働き続ける世代~70歳まで雇用延長
「定年後の過ごし方」がなくなる?
現在、高年齢者雇用促進法でほとんどの企業が65歳まで雇用延長しています。
これは「高年齢者雇用確保措置」という制度によって雇用することが義務付けられているからです。
会社時代から続く登山同好会のレギュラーメンバーは私を入れて現在9名います。
この内、現役1名と私を除き、他の7名は全員継続雇用で働き続け、すでに65歳雇用終了した人もいます。
つまり、この雇用促進法によって私を除けば100%の人が働き続けている実態が浮き彫りになります。
先日、登山同好会の懇親会が都内で開かれました。
今年の登山計画が主な内容ですが、ほとんどの人が働いている状況の中、やはりカイシャの動向についての話題が多くなります。
こうした中、今年65歳継続雇用終了者から、「引き続き70歳まで働ける制度ができた」(70歳雇用延長)という話がありました。
社会全体が近い将来そうした方向に行くだろうと思っていましたが、その話を聞いた時、いよいよ現実的に動き出したんだな~と少し驚きを感じました。
同時に、現在継続雇用で働いているメンバーも驚きを隠せず、「それじゃ70歳まで働き続けようかな~」と言ったことが、今の時代の趨勢を反映する言葉として印象的でした。
こうした継続雇用は、時間給(パート待遇)になりますが、今まで慣れ親しんだ労働環境ですからそれほどストレスもなく安心して働けるという点ではメリットがあると思います。
年金だけは生きていけない、又、働き続けることで健康維持、社会貢献、生きがいなどを求めている人にとって、今までは転職やシルバー人材センターへの登録などで対応していたと思いますが、こうした再延長によって安心して働く場の確保ができたことになるのではないでしょうか。
円グラフは「シニアガイド」より引用添付
65歳まで雇用延長措置は、ほほ100%に近い企業で実施済み。
現在、70歳以上まで働ける企業の中で、定年制を除き「継続雇用制度で全員雇用」と「継続雇用制度で一定の基準で雇用」などで雇用している企業は約20%です。
この数字は更に拡大してくるのではないでしょうか。
雇用延長による社会変化
現在の60歳定年を迎える世代は、今までの先輩世代(団塊世代)と比較して生き方、過ごし方において大きな違いが出てくるように思えます。
と同時に、働く環境以外においても大きな変化が表れてくるような気がします。
それは、特に ”退職後の趣味や余暇の使い方と関連する社会環境の変化が顕著” になってくるのではないかと思います。
前述した70歳までの雇用延長により ”働き続ける社会” に大きく変わる時代になりました。
このことによって、特に男性においては職場で過ごす時間が今までと変わらない生活が続くことになります。
そしてこのことは、「定年後の〇〇・・・」という言葉や表現、関連する出版物、放送さえも下火になってくるのではないでしょうか。
もちろん「定年後」という言葉は存在し続けると思いますが、それに対するプランやアクションはそれほど話題にならなくなるのかもしれません。
極端な言い方ですが、今までのような ”定年後の過ごし方” がなくなる社会に移行していくのでしょうか?
