国際連帯税

貧困・感染症・温暖化対策

国境を超える経済活動への課税

 

先日、一般社団法人が主催するセミナーに参加してきました。
このゼミナーは月一回のペースで実施され、テーマはその時々の社会経済、政治問題に焦点を合わせ、専門家の講師を招いて勉強会方式で開催されています。

今回のセミナーのテーマは、「国際連帯税の導入」についてでした。
講師は、グローバル連帯税フォーラム代表理事の田中徹二氏でした。

国際連帯税? 普段あまり聞きなれない言葉です。

この国際連帯税の基本的な考え方は

世界では、貧困、感染症や気候変動・大災害の問題、さらには莫大な投機的短期資金が引き起こす金融危機の問題、国境を超える課題が山積しています。
これらのグローバルな課題に対処するためには、国際社会が協働して対応するシステムの構築が求められており、特にそのために必要な資金の確保を可能とするメカニズムが必要です・・・。
この新たな資金メカニズムは、国益等に左右されない持続性を持ち、さらに一定の資金量の確保も求められます。
こうした要件を満たすのは、地球規模の課税、つまり「グローバル・タックス」方式が最もふさわしい。
「グローバル連帯税フォーラム」より

今までこのような地球規模の諸問題に対しては、各国の政府開発援助(ODA)で賄われていましたが、2008年の金融・経済危機以降、各国の財政危機が重なり、その拠出金額が減少傾向になってきているようです。
又、政権が変わるごとに援助政策が変わるという不安定性も課題としてあったようです。

こうした状況をふまえて、新たに提案・実施されているのが国際連帯税です。
貧困や感染症、温暖化等の地球規模の課題に取り組むための安定的な財源を、国境を超える経済活動への課税によって確保することができ、なにより持続可能な資金確保が大きな利点だと思います。

 

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この国際連帯税の課税対象は5つのカテゴリーで形成されているようです。

■国際輸送課税=航空券連帯税、船舶利用税、航空輸送税、海上輸送税、海峡税
■国際取引課税=為替(通貨)取引税、金融取引税、電子商取引税、インターネット利用税、武器輸出税
■地球環境課税=炭素税
■多国籍企業課税=グローバル企業法人税
■超富裕層課税=グローバル資産税
※赤い字は実施中

こうした国際連帯税の一部課税については、すでにフランスをはじめとする14か国で実施されているそうです。

日本でもこうした動きは、2008年に超党派の「国際連帯税創設を求める議員連盟」(現会長は衛藤衆議院議員=自民党)が発足され、国会審議でも繰り返し取り上げられ、政府に制度創設を求めてきた経緯があるそうです。
また、市民団体や有識者が行う学習会やシンポジウムも開催されているようです。
そして、この連盟から過去10年にわたって税制改正要望を財務省に提出されているようですが、まだ実現に至っていません。

 

なぜ実現できないのか?

 

今回のセミナーでは、世界経済の動向とその現状についての講義もありました。

トム・ピケティの「21世紀の資本」にも触れ、
■世界の1%の富裕層が1年間に生み出された富の82%を独占している
■世界人口の約半分の37億人の財産は増えていない

こうした状況の中、世界規模での格差と貧困は広がりつつあります。
貧困の根絶、経済活動円滑化のためのインフラ投資、教育や医療活動への支援、食料安全保障、地球温暖化対策・・・。
様々な課題への対処として、今や地球レベルで求められているのではないでしょうか。

 

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一国の税制度は、国内だけの税負担と使い道に充てられています。
今やグローバルな経済活動が広がる中、納税のあり方や税逃れ(タックスヘイブンなど)が大きな問題となってきています。
こうした中、世界規模での企業活動における税制についてしっかりした仕組みも必要になってこなければならないと思います。
そして、その使い道は地球レベルでの活動に費やされるべきではないでしょうか。

今回の国際連帯税は、先ほど挙げた5つのカテゴリーへの課税です。
これは主に世界規模で活動する企業への課税であり、又、超富裕層への課税も含まれています。
こうした「税の負担と分配」は、一国や少数国では限界があります。世界規模での税制度として必要なことではないかと思います。

ではなぜ10年近く取り組まれているにもかかわらず実現できないのか?

私もこの税制度については、セミナーを受講するまで知りませんでした。
こうした取り組みが国民レベルで広く論議されることがまず必要ではないでしょうか。
ちなみに世論調査では、例えば「航空券連帯税」に理解ありと応えた割合は75%の方が賛成しているそうです(ネット調査)
国際連帯税の意義と目的をしっかり伝えれば、多くの方々が理解を示すのではないか思います。

こうした国民レベルの理解が必要であることはもちろんのことですが、仮にそうした動きや要望があっても現実にはそれを阻むものがあります。

セミナーの中では、”自民党の税制調査会と官邸の消極性” を指摘していました。
前述したように「国際連帯税創設を求める議員連盟」のメンバーは、自民党議員をはじめ各野党議員も賛同し、まさに党派を超える活動に発展しています。
同じ自民党内でも、現政府(官邸)の意向、政策は、違う方向に向いているようです。

なぜ消極的なのか?
現政府は、大企業を中心とする法人税減税と優遇税制を推し進めています。また、富裕層への減税も繰り返されてきました。
このような政策姿勢ですから、当然ながら世界規模で活動する企業への課税や富裕層への課税に対して消極的になるのでしょう。

どこを向いて仕事されているのでしょうか?

安倍政権は、昨日15日の臨時閣議で来年10月に消費税率を8%から10%へ引き上げる増税を予定通りに実施することを表明しました。
国民生活はさらに脅かされようとしています。そして、格差と貧困は日本のみならず世界レベルで広がっています。

民意から離れ、どこか違う方向に向かっています。

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