秋の便り

「ぶどうの独り言」

毎年、この時期になると長野の友人からぶどうが送られてきます。             20年来お付き合いのある私たち夫婦共通の親しい友人です。              10数年前、東京から長野に移住してぶどう農園をはじめました。当初は苦労の連続で収穫もままならない状況もあったようでした。軌道にのってきても農園を拡大することなく無農薬栽培に徹して一房一房丹精込めて作ることを志に持っている方でした。      そうして栽培されたぶどうですから実に美味しく、私たちも毎年収穫の時期を楽しみにしていました。そして産地から親戚や知人に贈答用として送ってもらうことを恒例行事として今でも続いています。                               ここ数年私たち夫婦は、この時期に友人に会うため長野に出かけます。収穫時期ということで忙しい時ですが、一緒に農園で収穫のお手伝いなどをしながら親交を深めています。

今年も訪問するスケジュールを決めて家族で訪ねる予定でした。しかし、先日友人から「今年は収穫直前の長雨と日照不足でほぼ壊滅状態になってしまった」という連絡が入りました。自然を相手にする仕事は、いかにたいへんなことかということを痛感させられる思いでした。                                    そうした状況の中、友人からぶどうが送られてきました。送られてきた箱の中にはいつも友人自身がしたためたメッセージカードが入っています。そのカードには、今年のぶどうの出来具合の状況や感謝の言葉が添えられています。                  箱を開けると丁寧に紙で包まれたぶどうが入っています。そして、その上にはいつものように一枚のメッセージカードがありました。そのカードを手にとり、今年の栽培状況について書かれているのかな?と思いつつ読んでみると例年のメッセージとは全く異なる文章でした。 

ぶどうの独り言

今年は戦後七十年を迎え、多くの方が「平和」について考えさせられたのではないでしょうか。                                       暑いだの寒いだの、豊作だの不作だのとのんきな事を言って居られるのも安心して暮らせる日々が有るからです。                                人は自然の力にはかないませんが、「戦争をしない」ことは出来ます。それには、与えられた全ての命に対して謙虚になることが大切なのではないでしょうか。          ぶどう畑から、皆様のご健康と平和が続きますよう心よりお祈りしています。      

ありがとうございました。

○○農園 ○○○○

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今年は、生活の糧とするぶどうが壊滅状態でした。経済的に厳しい状況の中、このようなメッセージが送られてくるとは思いもよりませんでした。自然を相手にする生産者の言葉として、たいへん重みのあるメッセージでした。

来週、夫婦二人で長野の友人宅に行く予定です。

 

 

 

 

4 thoughts on “秋の便り

  1. すてきなお話でした。
    農家のかたのご苦労もわかります。
    自然や権力には勝てませんが、小さい知恵と力でなんとかしたいですね。

    1. 家犬さん

      コメントありがとうございます。
      長野の自然豊かな農園で一生懸命お仕事をされている方が、国政の動向を見つめ、その方向性に対してご自身の考えをしっかり持っていることに驚きました。今回の「戦争法案」は、多くの方々が関心をもっていると思います。
      メッセージにあった「全ての命に対して謙虚になることが大切」という言葉が心に深く刻み込まれました。

  2. 心温まるお話ですね。
    無くして初めて分かる”平和”はぶどうさんのおっしゃる通りですね。そのような事態にならないように今の日本は今が”試練”の時かも知れませんね。
    素敵なお友達と楽しい時間を!

  3. ジュリーさん

    コメントありがとうございます。
    戦後、当たり前のように過ごしてきた日々が、まさに「平和」なことだったと思います。社会が発展、進歩していく中ではいろいろな変化があります。そうした変化を受け入れ、更に成長していくことも必要なことだと思います。
    しかし、どのような社会になっても不変なことは「戦争をしない」ことだと思います。憲法九条があったからこそ今の生活が続けられています。
    ジュリーさんがおっしゃるように”日本は今が試練の時”だと思います。

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