今、私は退職後の生活を働くことなく過ごしています。
日々の生活の中で登山・山歩き、くるま旅を趣味にして過ごしていますが、その他にも興味のある各種セミナー・教室にも通い、又、市のトレーニングセンターや図書館通いも日課にしています。
そうした場所に出かける頻度は多く、同時に周りの方々を見たり交流する機会が増えてきています。
そこに来ている人たちは、ほとんどが退職された人(完全リタイア)と思われる方々ばかりです。
そしてそこで感じることは、そうした施設利用者が今後どのように変化するのかということです。
特に男性において、趣味、サークル、娯楽関連、観光ツアー(国内、海外)などの参加や施設利用者数の減少があるのではないかと。
例えば、登山の山小屋利用について、以前ブログにアップしたことを思い出しました。
シーズン期間中の山小屋は、最近の登山ブームもあってかたいへん混雑することが多いです。
特に平日はシニア世代が多く、その中でも団塊世代の方々が圧倒しています。シニアと言っても私(61歳)の世代はほとんどいません。
極端に言えば、このブームを支えているのは、まさに若者世代(主に20~30代)であり団塊世代の人たちです。
そして、後5年以内に今まで登山をけん引してきた団塊世代の人たちは徐々に少なくなり、その後に続く世代は70歳まで働き続ける世代に変わります。
このようなことから、平日の山小屋は残念ながら閑古鳥状態になるのではないかと。
こうした状況は、趣味・娯楽・旅行ツアーなどの参加者や施設利用など世代人口が多かった団塊世代が去っていくということで減少の一途をたどることもありますが、なによりも70歳まで働き続ける世代に変わっていくことで激減する要因になるのではないかと推測します。
楠木新著「定年後」より
”スポーツクラブは大繁盛” ?
確かに今の時代は、男女とも団塊世代の人たちで大盛況です。
しかし、これからの時代は、はたしてそうでしょうか? すでに60代前半(60~65歳位)の人はほとんど目にすることはありません。
なぜなら、この世代の人たちは主に継続雇用で働いているからです。
つまり、このような高齢者の行動や傾向を指摘するキャッチフレーズは、団塊世代以上の人たちだけなんです。
働き続ける理由と世代間の気質?
70歳まで働き続けるといっても精神的・体力的なことが考慮されると思います。
収入を得ることで経済的に助かる、働き甲斐・生き甲斐といっても今までと同じようなモチベーションで続けることも難しい点があると思います。
先日の登山仲間たちとの交流会の中でこんな会話がありました。
「何もすることがなく家でぶらぶらしているより慣れた職場で働いていたほうがいいな~」
「働くといっても、せいぜい週3~4日程度でいいんじゃないかな」
「そうは言っても、女房と一緒にいる時間が長くなるな~、一人の方がいいな~(笑)」
「俺の昼飯は?と女房に言ったら、そこにカップ麺があるよと言われちゃった(笑)」
働き続ける理由は個人によって様々だと思いますが、私の周り人たちの話を聞く限りでまとめてみると、
■特にやりたいことしたいことがないので働きに出る
■家にいて女房と顔を合わせる時間が長く会話がない
※奥さんの方がダンナより何倍もそう思っていることをダンナは気づいていない。
■年金だけの収入では不安
働き続ける理由は、こうした様々な気持ちが重なり合っていることなんですね。
私たちの先輩世代(団塊世代)の時代と比較して、良しも悪しも働き続ける社会的な環境の変化がありました。
それは、年金制度の改変(受給時期や減額)とそれに伴う雇用延長制度です。
仮に先輩世代が60歳定年の時期に雇用延長制度(70歳まで)が確立されていた場合、どのような社会的変化があっただろうかと推測してみると、働き続ける人口は今以上に増加していたと思います。
なぜなら転職やシルバー人材センターの紹介などによる職探しをすることなく、慣れ親しんだ職場で継続して働き続けることができるからではないでしょうか。
全てではありませんが、離職率が低下する要素になってくると思われます。
では、働き続けるためのこれらの法的な変化とは別に ”世代間の気質” で比較してみるとどうなんでしょうか。
「働き続ける理由と世代間の気質?」 たいへんアバウトな比較です(笑)
あくまでも私個人の考え・推測ですが、
■先輩世代(団塊世代)の気質
戦後新しい文化や考え方を取り入れて生きてきた先頭世代だったことから、常にチャレンジ精神を持ちながら ”好奇心豊かな気質” に富んでいた。
