、私もそうですが誰もが納得する一字ではないでしょうか。
ちなみに、今年は19万3214票の応募があり、その内「災」が2万858票だったそうです。
大阪府北部地震、島根西部地震、北海道胆振東部地震、西日本豪雨、台風21号、24号の直撃、記録的猛暑など、自然災害の脅威を痛感した年でした。
特に日本は地震大国であり、又、地球温暖化に伴う気象変動によってこうした災害がこれからも多く発生するのではないでしょうか。
そういうことから「自然災害への対応」は、国として真剣に取り組まなければならない課題だと思います。
こうした中、今回のセミナーが「自然災害への対応」というテーマで開催されたことは、今年を締めくくるものとしてちょうど適していたのかもしれません。
配布された資料の表紙は、セミナーの開催がちょうど今年の漢字が決定された直後だったことから、「災」の一文字がプリントされていました。
講演では、今年起った各地の災害と被害状況、政府の応急対応について説明がありました。
話の中で23年前に起こった「阪神・淡路大震災」以降、政府として本格的な災害対策に着手・進展してきた流れがあったようです。
法的な災害救助法や災害対策基本法などありますが、ここ数年の自然災害の甚大化に伴い、特に被災者への救済支援充実が求められてきているように思います。
今回のセミナーでもそうした質問や意見が多かったこともその表れだと感じました。
生活・生業再建支援策としていくつかの対応策があります。
例えば、緊急対応策として住宅再建では、
「住居が全壊した世帯等に対して最大300万円の被災者生活再建支援金を支給」という項目があります。
通常で考えれば果たしてこの金額で再建が成り立つのかという疑問があります。又、全壊以外でも半壊や一部損壊などでも現実的には再建が厳しい状態になると思います。
支援金の拡大と半壊・一部損壊も含め、もっと充実した支援策が必要だと思います。
これらの支援金は国民の税金で賄われるわけですが、こうした国としての支援策の拡充は多くの国民が納得するものだと思います。
テレビや新聞などで報道される被災の現実を目の当たりにすれば、誰しもが我がことと思う気持ちがあるのではないでしょうか。
セミナーに参加された方から「災害支援に対する税金の使われ方」についてこのような意見が出されていました。
「政府は、一機100億円以上もするステルス型戦闘機を100機追加する検討に入った。総額で1兆円以上になる。今ほんとうに必要なものなのか? これらの税金が被災者支援や災害復興として使われるべきではないか」と。
私も全く同感でした。参加者から同意する拍手が起きました。
今本当に必要なところに私たちの大切な税金が使われることを多くの国民は望んでいると思います。
政治というものが、こうした自然災害への対応に対して大きく関わっていることを改めて感じる意見でした。
二次災害としての原発問題
今回の講演と資料の中では、原発事故の影響について一言も触れていませんでした。
自然災害(地震)で起きた福島第一原発事故や今年北海道地震で起きたブラックアウトも原発と大きく関わっています。
ブログ「東海第二原発」
現在日本にある原発は59基、稼働している原発は9基あります。
最近、政府の中央防災会議が、南海トラフ地震の発生と被害想定及び避難対策について発表しました。
仮にこの南海トラフ地震が発生した場合、震度と津波の高さから想定してとてつもない被害に見舞われるようです。
しかし、この防災会議でも二次災害としての原発事故については触れていませんでした。
地震大国である日本の場合、自然災害と原発事故はほぼ同時に起きるものとして想定しなければならないと思います。
それは今まで起きた原発事故の教訓として考えるべきではないでしょうか。
今回のセミナーでその点を質問してみましたが、残念ながら明確な回答を得ることができませんでした。
返答としては、資源エネルギー庁が対応するものとして、内閣府の防災担当としては関与しないということでした。
お役人的な縦割り組織ということでしょうか。
ゲストスピーカーの黒田氏も「私も役人ですから」という一言が全てを物語っていると感じました。
けっし非難・批判するつもりはありません。
政府としての防災対応を考えているのであれば、内閣府として当然統括的な対策を持つべきではないかと思います。
原発再稼働とその推進を図る現政府は、自然災害対策と原発事故対策は全く別物として考えているのでしょうか。
自然災害による被災者への救済やハード面などの復興事業については、時間とそれなりの資金(税金)を使って対応できますが、二次災害としての原発事故の場合は、放射能汚染という回復できない事態を招くものです。
仮に原発ゼロであれば、その対応は国をあげて100%全力で取り組むことができると思います。
今年の漢字「災」は、単に自然災害の発生が多かった年として受け止めるだけでなく、一方でその対策としての言葉として考える漢字ではないかと思いました。