地方によって異なる「お雑煮」の食文化
退職してから2回目の年末とお正月を迎えようとしています。現役時代35年間小売業に携わってきたせいか、年末からお正月にかけての繁忙期の仕事は今でも身体に染みついています。クリスマスが終わり、売場はお正月商品一色に変わります。特におせち売場はその典型です。
さて、こうした仕事に携わっていると、この時期それぞれの地域の中でも売れ筋商品が大きく異なってくることがわかります。その典型が「お雑煮」の材料です。 例えば、東京という狭いエリアの中でも「ほうれん草」と「小松菜」を入れる地域が異なります。これを間違えれば売上は大幅ダウンしてしまいますし、品切れでもしたら苦情の嵐になります。一般的に下町は小松菜、それ以外の地域はほうれん草といったところでしょう。又、関東及びその周辺は「みつ葉」を添えるのが一般的です。しかし、地方によっては全く入れない所もあります。こうした伝統的な食文化は、地方によって大きく異なるので面白いものです。 「へー、そうだなんだ~!」という驚きにもつながってきます。
日本全国のお雑煮の姿はさまざまです。丸餅もあれば切り餅もあります。味付けも味噌、すましと違います。お雑煮はその土地で取れる材料を合わせて食べられるのが一般的です。同じ土地でも家柄で異なります。餅なし雑煮を食べる土地もあります。里芋が主役です。稲作が出来なかった土地で多くみられます。 現在では全国どこでもお雑煮を食べられるけど、その昔、北海道はアイヌの人々が暮らしていた土地、沖縄は琉球国として別の国として、食文化が異なっていたことでお雑煮がなかったのです。北海道は明治以降、本州から移り住んだ人たちにより伝わったようです。全国餅工業協同組合 お雑煮MAP
現役時代、仕事で地方に出かけた時、お雑煮に入れる餅の形がその地方によって異なることに驚きでした。自分が生まれ育った土地(静岡)では、年末にのし餅を買ってきて長方形に切って準備するのがどの家庭でも一般的な光景でした。しかし、地方によって丸餅があることは全く知りませんでした。ちょっと調べてみると、角餅と丸餅の分岐ラインは北陸から中部にかけて、東が角餅、西が丸餅のようです。又、汁の仕立てについては、東北・関東・甲信越では、角餅ですまし立て。近畿地方では、丸餅で白味噌仕立て。中国・四国・九州では、丸餅ですまし立て。一部島根周辺では、小豆仕立て、などのようです。 更に、中に入れる具材は、その土地で取られた食材が使われていたようで、野菜では大根、にんじん、ごぼう、里芋など。魚介類ではブリ、ハタハタ、蛤、牡蠣など。肉は鶏肉などその土地によってさまざまです。 更に、その家庭によって代々受け継がれてきた食材や味付け、上にのせる具材(海苔、三つ葉、だし粉など)などにより、まさに伝統的な食文化として「お雑煮」が存在します。
私は静岡で生まれ育ったせいかお正月といえば「安倍川もち」が定番でした。きな粉に砂糖を入れて、焼いた餅を一度お湯にくぐらせ、きな粉をたっぷり付けて食べる習慣がありました。結婚してカミサンの実家(北関東)に行った時、はじめて「からみ餅」に出会いました。おろした大根にしょう油で味付けして餅にからませ食べるものですが、最初はこんな食べ方があるんだと驚いたことは今でも忘れません。一度食べたら病みつきになりましたが、その土地によって餅の食べ方もいろいろあるということを教えられました。
さて皆さんのご家庭では、どんなお雑煮やお餅を食べますか? 楽しみですね。