世代人口が多かったことから、仲間やその周りとの競争意識が高く、そのことが常にレベルアップさせる方向に動くことで現状に甘んじない。
同時にそうした環境に揉まれてきたことから、より ”個性的な気質” が生まれている。
⇒比較的趣味を持っている、チャレンジ精神がある、個性的な気質、こだわり、エネルギッシュ
■次の世代(60歳定年を迎え、継続雇用が始まる世代)
常に先輩世代の後姿を追い続けてきた世代だったことから、特に自分の意思で積極的に行動やチャレンジすることなく現状を維持する気質がある。
先輩世代と比較して競争意識は低く、「三無主義」の先頭世代だったことから、それほど周りを意識することなく様々な事柄にたいしての関心も低い。
⇒比較的趣味が少ない、チャレンジ意識が低い、現状を維持する気質、それほどこだわりがない
楠木新氏の著書「定年後」の中にこのようなことが書かれていました。
「60歳以降の労働条件を聞いてショックを受けた」
この労働条件とは主に賃金を指し、又、働く部署と仕事内容などです。
確かに一時的なショックはあるかもしれませんが、今の世代の人たちにとってはそれほどの危機感はないと思います。
現状を素直に受け入れる気質があり、起業するというチャレンジやこだわりもあまりないからです。
私は退職後5年の月日の中で、登山、全国くるま旅、海外旅行、又、各種セミナーや集会への参加、周辺施設などへの出入り(スポース施設、図書館、公民館)など経験する中で、自分の世代と先輩世代のこうした気質の違いがあることに気づきました。
このような世代間の気質が良い悪いという評価をするということではなく、特に退職後の生き方や過ごし方において大きな変化があるのではないかと思いました。
つまり、私たちの世代からは、より働き続ける世代に変わり、更に拡大していくことがうかがえます。
それは、年金制度の改変や継続雇用の延長という法的側面とは別に、”今の世代の気質” がそういう方向に向いているのではないかと思います。
繰り返しますが、「特にやりたいことがない」(無趣味)、「現状維持がいい」ということから、70歳まで働き続けることが増えてくるのではないかと思います。
働き続けることは個人の意思・考えに基づくものです。
それに対してウンヌンするつもりはありません。
ただ、法的制度と世代気質を考えた時、これからの社会は大きく変化していく時代になると感じます。
そういう意味から言っても、今までのような余暇を楽しむ「定年後の過ごし方」という言葉や表現、更に、取り扱われる場面は減少してくるのかもしれません。
ちょっと極端な話をしてしまいました。
60歳定年を迎え、その後継続雇用や関連会社、転職、起業、パートアルバイトなどで働き続ける人が大半を占め主流になる時代になりました。
逆にみれば、私のような存在は少数派であり異端児なのかもしれません(笑)
すーさん 様
>60歳定年を迎え、その後継続雇用や関連会社、転職、起業、パートアルバイトなどで
>働き続ける人が大半を占め主流になる時代になりました。
私には無理ですね。
世の中では「70歳まで働け」と騒がしいですが、
やっと手に入れたすばらしい自由時間を手放すつもりはありません。
私などは「爺ニート」などと疎まれるようになるんでしょうか?
後輩さん
コメントありがとうございます。
私たちが思っている以上に働き続ける人が増えていることに驚きます。
>やっと手に入れたすばらしい自由時間を手放すつもりはありません。
後輩さんと同じように私も全くそのように考えていました。
しかし、現実は大きくちがうことが、この間のリタイア生活の中で実感しました。
私たちのような存在は少数派だということが。
働き続けることはその人の生き方、考え方ですから何とも言えません。
しかし、親しい友人や地域でコミュニケーションのある方々などと接触してみて感じたことは、文中でも述べましたが、”私たち世代の気質”(60歳~65歳位まで)というものが大きく反映されているのかな~と思ったりします。
もちろん老後の不安、経済的な理由が大きなウェイトを占めていると思いますが、一方では ”現状維持” という精神的な側面があるのではないかと感じます。
このことがいいとか悪いとかというものではありません。
個人個人その生き方はそれぞれですから、私たちのように自由時間を手放さない生き方もあってもいいんじゃないかと思います。